親の姿勢の影響
彼は、また息子さんのことで、保育士とのミーティングがあったそうだ。
さまざまな問題も改善がみられるものの、注意に対して耳を傾けないことに対しては、依然として改善されていない、と指摘を受けたそうだ。
息子さんは、大人に対してあまり敬意を払っていない、というか、いくら叱っても注意してもそれを聞き入れないところがある。
あくまでも、自分のペースを貫こうとする。
3歳だったら自己中なのは当然だが、自分の意志を主張して反抗するというのではなく、何も言い返しもせずに無視する感じ。彼が大声で怒鳴っても、ヘラヘラ笑いながらやんちゃを続けるのである。
今日も、保育士が、ガラスをもっていて両手がふさがれた状態なのに、足に息子さんががしがみついてきて、思うように歩けず危ない思いをしたと。それを説得しようとしても、なかなか理解してくれずにしがみつくのをやめてくれなかったそうだ。
なんていうのかな。
ただ楽しいことを追求したいというだけではなく、その前に相手が見えていないような感じがするのである。
わたしは、息子さんの問題は、まわりの甘やかしすぎの教育にあると思っていた。
でも、彼の話を聞きながら、それだけではないような気がしてきた。
息子さんが、大人に対して敬意をもたないのは、元奥さんの彼に対する態度のせいではないか?と。
もう、ずいぶん前のことになるが、つきあいだして間もないころ、つい遅くなってそのまま彼の家に泊まった。
元奥さんは朝方帰ってきて、そのまま自室にこもって寝ていたが、8時ごろにみんな起き出すとさすがにうるさくて眠れなくなったせいか、2時間ぐらいしか寝てないのに起きてきた。
わたしはすぐさま帰りたかったが、娘が息子さんと遊ぶのに夢中になってしまい、なかなか帰れずにいた。
そしたら、元奥さんは、彼にいろんな命令をしだし、いつもはぐうたらな彼もしゃんとして、植木鉢の皿を用意して並べたり、キッチンの床を拭き掃除したり、棚の上のホコリをふき取ったり、とにかく次から次へと命令されるがまま彼はそれに素直に従い、ひきりなしにふってくる労働をこなしていた。
ものすごくショックな光景だった。
別に男性に家事をやらせることではなく、彼を召使のように扱っているところが。
そして、それに対して一言も反論せずに、大人しく従っている彼の態度に。
もちろん、奥さんは、かけらも彼に対して敬意をもっていない。
彼は、息子さんの手前、あえて衝突をしないようにしていたという。
「でも、それで本当に息子さんにいい影響を与えていたと思う?奥さんが、あなたを奴隷のように扱っているのを見せるのが?あんなに力関係がはっきりしているのを見て、息子さんがあなたに敬意をもたなくなるのは当然じゃない?お父さんが命令に素直に従っているのを見れば、ああお父さんを尊重する必要もないんだな、って判断してしまうでしょう?いつでも、お母さんの方が正しいって思うよ。」
そして、そんな奥さんの態度を、息子さんに見せてきたのがいけなかったのだと思う。
人を人と思ってない態度。
あんなありえない光景を、息子さんは日常的に当たり前のように目の当たりにしている。
人を尊重しないこと無視することが、取るにたらないこと、たいしたことではないこと、と認識してしまったのではなかろうか。
娘も、当然、思い通りにならない子供である。
けれども、無視はしたことがない。
「イヤ」という意思表明を力いっぱいしてきた。
そして、わたしも自分の意志を素直に表明してきた。そんな激しいやり取りをしながら、関係を構築してきたのである。
相手が無視したり、自分を低くみたら、それに対して意義を立てたり、怒ったりすることは、人間として当たり前の権利である。
どんなに衝突することがあっても、やっぱり自分を大切にすることが大事なんだと思う。互いに当然の権利を行使しあう、そういう関係性を見せることが必要なんだと思う。そうでなければ、正しい関係がどうあるべきなのか、知らないままであるだろう。
それにしても。
いくら、自分に養育の能力に劣っていると認識し、100%親権を放棄したところで、元奥さんが息子さんの本当のお母さんであることには変わりがないし、変えられない。
養育の責任を負う必要がない立場になったにせよ、息子さんに大なり小なり影響を与えているんだってこと、少しでも理解して欲しいが。
というか、もう息子さんがどう発達していくかどうかも、もはや関心がないのが問題なのだが。