村上龍がファッション雑誌にエッセイを連載する時代 |   EMA THE FROG

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先日コンビニで立ち読みしたJOKERというファッション雑誌に、村上龍のエッセイ「すべての男は消耗品である」が連載されていて驚いた。思わず全文読んでしまったが、昔の「すべての男は消耗品である」に比べて非常にまとまった、良く言えば読み易い、悪く言えば普通のエッセイになっていた。

今回の内容は、彼自身が司会を務めるテレビ番組『カンブリア宮殿』にも出演した二人の社長の話で、まとめてしまえばその二人は若者以上に「欲」や「興味」に満ちているという事だ。話は当然のように「欲」や「興味」を持たない(持てない?)現代の若者への批判に向かう。批判というか、服はユニクロ、生活用品はドンキ、食事はサイゼリヤ、みたいな生活じゃあ寂しいじゃない、というような感じだ。

しかし当の若者たちは既に寂しさを感じてはいないように思う。ユニクロ・ドンキ・サイゼリヤの生活に、満足してこそいないが、耐えられない不満を持っている人は少ない気がする。逆に言えば、金がなくなりそういう生活レベルを選ばざるをえなくなった事で、今までいかに自分が必要ないものに金を払っていたのかを思い知ったんだろう。

何億円もする豪邸や、300キロ出せるスーパーカーや、何万円もする古いワインが、実際には必要ない事を我々は知ってしまった。今の人達は買物をしなくなったわけじゃない。「無駄なこと」に金を使わなくなっただけなのだ。安くて有益なものはネットで探せばいくらでも出てくる世の中だ。情報が末端まで行き渡った事で、消費者は「選ぶ」事を覚えた。テレビや雑誌で「この商品を買え!」と言われても、それを「疑う」事を覚えた。メーカーにとっては難しい時代だろう。あるいは、これまで自由に流行を「作り出してきた」大手広告代理店にとっては。