実践してこその学び | いまのしゅんかん

実践してこその学び

昨日、ランチの後、ラボにいくために、同僚一人とアルバイトを始めたばかりの学生を車に便乗させたのだが、そのときに学生さんが、ラボの仕事とデスクワークとどちらが好きかと問いかけてきて、

わたしがラボのほうが好きと返したのに対し、同僚はどちらも楽しいと言うので、わたしが、

「彼は、実験のスキルもすごいけど、リサーチ能力もものすごく高いんだよね。ChatGPTが出現した今でも、個々のリサーチスキルは相変わらず求められるし。」

と言ったら、同僚はきっぱり、

「ChatGPTの出現の脅威について語られるけど、僕はそれがわからない。ChatGPTは全然インテリジェントではなく、文章を書くにはいいツールかもしれないけど、ベストな答えを与えてくれるかというとそうではない。しかも、機械学習で素人のインプットも加算されていくから、ますます変な答えが返ってくるリスクがある。」

と言ったのだった。

 

その後、実験室で同僚は、

「グーグルサーチも最初はいいと思ったけど、最近は広告が前面に出てくるようになって使いにくくなったよね。まぁグーグルもお金を稼がなければいけないから仕方がないけど。」

と。

 

ちなみに学生さんはChatGPTは好きではなく、あまり使ってないとのこと。

やっぱりエンジニアリングではあまり使う価値がないツールなのだろう。

私も去年使ってみて、一応出てきたアイデアを試してみたけど、結果、情報を得るツールとしてもグーグルサーチに劣ると判断し、以来使ってないのだが。

 

わたしの彼は、直接仕事では使わないけど、出産休暇に入る同僚に対するメッセージをChatGPTに頼って作文したそうだ。

確かに、、、滅多にないけど、いつもやたら時間がかかってしまう日本企業へのメールを書くことがあったら、ChatGPTを使ってみようと思った。

デンマークでは、別に礼儀とかやたら丁寧にとか、仕事に関係ないところで気を使う必要はなく、むしろ内容そのものが問われるから、逆にChatGPTに頼ることもないけど。

 

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最近彼は新しいプロジェクトを始め、もう野球はやってないのだが、昨日の夜もひたすら論文を読みながらCodingしていて、楽しそうに色々試しているようであった。

彼曰く、その論文はもう5年前のもので、かなり前に入手していたが、実際に今活用することを試すようになってさらに学べているという。それがものすごく楽しいと。

なんでも、2年前にデモをして上の目に止まったことが、フルタイムでプロジェクトにしてもいいと承認がおりて、労働時間以外にもやってしまうくらい楽しいようだ。

 

日本では、論文を読む勉強会があったり、学会に行った後の報告会があったけど、それは本当に意味がなかったという。

誰かの発表を聞いて勉強している気になっても、実際に使わなければ学んでいることにはなってなかったと。

本当にその通りだな、と思った。

 

わたしは、去年のリスボンの学会で得た情報と、そこで論文を読みなおし、具体的なアイデアを思いつき、デンマークに戻って二つのアイデアのトライアルをやってみたところ、10月の測定で初めて機能性を発揮する結果が出たのだった。

そして今回も、シアトルでイタリア人と話したことでヒントを得て、プロジェクトリーダーと同僚に相談し、新しい材料を注文した。

実際になんらかのアクションを起こすことで初めて情報を得ることに意味が出てくると思っている。

 

9年前、日本でビジネスの私塾のコースをとった人たちが団体で研修旅行でデンマークに訪れ、その後のプレゼンを聞きに行ったが、確かによく勉強はされていると思ったけど、だからと言ってビジネスにどう生かすのか具体的なアイデアやビジョンは何もないようで、600万円だかの高額な授業料を払うだけの意義はあったのか、甚だ疑問であった。

 

 
2018年に彼がコペンハーゲンのイベントに参加した後、日本の会社で出張報告会をした時、部署に関係するだろうとデンマークの駐車アプリについてプレゼンをしたら(そのため、私がせっせと写真を撮り、彼に送ったという。。)、反応はイマイチで、
「どこにAIが入っているんですか?」
という質問があって拍子抜けしたそうである。
日本人は、エンジニアであっても、どういうふうにアプリができているのかよりも、先端の技術にしか目がいかないのかと。そして、なんだ、デンマークのアプリ、大したことないな、とマウントを取るのだろう。
日本の方が全然IT関係は遅れているにもかかわらず、である。まぁ確かに技術の問題ではないのだろうが。
 
知識重視の日本は、ChatGPTが脅威になるのかもしれないが、生成AIで置き換えられるものはどんどん置き換わり、もうこれを機に知識重視から、実践重視に変わって欲しいと思う。
私からすると、そもそも知識だけを持っていることは学びとも定義していないのだが。
 
追記:ちなみに、よく日本人は語学テストの前に準備しようとするけど、それこそ私には意味がわからない。。私はデンマーク語のテストの前に試験勉強したことがない。言語こそ、実践ありきで、机に齧り付いて身につけられるものではないと思うのだが。私は、語学学校の外では、宿題以外にも新聞を読んだり、ラジオを聞いたり、もちろん人と話したり、極力使うことを心がけた。デンマークのテレビドラマが好きだったので、字幕をつけながら見るのも役に立った。
日本に帰ると、高校生が一生懸命英単語を覚えようとしているのをみても、そんなの逆に害になるからやめた方がいいよーと本気で止めたくなる。