嫉妬
彼の弟さんは、ものすごいハンサムですらっとした長身(196cm)。おまけに性格も社交的で親切。英語も堪能だ。
ちなみに、彼のお父さんも60歳近いというのにものすごくかっこいい。身長は2メートル。有能でこの国一番の大学を主席で卒業。35歳で部長、40歳すぎには取締役。45歳で独立。常に10以上の大きなクライアントをもつ優良事務所を維持しているエリートだ。おまけに子供好きで性格も温厚。
こんな完璧な2人に対して、彼は素直に尊敬している。
対してわたしは、弟にずっと嫉妬していた。
顔はわたしに似て不細工だから妬みようもないが、利発で感受性も豊か、黙っていても人が寄ってくる人気もので、頭がよくなく勉強でいつも苦労させられ、なおかつ性格が悪くて人間関係に常に悩まされていたわたしにとっては、もっとも身近な羨望の対象だった。
今では素直に弟に対して尊敬しているけれど、結婚するまでずっと嫉妬していたと思う。
今でも、わたしは嫉妬心をもっている。
娘は、彼の奥さんに懐いている。
それはそれでいいと思うし、なぜ娘が彼女のことを好ましく思っているのかも納得している。
彼女は、彼も認めるように、とにかく明るくフレンドリーな印象を与える人だ。
話し振りも賢そうで、社会性にすぐれている。
別に彼女のことがうらやましいと思っているわけではない。
刹那的な関係を結ぶだけならよいが、長く深くつきあうには好ましくない性質だからだ。
だけど、彼女をみると、わたし自身抱えているコンプレックスが刺激される。
賢くなくて、そのことを卑下する、じめじめして、ねちねちしている自分。
彼に聞いてみた。
「わたしの夫に対して嫉妬したりする?」
彼はこう言ったのだ。
「どうして嫉妬なんかするの?君のきもちがもはや向いてないことも知っているし、彼の仕事にだってうらやましいなんて思わないよ。僕は自分の仕事が好きだ。彼は車をもっている。でも僕は立派な自転車をもっていてそれに不満などない。」
わたしは、何度も何度も否定されつづけてきた。
両親に。友人らに。
「K(弟)はたくさん友達もいるし、いい大学に行ったのに。」
「そんなにくよくよして、大人じゃないよね。」
彼は、弟よりも背が低いし、英語能力も劣るし、ハンサムでもない。友達も少ない。
でも、ご両親は、
「B(彼)は、ハンデがあるけれど、よく努力してきたし、本当に賢いよ。」
と彼のことを認めている。
いつもいつも否定されていて。
自分ほどダメな人間はいない、って思っていた。
今は少し自分のことを受容できるようになってきたけど、それでもときどき自分を否定する自分が出現する。
かっこよくない、舌足らずな、社会性に乏しい彼。
でも、好き。
そして彼も、ダメな、子供っぽいわたしを、受容してくれている。