味わいのある人生(1) | いまのしゅんかん

味わいのある人生(1)

彼が、試験に合格した。

クラスで一番の成績を収めたそうである。

 

その試験は、半年前、パスできなかった課目である。

前回は、3週間前にあわてて試験勉強を始め、おまけになかなか理解できない様子で危なげであり、案の定落ちてしまったが、今回は毎晩遅くまで集中して勉強しており、理解も深めていた様子がうかがえ、わたしも合格できると予感していたが、思いのほか高得点をマークできたようで、何よりである。

 

彼は、不器用なタイプで、表現力に乏しい感があるが、思考力は抜群にすぐれており、難しい問題に対しても果敢に取り組んでいけるタイプである。

さまざまなトピックに対しても、彼は実にユニークな意見を出してくれるので、大変面白い。

ところが、前回の試験のときは、別居直後で、実質同居生活が続いている状況で、元奥さんの勝手なふるまいに翻弄されるばかりで、集中して勉強することがなかなかできなかったと思う。

しょっちゅう問題が生じて彼は疲弊するばかり。毎日疲れ果てて、9時には寝ていたようだ。

 

殊更堪えたのは、奥さんがある事件に巻き込まれた結果、夜の仕事にいけなくなってしまい、わたしと思うようにコンタクトがとれなくなったことと、奥さんが弁護士に接触して、すでに発行されている合意書を変えて親権の一部を獲得することもできるのだと示唆されたことであった。

おまけに、すでにセパレートしながら、一緒に住んでいるがために、毎日理不尽なことで文句を言われたり、無心されたり。名実とともに別居するまで、彼の貯金は0であり、それどころか給料日前にすでに貯金がなくてお父さんから前借することもあったという。

 

わたしとつきあうようになって、幸せになれたといいながら、頻繁に問題を抱えて時には眠れないという彼をみて、わたしも同じように心を痛めた。

 

彼は、本当に仕事が好きで、勉強が好きな人である。

にもかかわらず、元奥さんのことで常に精神的に不安定な状態で、とても好きなことに専念できるような状況ではなかったのだと思う。

 

それが、今、多少の問題は抱えながらも、ようやく生活が安定してきて、集中して勉強できるようになったのだと思う。

小うるさいガールフレンドがいるけど。

 

実は、今日、わたしも夜な夜な書いていた次の論文が、ほとんどたたき台みたいなようなものだけれど、指導教官の賞賛を受けたのだった。

「ストーリーもこれで大体いいし、何よりも英語力が格段に進歩したね。前回よりもずっとよくなっているよ。」

まぁ、彼は甘めの評価を下すほうなので、きっと厳しい指導教官には真っ赤に修正されることは間違いないが、一応進歩したことを認めてくれたのがうれしかった。

そのほか、いろいろディスカッションしたのだが、わたしの知らなかったことも気づかされて、まだまだ勉強しなければ、と思った次第である。

 

彼は、昨日の夜はほとんど眠れなかったという。なまじ1回落としているだけに。

だからこそ、試験を高得点でパスできたときには、ものすごい満足感が得られたそうである。

 

わたしも、論文の構成には悩んだ。

正直なところ、判明していないことも多くて考察が難しく、論文の中で、一体何を強調するべきか、どうやったら印象深い内容になるのか、PowerPointに移植したデータを何回も眺めつつ考えに考えた。

おかしいけれど、病気の間も論文のことばかり頭にあり、なかなか決まらないことにどんどん悲観的になっていくばかりだったのだが、インフルエンザから回復してからふとアイデアがわき、急激にストーリー構成が出来上がっていったのであった。

 

今の状態に満足しているわけではないが、苦しさを超えた実感があるせいか、ある種の爽快感がある。