先程メールが来て、それは坂本慎太郎の発券開始のことだったのだが、ここ数日は中田裕二のTerribleLadyばかり聴いています。ライブの1週間前ともなれば坂本ウィークとして盛り上げていくのが私の慣例ですが、まったくできてません。TerribleLadyがまじでカッコ良すぎる件について。
中田裕二本人が言う通り、この方は洋楽のテイストに邦楽のメロディーを乗せるのが得意な人。なのでちょっとオシャレなj-popが好きな私にとって中田裕二の作風はかなりツボなのだが、この曲はj-popとも言い難い、最早洋楽に近いと思った。このブルージーなノリ、渋さ。昨今の邦楽にはなかなかないと思う。流行りでないとも言えるが。
歌詞の内容からしてこれは、完全に谷崎潤一郎の「痴人の愛」。タイムリーなことに明日映画が公開されるらしい(まじでタイムリーすぎるぞ)。主題歌はコレで良かろうもん!中田裕二の右に出る者なんておらんやろがい!!と思ったら今をときめく某ミセスさんでした(ヤッパネ)。とはいえ、今回いくら探してもこの曲と痴人の愛について彼が語るインタビューやサイトには辿りつけなかった。彼はよく「非公式タイアップ楽曲」を作るので(既にある作品をテーマに曲を作る)、私は何を見た訳でもなく「痴人の愛」と思い込んでいたんだけど違うのだろうか。いやこれ完全に痴人の愛だろ。絶対なんかで言ってるはずなので知ってる人は教えて欲しい。
その上で、このMVがとてつもなくいいのだ。ここからはオタク目線の話になるのでオタクじゃない人は読み飛ばして欲しいが、とにかく裕二の目がいい。強すぎる。さきほどの痴人の愛を前提に置けば、完全にいじけた男の目である。そういえばこの人俳優もやったことあるんだよね…と彼がもう黒歴史としているらしい某映画のことを思い出す(結構演技うまかったよ裕二)。この人は椿屋のころから一人称「俺」だったり「私」だったり主人公の男女問わず架空の恋愛(人間)模様を作詞することがお得意だったので、1枚サラッと聴いた位の人には百戦錬磨な男の音楽と受け取られることも多いように思う。百戦錬磨でもない。いつだってひとりの女に振り回されている。そしてそれが良さといえる。振り回されてもなおカッコつけようとする男の哀愁はもはや売りとも言えよう。そんで今どきそんなの歌ってる歌手いない。ダサいもん。ジェンダーレスなこのご時世にはもう流行らんでしょう。でもそんな古の男のロマンを何十年と歌い続けてるのが中田裕二で、もはや職人のワザである。私はそこに拍手を送りたいのだ。
このMVは、一言で言うとエロい。なんかもう中田裕二のブログ書く時エロいエロい言うてるのでそろそろ勝手にエロ広告入れられるんじゃないかと心配してしまうが、「一言でいうとエロい」だけで、本当はその一言では片付けられないものがあるのだ。純文学にはいつもなんかわからん色気があるものだ。ただこのMV、「エロい」描写は皆無であり、何も興味が無い人からすればただの中年男性が歌ってるだけだから安心してほしい。しかし、この人の音楽の色気を汲み取れる人はこの映像に潜むエロさを感じ取れるはずだ。個人的には暗さと明るさの対比の描写が鼻血モン。センスあるわ。鳴くギターも気だるい鍵盤もスネアも全てのサウンドがアウトロ終わる瞬間までアダルト。ほんでこのラストの笑顔の部分なんですけどね、「リプレイ回数が最も多い部分」になってて笑ったわ。同士めちゃくちゃおるやん。わかるわ、語り合いたいわ。この時の情緒教えてくれよ。なんで笑ったん?素ですか?演技ですか?どういう状況???こっちの情緒がもうめちゃくちゃなんですがどうしたらいいでしょうか!!!!!(最高です)
カラオケの映像っぽくなりがちな中田裕二のMVだが(これは申し訳ないけど女優さんの選び方だと思います、正直な感想です)、このMVはとても粋だと思った。なんかさ、妙齢の女優とかいらんのよな。裕二ひとりで演じられるのよ。その方がものすごい考察はかどる。中田裕二の音楽って考察しがいがありますから。これはランナーや正体のMVも同じことなんだけど、考察したくなる作風ってすごいと思うのよ。こないだ、某若手アーティストの新曲を聴いた時に星野源みたいだと思った。「〇〇みたいな楽曲」はトレンドとともに増え続けるけど、中田裕二みたいな曲が書ける人はもう出てこないと思う。最高だ。ただひとつ、柄もんの服だけちょっと変えてあげたい。もうちょいシックな方が似合う。