新年第二報としましては、
これまで、讀賣新聞掲載の連載小説の挿絵を描かれた方の一覧を掲載したことがありますが、
ここらで、当時(…今更ながらですが、このブログでは関東大震災のあった大正12年から第二次世界大戦終戦の昭和20年までを一応“当時”としております)、
東京で刊行されていた他の新聞に連載されていた小説の挿絵を手掛けていた方を改めて一覧にしてみたあたりを、
これまで出すタイミングを逸していたこともあるので、この期におよんで“付録”的にやってみようかなぁ…と。
と、いうことで、今回は「都新聞」紙上で挿絵を手掛けていた方々の一覧を。
安宅安五郎
S5.2.26~S5.4.1 北村壽夫『街頭の風』(35回)朝刊
S5.9.6~S5.10.14 坪田譲治『女は救はれない』(38回)朝刊
足立源一郎
S5.10.15~S5.12.31 木下仙『山・山・人間』(78回)朝刊
井川洗厓
T12.8.19~T13.7.9 半井桃水『最上騒動』(296回)朝刊
T13.6.9~T13.12.7 北尾亀男『輝く都會』(182回)朝刊
T13.12.8~T14.5.3 益田甫『奈落』(147回)朝刊
T14.10.21~T15.5.11 小島政二郎『緑の騎士』(202回)朝刊
T15.12.4~S2.6.17 吉井勇『女の烙印』(194回)朝刊
S2.6.18~S2.12.31 高倉輝『高瀬川』(197回)朝刊
S3.1.1~S3.12.30 長谷川伸『日染月染』(360回)朝刊
S3.8.6~S4.5.9 土師清二『天明往來』(270回)朝刊
S4.8.1~S5.7.19 大島多慶夫『水野十郎左衛門』(350回)朝刊
S5.7.20~S6.1.1 9直木三十五『踊子行状記』(182回)朝刊
S5.10.9~S6.1.31 佐藤丑之助『をどり』(56回)朝刊
S6.1.20~S6.8.15 伊原青々園『文政化粧傳』(207回)朝刊
S6.2.1~S6.3.2 春海宏『都會の子たち』(50回) 朝刊
S6.3.23~S6.10.30 畑耕一『虹よいつまで』(220回)朝刊
S6.8.16~S7.9.28 本田美禅『松蔭時雨』(405回)朝刊
S6.10.31~S7.1.11 芳野芳雄『踊子のゐる断層』(72回)朝刊
S7.1.12~S7.3.27 三上秀吉『青空の感情』(76回)朝刊
S7.3.28~S7.6.2 太田洋子『悲劇妖婦』(66回)朝刊
S7.6.3~S7.10.1 幸尾幸夫『くるひ花』(120回)朝刊
S7.10.2~S7.12.15 野澤純『日照雨』(175回)朝刊
S8.6.2~S8.10.7 春海宏『愛の王座』(127回)朝刊
S8.7.16~S9.3.10 長谷川伸『天明旗本傘』(236回)朝刊
S8.10.8~S9.2.10 川上三太郎『東京一本道』(125回)朝刊
S9.2.11~S9.6.14 亀屋原徳『お光と軍曹』(123回)朝刊
S11.7.6~S12.2.15 湊邦三『江戸千両首』(223回)朝刊
猪熊弦一郎
S8.10.21~S9.2.26 細田源吉『晴色』(128回)朝刊
岩田専太郎
S15.2.12~S15.7.7 高田保『濡れた舗道』(146回)朝刊
内田巌
S10.5.10~S10.12.6 武田麟太郎『下界の眺め』(210回)朝刊
S16.6.28~S16.9.15 徳田秋聲『縮図』(80回で中断)朝刊
海老原喜之助
S15.11.4~S16.7.7 林房雄『西郷隆盛 早春の巻』(202回)夕刊
小穴隆一
S13.1.1~S13.6.16 坪田譲治『子供の四季』(165回)朝刊
S16.9.16~S17.2.3 坪田譲治『虎彦龍彦』(140回※)朝刊
※途中、中川一政の代筆有り
太田三郎
S16.9.2~S16.9.30 長谷川伸『臥牛』(29回)朝刊
大月源二
S6.8.23~S6.10.31 小林多喜二『新女性気質』(69回)朝刊
小野佐世男
S9.6.15~S9.11.2 辰野九紫『養子は辛い』(140回)朝刊
