2022年、明けてすぐに「音楽」という映画に出会った。このなんとも掴みどころのない朴訥としていてクールでズックにロックな坂本さんがアニメ映画の声優をしていると知った時はなんとも形容しがたい驚きと興奮で声が出たと思う。なんで知らなかった自分?えっ!て言った。声出た。好きな人は好きって言いたいとかほざいてわりと情熱を傾けてきた方なのに、こんなに鈍感になっている自分にも驚いたよな。
だいぶ前に坂本さんがタワレコのポスターに出たことがあって、それは無数の携帯電話の中でひとり佇む姿。久しぶりに見ても坂本さんの言葉が胸に来た。音楽を観て心揺さぶられたその時期からまた、待ち受けにしている。
音楽は役に立たない。
役に立たないから素晴らしい。
役に立たないものが存在できない世界は恐ろしい。
これ、もちろんコロナがやってくるだいぶ前のものなんだけど、コロナ混乱期を超えた今だからこそしっくり来る部分もある。さて、役に立つってどういうことだろうと思う。役に立とうとしてお節介のこともあれば、役に立つつもりなんてなくとも役に立ってることもある。
当時の私、この言葉が「音楽は役に立たないベース」で放たれているものに聞こえていた。役に立たなくてもOKだろ的ニュアンスで捉えていたのが昔の私。最近確信したんだけど、音楽は人の役に立つよね。でもアーティストって役に立とうと思って作品を世に出してる訳でも無いはずだから。まず一番に出したいから出す。それが結果として役に立ってる。場合もある。役に立とうとした瞬間駄目になることをわかった上での言葉かも知れないな。それって音楽家だけに限らないことで、世の中のすべては役に立たないことなどないと思うよ。坂本さんの意図、もしかして今やっと理解ったかも。結局音楽もなにもかも、役に立たないものなど何も無かった。


