その日、俺は松本さんに呼び出され、開店前の「葉月」に来ていた。
「櫻井さん、何飲む?」
ビールでいい?
「いや……だって、まだ昼間だし」
「だからいいんじゃん!」
すっごく贅沢な感じで
「そりゃあ、そうかもしれないけど……」
「せっかくの休みなんだし……はい」
どうぞと目の前に出てきたのは、グラスに注がれた冷たいビール。
それとなく断ってたつもりだったんだけど
ごくん……
思いのほか喉が乾いていたのか、ひと口だけのつもりが、気づくとグラスの半分ほどがなくなっていた。
「ふふっ、いい飲みっぷり」
「いやっ、これは……」
「いいのいいの」
松本さんは開店前にも関わらず、次から次へと料理を並べ
それが終わると、自身もグラスを持って俺の隣りに座った。
「これから店開けんのに、いいの?」
「ちょっとぐらいなら大丈夫でしょ」
「うわぁ、信じらんねー」
「ウソウソ」
今日は店開けないから
「え?」
それって休みってこと?
定休日じゃないから臨時休業ってやつ?
「つうか、今日だけじゃなくて
この先ずっと休みっていうか」
この店、閉めちゃうんだよね。
「えっ!?」
な、なんで!?
常連客だっていて、この前は地元のグルメ雑誌でも紹介されてたのに
「櫻井さん、俺……」
雅紀んとこに行くことにしたんだ
「マサキんとこ?」
マサキって、あのマサキの所に?
つまり、俺を今日ここに呼んだのは、その話をするためだったのか?
つづく