「海の鳥・空の魚」  (角川書店)
鷺沢萠



些細な出来事からふと揺れ動く人の気持ちを描いた20からなる短編集。
まずは、この本で著者が書いたあとがきから

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『神様は海には魚を、空には鳥を、それぞれそこにあるべきものとして創られたそうだが、そのとき何かの手違いで海に放り投げられた鳥、空に飛びたたれた魚がいたかも知れない。
エラを持たぬ鳥も羽根を持たぬ魚も、間違った場所で喘ぎながらも、結構生きながらえていっただろう。
そうした連中にだって「うまくいった一瞬」はあったはず。
この20のストーリーを読み直してみると、自分の周りの様々な人(海の鳥あるいは空の魚)たちがそこここに顔を出していて驚いてしまう。
しかし私は、思い通りにいかないことがあっても鼻の頭にシワを寄せてちょっと笑ってみせることで済ませてしまう彼らのことが、大好きである。
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本編も良かったですが、このあとがきも好きです。
その昔、恩師に「損すると言われる生き方をしているかもしれないけど、ブレない意志を持ち続けて進んでもらいたい」ということ言われたことがあります。
人生なかなか思い通りにいかないことばかりですが、それでも考え方ひとつで「そんなに悪くもないかな」と思えたりもします。

『明日、もうちょっとだけ頑張ってみようかな』

不器用な生き方をしている私の心に沁みる一冊でありました。