日本の文化をみせること
ずーっと彼に観せてあげたいと思っていた、「もののけ姫」のDVDを、近所のビデオ屋さんでみつけたので、早速買って、子供が寝てから二人で観た。
以前、やっぱり偶然見つけた「千と千尋の神隠し」のビデオも買って観たことがあるのだが、二度みても、二人の感想は「?」であった。
それに対して、「もののけ姫」はわかりやすい、と。
「千と千尋」は観たことがなかったのだが、「もののけ姫」は劇場で観た。
しかし、そのときは、ピンとこなかった。
それから、結婚して出産して引越しをしてからしばらくして、住む街から車で1時間ほどのY村というところに、元夫の指導教官と一緒にたたら製鉄の見学に行き、そこが「もののけ姫」のロケ地のひとつであると聞き、再度また観てみたいと思っていたのだ。
わたしたちが住んでいた県は、八百万の神が集まる場所で有名なところなのだが、スサノオの八俣のオロチ退治伝説は、製鉄の原料となる砂鉄によって川が赤く濁り、まるで血が混ざっているような色を呈したことにより、創作された話などのではないか、と言われているそうだ。
ともかく、人間が自然に働きかけ、何かものを生産する現場をみて、「もののけ姫」を観たいと思うようになったのである。
結果、7年前に劇場で観たときよりも、はるかに大きな感銘を受けた。
彼も、「すごく面白い。」と。
「この話は、ハリーポッターのように、明らかに誰かが悪者で、というのではなく、自然にとっては不都合なことであっても、人間自体はいたって普通の人としてあつかわれている。」
「そうだよ。エボシが自然を破壊することもいとわない、強烈なキャラクターとして描かれているけれど、大なり小なり人間ってそういうものでしょう?食べ物やエネルギーの恩恵を自然から受けるだけではなく、日常的なものを生産するのに、自然を破壊することが必然となっている。じゃなかったらどこに工場を建てるの?人間は自然を消費しながら生きているんだよ。だから、わたしは、そういう意識もなく、過剰に消費するのが嫌い。あんたが太っているのだって、無駄に消費している証拠だよ。自分は自然に関心があると言っておきながらね。あと、食べ物を捨てるのも嫌い。」
実は、話の途中まで、彼はタタラ場のリーダー、エボシを悪者としてとらえていたようだ。でも、映画の中で、タタラ場の女たちが、
「ここは、下界よりもとってもいいところだよ。男は威張らないし、ご飯はおなか一杯食べれるしね。」と言ったときに、わたしが、
「ほら。エボシが人間にとって都合のいい社会をしっかり管理することによって皆が満足できる。自然に慮ってなんていったら、いつも空腹だよ。あんただって、いつも満腹になるまで食べるでしょう?」
となじったのだ。
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今、彼はダイエットしている。
バカンスで、ついに98kgまで増えてしまったので、さすがに激怒したのだ。
身長183cmだから、適正体重は最大でも85kgであるからだ。
しかし、その啓発のためにこの映画を観せたいと思ったわけではない。
日本のことを知って欲しいから。
本当はじかに日本を見てもらうのがベストではあるが、それができない今、なまじガイドブックを読むよりも映画を観てもらうのがいいかなぁと。
「もののけ姫」こそ、日本独特の自然観が表現されていると思うから。
自然に対して働きかけながら、なおかつ、自然に対して脅威ももっている。人間がコントロールしきれないと思っている。運命は自分で決められるものではないと感じている。
そういう日本人の人生観。
この国は、日本よりも自然環境が豊かに感じるけれど、あくまでも造りだしたような自然というか、人間にとって都合のいい環境を用意しているような気がする。
日本の方が、厳しさを感じるというか、必ずしも人間にとって都合のいいばかりではないというか。
でも、そういう自然が懐かしかったりする。
川のあまりに早い流れに、ビーチサンダルをとられてしまったのも、せつない思い出として残っている。
わたしは、今、彼の国に住んでいるので、彼の文化に馴染む努力をしているが、彼にだって日本を理解する努力をして欲しいと思う。
漢字を覚えろとまではいわないが、違う文化をお互いに尊重しあわなければフェアじゃないと思う。
ここに住み始めたころは、何もかも新鮮で、社会福祉も行き届いて、日本に比べてなんて住みやすい国なんだろうと思っていたが、なかなか帰ることのできなくなった今は、日本のよさも再認識するようになった。
確かに、いろんな問題も抱えているけれど、もっと繊細な文化をもっているなぁ、と。
教育では、考えるというよりも覚えこむことが多いけれど、多種の漢字を駆使する言語も深みがあってすばらしいと思うし。
そして、日本のことを話すたびに、彼が元奥さんの母国を引き合いに出すのもムカつく。
もう二度と行きたくないと言いつつ。
確かに、同じアジアで共通することもあるかもしれないし、10回以上行っているから知識が豊富でつい口に出てしまうのかもしれないが。
日本には、日本独特の文化があるんだってことをきちんと認識して欲しい。
確かに、とてもじゃないけど、10回も行けるようなところではないが。
せめて、あの、山深い中にある、たたら製鉄の現場に連れていきたい。