渡辺久信GMが監督代行に就任ということでこの本を引っ張り出したファンもいたのではないかと思います。



このなかで、1989年V逸の戦犯扱いにされたブライアントへの1球についても語られています。

打たれてベンチ裏に下がった渡辺久信に、後ろから追いかけてきた森監督が「ナベ、お前なんであそこでフォークを投げないんだ!」と叱責。

配球に正解はないと言われるだけに難しいですね。

それにしても森監督、2日前に完投 “させた” ピッチャーにいう言葉ですかね(苦笑)


それでは、あのときの配球を振り返ってます。


(初球 ボール)


アウトコース高め、ストレート(144キロ)のつり球。

普段は手を出してくるコースにピクリともしないブライアント。

いつになく集中力が高いことを感じる渡辺久信ー伊東勤のバッテリー。


(2球目 ファール)


インコースのストレート(147キロ)。

打たれた瞬間ヒヤッとする大飛球は一塁側ブルペンに入るファール。

伊東の構えたところよりもさらにインコースのボールゾーンに入ったことが逆に幸い。

ストライクゾーンに入っていたから完全にスタンドまで運ばれていたことでしょう。


(3球目 ストライク)


インコースへのスライダー(121キロ)。

一転して緩い変化球。

全く反応しないブライアント。

完全にストレート狙いであることが分かるなか、バッテリーが選んだ勝負球は・・・


(4球目)

148キロ、渾身のストレート。

「変化球で勝負にいって打たれたのなら悔いが残る」

この年のオフにこう語った渡辺久信。

結果は承知の通り、ライトスタンド上段へのホームラン。

ここまでの両者の対戦成績は18打数4安打(打率 .222)7奪三振と渡辺久信が押さえ込んでいました。

そして三振も高めのストレートで奪うことがほとんど。

三振を取る確率が一番高かった攻め方でしたから、このバッテリー選択は正しかったと思います。

エースとしてのプライド、絶対の自信を持って投げたストレートですから、やはりこれは責められませんね。

改めて映像を見てみると、2球目と4球目のストレートのコントロールに微妙なズレが生じています。

特に打たれた4球目、伊東の構えはアウトコースの高めでしたが、それがわずがに内側に入ってしまいました。

カウント的に初球のつり球のコースでも良かっただけに、本当に悔やまれる1球でした。

とはいえ、ここはやはりブライアントを褒めるべきですかね。


ところで森監督。

226イニング、17完投と酷使に耐え、開幕からローテションを守り抜いた疲労困憊のエースが、もしあの場面でフォークを投げ、それがすっぽ抜けてスタンドに運ばれたら・・・

なんて声をかけましたか?