ドラマみたいな解雇劇 | いまのしゅんかん

ドラマみたいな解雇劇

昨日、緊急招集がかかり、取締役会長から、社長を解雇したという通知があった。

社長を解雇したのはその前日の1031日。翌日の111日には鍵やカードなどを返済、すべての私物を引き上げ、ということらしい。結局わたしは社長に挨拶さえできなかった。というか、自ら挨拶しにいく気にもなれなかった。

まるでドラマのような展開というか、ドラマでよくみる突然の解雇劇って、現実でも起きるんだ、、と驚いたが、普通の社員はともかく、社長に限っては即時解雇なんだそうだ。引き継ぎもなし。考えてみれば当然だけど、自ら辞める場合はともかく、解雇された場合はその指揮に対する異議申し立てなわけだから、その問題のある社長の指揮を数日でも続けるわけにはいかない。

とりあえず、社員のマネージメントをしていた女上司、すなわち、わたしをデンマークに連れてきた上司が暫定で社長になったが、取締役会長いわく、新しい社長を探す予定はないとのこと。つまり、そのままその上司が正式に社長になる見込みである。

社長というのは、結果を出すことが平社員よりもかなりクリティカルに求められるので、突然の社長解雇は珍しくないそうだが、それだけにそのリスクの保障としてかなりの高報酬であると。そして社長のポジションにアプライするひとは、そのリスクも承知の上だと。

2年半前に、前社長が定年退職する際、取締役員のひとりであり、管理職でもあった社員が新社長として名乗りでたが、取締役会はそれを認めず、あえて外部からより優秀そうなひとを選んで新社長としたものの、うん、確かに社長はかなりアンビシャスで、より営業に力を入れようとシステム化したり、組織のスリム化でリストラしたり、それなのに新しく営業専門のひとを雇おうと知人をひっぱってきたりしたが、すべてが裏目となり、ただ手間が増えてタダ働き時間が長くなっただけで赤字はさらに膨らみ、なおかつそれに不満をもつ社員が続出し、何人もの同僚が辞めていった。

たぶん当時は取締役会は外部からよんで新しい風をふかせたかったのだろうが、いかんせんうちの会社は相当特殊でニッチなことを業務としているので、事情を知らないひとが突然入っても、プロジェクトひとつ売ることもできないわけで。営業担当のひとも結局は自力でミーティングもできなければ見積もりひとつ書くこともできず、常に誰かエンジニアの手を必要としていたので、そのひといらねーじゃん?みたいな感じになり。わたしは最初からそんな専門外のひとを営業にするのには反対で、社長にも直訴したけど、最終的に辞めさせられたとはいえ2年近くもずるずると居座り。

なのでそのときの失敗を教訓として、今度は入社して10年以上たっていて管理職としても経験の長い上司を社長にする、ということにしたのだろう。というか、わたしも怖くて外から新しい社長が入って欲しくないと思うし、同僚のみんなもそう思っているだろう。

 

それにしても考えさせられる。。

今の仕事は大好きだけど、以前に比べて小さなプロジェクトが増えて、効率が悪くなった。そんな予算がないのに、クライアントとのやり取りというタダ働きが増えて。中には大学にいるから、タダで情報をもらえると勘違いするひともいたり。まぁ、前は巨大プロジェクトひとつふたつだったのが、今や常時56こプロジェクトを並走させている状態なので、儲からないけどいろんなことができて楽しいが。今日も、フォーラムの展示会観にいって、職場にいって特許ミーティングして展示会の写真をみせて、久しく連絡のなかったクライアントからミーティングによびだしがかかって、夕方から実験して、とめまぐるしい一日だった。

 

昨日はドラマみたいな解雇劇でショックを受けたのと、自分の将来に不安を感じたのとで彼に八つ当たりしてしまったけど、高校生のときからビジョンをもってコツコツと地道にがんばってきた彼と違って、不安症なくせにいつでも行き当たりばったりで深く方向性を考えることもなくその場その場でやるべきことしかやってこなかったわたしは、こういう非常事態で弱いことを改めて思い知った。

彼は意図的にアカデミアと産業界の中間にいることを選んで、そういう人材は希少なので今ものすごく重宝されているが、わたしは息も絶え絶えになりながらPhDをとってアカデミアに向いていないことを認識し、また運よく今の会社にひろってもらったという後ろ向きな理由で同じような立場をとっているに過ぎないので、それほど需要がある能力をもっているわけでもなく。ただの実験好きなだけで。

メンターをやってたくせに、自分のこととなるとこんな状況で初めて考えるという情けなさ、、、

自分のキャリアについて省みさせられた一日だった。