我が家では賞味期限というものの認識が大変甘い。実家でも今の家庭もだ。賞味期限と消費期限の違いを知ったのは中学くらいで、おそらくテレビのクイズ番組で見た。昔は雑学系の番組が大変多かった(今もか知らん)。そのためテレビっ子だった私は、なくてもいいけどあるならあったほうがというレベルの知恵が謎に豊富だと自負しており、今もテレビには感謝している。
で、賞味期限の話だが、賞味期限というのはそもそも「美味しく食べられる期限」という定義であって、消費期限よりだいぶゆるいものだと心得ている。「この日までに絶対消費してください」と急に深刻な顔して迫られるあのかんじとは異なる。美味いか不味いかの判断がこちらに委ねられている、ただそれだけだ。だからいつだったか実家にて、冷蔵庫の奥から出てきた古い焼肉のタレを手にして母が、さすがにこれはいかんと捨てようとしていたとき、すかさず私は言った。お母さん、焼肉のタレは賞味期限やから大丈夫や。ジュリーも美味いって言ってた。そう、あのジュリーが言っていたんである。
あれはたしか、私が中学くらい、多分2000年くらいのなにかのバラエティだったはずだ。クイズ形式のそれはまさに賞味期限のテーマで話が進んでいて、ジュリーはなぜか一人かなり古い焼肉のタレを食わされていた。記憶では、コクがある!とかそんなかんじのことを目を丸くして言っていた気がする。まわりの共演者も、ジュリーさんマジすか?みたいな顔をしていたはずだ。しかしあのジュリーが、古い焼肉のタレを公共の電波のもと口にするだろうか?クイズ番組に出てるというだけでもなかなかな話だ。いくら2000年代だからってそんなハメをはずすものだろうか。ではあれはなんだったのか?私の幻なのか。検索してもそんなもの何ひとつ出てこないのだ。
でもたしかに私は見たんだ。そうでなければ焼肉のタレは10年もののほうがコクがあってうまいなんて認識じゃないはずだ。だかしかし、昔ジュリーファンだった母にとってはハァ?ジュリーが?なぜ焼肉のタレについて言及を?と言わんばかりのいささか信じられないといった様子で、その時はあっそう…と軽く流されたものである。当時はまだSNSもYouTubeもない、携帯もガラケー時代だった。ジュリー/焼肉のタレで検索する知恵なんかも私にはなかった。したとて何も手がかりはなかったと言える。私はそのジュリーをもう一度この目で確認したかったが、テレビが再放送しない限りもうそれは叶わないものだと思っていた。そうこうして時は随分経ち、令和5年の夏。まさに昨日、私は本当に偶然に、ジュリーのそれにでくわしたのである。
だれかが勝手にアップしている非公式のものなのでリンクは貼らないが、なぜか、本当になぜか、突然YouTubeのおすすめに出てきたんである!!!!(まじでなぜ!!!!!)
私、思わず声出ました。で、急いでそれを見ましたらば、ほぼ記憶の通りジュリーがひとり焼肉のタレを食ってた。
ジュリー幻じゃなかった………!!!!!
お母さん、あったよ!ジュリーあったよ!ジュリーが焼肉のタレ食ってうまいって言ってるよ!私、即座に母にLINEをする。深夜にもかかわらずすぐ返信が来た。この喜びを分かち合おうぞ!!!と思いきや母はなにひとつ覚えちゃいなかった。私も興奮してしまい焼肉のタレ焼肉のタレと連呼した随分と不親切な文面を翌日になった今、冷静に見ている。母には中途半端にジュリーの話をしてしまったため、なんの事?ときかれるので面倒なことになった。今度会った時にあの日のジュリーの姿を見せながら説明せねばならない。なんにせよ、20年振りに起こった奇跡に私は深く感動している。