恩地孝四郎
S6.6.11~S6.8.22 室生犀星『青い猿』(73回)朝刊
木村荘八
S6.1.1~S6.3.14 野溝七生子『女獣心理』(72回)朝刊
S7.11.17~S8.3.17 船橋聖一『白い蛇赤い蛇』(120回)朝刊
S11.10.2~S12.6.20 長谷川伸『荒木又右衛門』(222回)夕刊
S14.3.25~S15.11.3 長谷川伸『石井源蔵兄弟』(190回)夕刊
S16.7.9~S16.12.24 林房雄『西郷隆盛 月魄の巻』(264回※)夕刊
※雪岱死去で後半交代
倉田白羊
S5.7.2~S5.9.5 高倉輝『百姓の歌』(66回)朝刊
S7.6.17~S7.11.16 高倉輝『狼』(102回)朝刊
小磯良平
S12.5.30~S12.12.31 丹羽文雄『薔薇合戦』(216回)朝刊
小早川清
S12.2.16~S12.7.18 小嶋政二郎『雌蕊雄蕊』(140回)朝刊
小林徳三郎
S7.6.17~S7.8.5 木下仙『浅草の娘達』(50回)朝刊
小林秀恒
S13.5.7~S13.6.25 中野實『花の座』(50回 中断)朝刊
小村雪岱
S9.3.11~S9.10.4 下母澤寛『突っかけ侍』(206回)朝刊
S9.10.5~S10.5.12 下母澤寛『松村金太郎』(218回)朝刊
S10.12.12~S11.7.5 下母澤寛『はればれ坊主』(250回)朝刊
S13.9.23~S14.3.24 鈴木彦次郎『両国梶之助』(155回)夕刊
S16.7.9~S16.12.24 林房雄『西郷隆盛 月魄の巻(264回※)夕刊
※雪岱死去で木村荘八に交代
小山敬三
S10.12.7~S11.5.16 岡田三郎『青春航路』(160回)朝刊
清水多嘉示
S5.4.2~S5.5.13 関口次郎『黒い花束』(41回)朝刊
志村立美
S14.6.13~S15.2.11 丹羽文雄『家庭の秘密』(242回)朝刊
S15.7.8~S16.2.10 藤澤桓夫『花は偽らず』(216回)朝刊
代田收一
T12.12.3~T12.12.30 伊原青々園『老探偵物語 鬼武藤』(24回)朝刊
T13.1.1~T13.4.9 南恵三『二人毒婦』(100回)朝刊
T13.4.10~T13.9.9 江見水蔭『紫蜻蛉』(153回)朝刊
S2.1.1~S2.5.1 正木不如丘『用心の戀』(120回)朝刊
S2.9.13~S2.10.13 河村菊江『寂しき愛』(29回)朝刊
S3.8.13~S3.12.30 河合哲雄『愛厭』(270回)朝刊
S4.1.1~S4.2.15 龍胆寺雄『珠壷』(45回)朝刊
S4.2.16~S4.4.5 尾崎士郎『放浪街』(49回)朝刊
S4.4.6~S4.5.27 下村千秋『しかも彼等は行く』(52回)朝刊
S4.5.28~S4.7.13 坪田譲治『兒の上を思ふ』(47回)朝刊
S4.7.14~S4.9.3 戸川貞雄『失楽園』(52回)朝刊
S4.9.4~S4.11.13 明石鉄也『花火と体温表』(70回)朝刊
S4.11.14~S4.12.31 畑耕一『場所がいるのだ』(48回)朝刊
S5.1.1~S5.2.25 小島勗助『微風甦る日に』(55回)朝刊
杉山寧
S11.3.30~S11.4.17 徳田秋聲『巷塵』(27回 中断)朝刊
竹久夢二
T13.9.10~T13.10.28 竹久夢二『秘薬紫雪』(49回)朝刊
T13.10.29~T13.12.24 竹久夢二『風のやうに』(57回)朝刊
S2.5.2~S2.9.12 竹久夢二『出帆』(134回)朝刊
田口省吾
S12.11.6~S13.5.6 芹澤光治良『愛情の蔭』(160回)朝刊
筒井直衛
S9.11.3~S10.4.1 戸川貞雄『女人祭』(160回)3朝刊
富澤有為男
S6.3.15~S6.4.16 水上瀧太郎『銀座復興』(32回)朝刊
中川一政
S8.3.18~S8.8.30 尾崎士郎『人生劇場(青春篇)』(165回)朝刊
S9.11.21~S10.5.9 尾崎士郎『續人生劇場(愛慾篇)』(168回)朝刊
