2024年12月15日。ツアー千秋楽をアリーナ2列目から眺めることが出来ました。眺めると書いたのは、私の周りには眺めるように観ている人が多かったから。あくまで私の憶測なんだけど、今回は課金勢をかなり融通してくれたのでないかと思う(毎回なのか気のせいなのか何もわからんが)長らくのファンが【今回初めてこんな席が取れた】とつぶやいてるのを多く見たからです。林檎班に入ってるのに外れたという人もいたし、FCかどうかというより歴ではなかろうかと予想。(私は林檎班には入ってない。ポケットのみ。でも開設当初に加入してる)




で、私のまわりに座っているのも同世代かそれ以上か、またお父さん世代の方も結構おられ、1曲終わるごとに後方から聴こえてくる【りんごちゃァーん!】【カワイイー!!】【ヤバイヤバイヤバイカワイすぎる!!】みたいな女子のキャイキャイしたムーブをかもす人はほとんどおらず、皆口には出さずとも何かを感じながら思い思いに旗を振っていた。きっと皆が彼女のステージと自分の音楽の記憶を重ね合わせていた、と思われる。思われる、と書いたのはその方々と実際ライブの感想を話し合ったわけではないから。でも明らかだったのは、【これが林檎ちゃんのやりたかったことなんだよね。可愛い女の子をプロデュースしてね。】と、私の真後ろのカップル(夫婦かもしれない)がしみじみとつぶやいていたこと。そう、私もそれを思っていたんです。




昔、椎名林檎の本(自伝ではなく、もはや誰が書いたかわからんような彼女のルーツ本を名乗るものがめちゃくちゃ流通していた)の中で、彼女の履歴書を見たことがある。その中で彼女はたしか【マライア・キャリーのバックコーラスになりたい】と書いていた。バックコーラスなんて何言ってんだよ貴方はステージの真ん中に立つ人だよと思っていた私は当時中学1年生。引っ込み思案で真ん中に立つような人間とは程遠かったので、彼女の思考から見た目から立ち振る舞いからみなぎるカリスマ性に心から憧れていたのです。だから、私は裏方がしたいといったような彼女のインタビューを見た時に、またまたぁ(ほんとは思ってないやろ)と思っていたのだけど、彼女の25年を見てきて、また今回のステージを観て、その発言は真意だったのだとやっと腑に落ちたんです。




アンコールにて、正しい街をSUZUKAが歌いました。本当は正しい街だけは、林檎に歌って欲しい。そう思ってるファンは私だけではないはず。でも私は今回の正しい街に打ちのめされてしまった。1週間が経ってもなお、あの時のSUZUKAを照らす白いスポットライト、彼女の終始緊張した面持ち、スカートを握りしめている右手が忘れられない。歌唱力はもちろんだが、無駄なシャウトもせずシンプルに丁寧に歌ってくれて、それがなんだか彼女へのリスペクトに感じられて、それを見守るように横に佇む女史(いや実際はギターに徹していてあまり見ていないように思われた、ただしそれがまた良かった)との立ち姿が、本当にエモーショナルだったのです。私は林檎ちゃんの若い頃の危うさが好きでした。なにしでかすかわからない少年みたいな目。そういった【若さ】がSUZUKAの歌唱にのりうつっていて、さながらSUZUKAはあの頃の正しい街にいた椎名林檎のように思えました。ファンでも長らく聴けなかった正しい街を、あえて学生服を着たSUZUKAに歌わせたところが、彼女のプロデュース能力の長けたところなんでしょう。



伊澤一葉さんのポスト
【林檎さんは愛が深い】

きっとそうなんだと思います。椎名林檎という人は自分ひとりでもやっていけるのに、なぜか周りの人を生かしたがる。周りの人の良い部分をわかっている。この人によって輝かされ、今活躍してる人が何人いるだろうと思う。私は前回のツアーのあと、不完全燃焼気味なレポートを書きました。私はキャバレーみたいなの要らないと思っていた。あなたがそんなに着替える時間もダンサーも後ろの映像も要らないから、あなたの声を聴かせてください、昔の曲も歌ってください、と思いました。あの時の気持ちはあの時のものでなにも間違っちゃいないけど、でも私は今回のツアーで、椎名林檎がやりたいことがやっとわかった気がしたんです。