とても気になっています。
イサ夫と一緒に博士課程を終了したクラスメートの
6人中4人の就職先は、アメリカの金融関連企業でした。
2年前のアメリカ、特にニューヨークはミニバブルのような経済状況で、
イサ夫と同じ専攻学科の卒業生は金融会社に就職すると、
破格の年収を約束されていました。
リーマン・ブラザーズに就職した友人もいました。
ニューヨークのリバーサイドにあるコンドミニアムの高層階で、
忙しいながらも優雅な暮らしをおくっている彼を、
皆が羨望の眼差しで見ていました。
イサ夫も大学在学中は一攫千金を夢見て、
銀行や証券会社の就職説明会や面接に足しげく通っていましたが、
大金を稼げても労働条件が悪いことや、
いつまでもバブル経済が続くわけがないことを理由に、
スイスで今の安定した仕事に就くことにしました。
結婚をして、これから家庭を築いていこうとしていた私たちにとって、
それは本当に賢明な選択だったと思います。
妻の妊娠が判明した直後に、夫が職を失うなんてこと、
できれば経験したくありませんもの。
リーマン・ブラザーズの経営破綻を発端に、信用不安が増して、
金融会社に勤める多くの人が職を失うことでしょう。
家族を養うために過酷な労働条件の中、懸命に働いてきて、
ある日突然、仕事を失うことがどんなに辛いことか、
私には想像もできません。
もちろん、
優秀な人はすぐに次の仕事が見つかるのでしょうけれどね。
もしかしたら、
仕事を失ったくらいで「どん底だ」なんて弱音を吐いているのは、
「ただの甘え」かもしれません。
だって、
世界には今日食べるものにさえ困っている人たちが、
金融業界で職を失った人の数よりずっと沢山いるんですもの。
まともな医療がなく、子供の死亡率が高い所では、
「数打ちゃ当たる」(沢山産めば、ひとりくらい生延びる)と、
どんどん子供を産み続ける人が大勢いると聞きます。
そして、そのような厳しい貧困を生み出している原因の一旦は、
先進国でお金を右から左に動かすだけで巨額な利益を得て、
何の生産活動もしていない人々が楽しんでいる消費社会であるということも、
ある程度理解しています。
リーマン・ブラザーズ破綻のニュースを見て、
そこで働く人たちの家族のことを想ったり。
世界の反対側でそんな事件は全く知る由もなく、
毎日貧困と戦いながら子育てしている人たちのことを想ったり。
普段なら、同じニュースを見ても、
「日本やスイスの金融業界は大丈夫かしら?」とか、
「去年、ドルを大量に日本円に替えといて良かったわ!」とか、
「驕れる者は久しからずってことね....」
というようなことしか考えない私ですが、
妊娠すると、
普段とは異なる視点から物事を見るようになるようです。