昔からの知人で「こじらせくん」がいる。自他ともに認めるこじらせで、自称ポジティブなメンヘラ。地元の友達からは現代版太宰だねとまでも言われたらしくそう言った友達も友達だなと思ったが私も笑った。私たちは大人になった今でも彼と会う機会がたまにあるのだが、彼は私たちから常にいじられていて、彼も満更でもなさそうにしている。私たちはいつも彼を「こじらせだ」と笑う。
バイト先の先輩からレコード・コレクターズを貸してもらったので読んでいたら、ビートルズのサージェントペパーズについての評が載っていた。ジョン・レノンはこのアルバムにコンセプトなんかなかったと言っていた、と書いてある。アンディ・ウォーホルのことが頭に浮かんだ。なんでこう、芸術家というのは、コンセプトなんてないとかカッコイイことを言うのだろう。私なんてコンセプト大好きだし、聞かれてもないのに自らコンセプトを語り出す癖がある。あるものをないというのはカッコイイ。私はまだそこには至っていないな。今度からそういう風に言おうかな、あるものはなくてないものはあって本当はあるのにないと言うことが·····とか考えていた時に現代版太宰が脳裏によぎった。彼はそういうグダグダしたことを恥ずかしげもなく言う。私はそんな堂々とこじらせと自称する彼のことを初めて尊敬した。彼はまた私たちのことを尊敬しているらしいけれど。こじらせ発言を心のどこかでセーブしていた自分のに気付く。私だって昔から今までずっとこじらせている。