久しぶりに「ユグドラシル」を聴いていた帰り道。私このアルバムが安定して好きかも知れん。中でも「embrace」はバンプの中でも3本の指に入るくらい好きで、思わずハンドルネームにしたくらいです。




この曲の何がほかと違うんだろうなと考えてみたら、なんかこの曲には独特な湿り気がある気がしたんです。それで気付いた、これあからさまに五感の曲なんですね。五感つったら視覚・聴覚・ 味覚・嗅覚・触覚ですけど、詞の大部分が(味覚以外の)これらで出来ているんです。バンプの詞っていったら宇宙とかとある概念とかをテーマに、小説のような細かい描写をしてくれることが多いと思うのですが、この曲を構成しているのはほぼ「五感」。そのせいか、この曲には他には無い温度や湿気、あと艶かしさすら感じてしまいます。




「『そこに居る』のに『居ない』と/気付く時もあるだろう」
「この目が視力をなくしても/僕は君を見るだろう」

という部分。五感っていう人間の超・根本的な感覚を唄ってるなかでこういう、見えるのに見えないとか見えないのに見えるとか宇宙的なことも言い出すわけですよ。さらに



「命のない世界で僕と同じように/生きてるものを探しただけ」


とか、「ない」ところに「ある」とか言い出すわけですよ。でも歌い手にとっては、生きてるものを探した「だけ」で、生きてるものを見つけた「だけ」なんですね。自分が居て相手が居て、何も疑わない姿勢。このまっすぐなところが何気にこの曲のミソだと思ったりする。僕と猫のふたつの鼓動から曲は始まるけれど、結局猫を愛でる男のイメージなんかとび越えて、これは人間同士の話かも知れないし、もっとスケールのでかい話なのかも知れん。静かだけどすごく内に情熱秘められた熱っぽい曲に聞こえます。なんかもどかしい気分になって、終わりのエフェクターもまたそうさせる。大好きな曲です。




BUMP OF CHICKEN
embrace(2004)