最近読んだ本 |   EMA THE FROG

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最近読んだ本


『眼と太陽』磯崎 憲一郎
評価★☆☆☆☆


良くも悪くも「芥川賞」的な作品。自己中心的、自己陶酔的、自己批判的、自己顕示的、いずれにしてもぜ~んぶ「自己」。一般人がドン引くほどに自分に潜水するなら認めようものの、この作品では所詮20センチくらい潜ってみました程度で(少なくとも僕にはそう感じられる)、むしろそんな自分に酔っている風でもあり、つまらなかった。磯崎はこの後の作品『終の住処』で第141回芥川賞を受賞しているが、さもありなん。ちなみにそちらの作品は未読です。いずれにせよ僕は既に、芥川賞的な小説に夢中になれる年齢は過ぎたのやも。それともそれは逆に、ある種の反抗精神の現れなのだろうか。ある男がアメリカで女と同棲したり事故にあったり白昼夢にゆらゆらしたりする話。まあ、読む前と読んだ後で僕には何の変化もなかった。


『思考の整理学』外山 滋比古
評価★★★★★


予想外の拾いもの。ものすごくおもしろかった。作家ではなく学者の書く文章の分かり易さ、まわりくどくなささ、シンプルさ、無駄のなさ、みたいなものがすごく新鮮。外山さんはただ内容を「伝えること」のみを目的としてこれを書いたわけで、「格好よく書こう」「文学的に書こう」「印象的に書こう」とあの手この手で文章を加工する小説家より、その内容がスッと頭に入ってくるのは当然なのかも。そういえば医者の書いた論文を最近読む機会があったのだが、外山さんの文章と同じ印象を受けた。余計なものも足りないものもない、文字を単なる「道具」として使用するスタンス。素敵。最近100万部を突破したらしいベストセラー本なので、内容に関してはどっかに詳しく書いてあるでしょう。興味ある方は検索してみてください。……つうか、小説家だって「伝えること」を最優先にせにゃいかんよなあ。ねえ、磯崎さん。


『バガボンド 31巻』井上 雄彦
評価★★★★☆


「この世に強い者などおらん。強くあろうとする者だけだ」又八の母親であるお杉さんの言葉にちょっとドキッとした。でも僕は、やっぱり強い者と弱い者というのはあると思う。自分を弱い者だと自覚した時、ならば強い者になろうじゃないかと考えられるかどうか。お杉さんは「自分を弱いと認めることは、弱い者にはできん」とも言う。たぶん10代~20代前半の僕が聞いたら首をかしげたろう。あるいは、「何を綺麗ごとを」と唾を吐いたかもしれない。でも今の僕にはよく分かる。その短い言葉の中に、無限の意味が込められている。僕はそのいずれかに心当たりがあり、無限の中からひとつ選んで理解した。それで、あらためて思うわけだ。僕は強くならねばならないなあ、と。