S11.5.17~S11.12.3 尾崎士郎『人生劇場(殘侠篇)』(228回)1朝刊
S13.4.22~S13.9.22 尾崎士郎『石田三成』(132回)夕刊
S14.5.23~S14.12.18 尾崎士郎『人生劇場(風雲篇)』(209回)朝刊
中川紀元
S17.2.4~S17.6.8 中山義秀『密林』(121回)朝刊
S17.8.23~S17.9.30 藤森成吉『太陽の子』(39回※)朝刊
※以下東京新聞に継続
中村研一
S5.5.14~S5.7.1 岡田三郎『白色奴隷』(48回)朝刊
S12.1.1~S12.5.29 藤森成吉『眞實』(147回)朝刊
野口彌太郎
S9.7.20~S9.11.20 楢崎勤『わが歌に翼ありせば』(123回)朝刊
S13.11.30~S14.5.22 間宮茂輔『現代の英雄』(172回)朝刊
硲伊之助
S10.9.21~S11.3.19 芹澤光治良『春箋』(175回)朝刊
S11.10.8~S12.4.11 芹澤光治良『秋箋』(183回)朝刊
S17.2.4~S17.6.8 榊山潤『春扇』(183回※)朝刊
※途中大月源二の代筆有り
林倭衛
S7.3.31~S7.6.16 芹澤光治良『時を歩む子等』(77回)朝刊
樋口富麻呂
S14.1.23~S14.6.12 片岡鐡兵『風のやうに』(140回)朝刊
平山蘆江
S2.10.12~S2.12.31 平山蘆江『泣笑ひ』(81回)朝刊
S3.12.31~S4.2.4 平山蘆江『湊川原』(34回)朝刊
松野一夫
S16.2.11~S16.9.1 林芙美子『川歌』(202回)朝刊
水谷清
S6.11.1~S6.12.31 富澤有為男『發端地』(61回)朝刊
宮本三郎
S11.4.18~S11.10.7 下村千秋『生々流轉』(173回)朝刊
S14.12.19~S15.6.18 大佛次郎『氷の階段』(181回)朝刊
矢島堅土
S6.4.17~S6.6.10 井伏鱒二『仕事部屋』(55回)朝刊
S7.1.1~S7.3.30 水谷道彦『海の選手達』(89回)朝刊
S9.2.27~S9.7.19 下村千秋『愛と飢と』(142回)朝刊
S13.6.28~S14.1.22 広津和郎『地階の處女』(207回)朝刊
矢野橋村
S12.6.22~S13.4.21 戸川貞雄『勤王浪人笛』(260回)夕刊
S17.1.1~S17.10.1 長谷川伸『国姓爺』(245回)夕刊
山川秀峰
S10.5.13~S10.12.11 土師清二『本所鳥刺組』(212回)朝刊
山下新太郎
S8.8.31~S8.10.20 久保田萬太郎『町中』(50回)朝刊
吉岡堅二
S12.7.19~S12.11.5 岸田國士『幸福の森』(110回)朝刊
脇田和
S13.6.17~S13.11.29 阿部知二『街』(160回)朝刊
S15.12.20~S16.6.27 阿部知二『道』(188回)朝刊
S17.6.9~S17.8.22 海野十三『赤道南下』(95回)朝刊
…と、いったところですが、
これまでも折に触れておりますが、都新聞は昭和17年10月1日より國民新聞と併合され「東京新聞」となっておりますので、
本来なら、併合以降の作品も該当されてもおかしくはないのですが、
上記一覧には、今のところまだ含まれておりません。単に確認しそこなっていただけなんですけどね…。
ま、國民新聞の一覧でも出せる時に一緒にいれるようにしましょうかね。
と、いっても、とりわけ都新聞の場合、やはり井川洗厓がなんといっても長きに渡って多くの挿絵を手掛けていたということは周知の事実なんですけど、
ところどころ、井川洗厓名義の挿絵でありながら、挿絵の横に描かれているサインが洗厓のものとは違うサインがあったりするのが、
なんとも微妙なんですよねェ…。もちろん弟子に描かせていたということはあるんでしょうけど、
井川洗厓の金厓塾については、初山滋が櫻厓の名前であったり、峰厓という内弟子は服部萬壽夫という人であったというあたりまではわかっているんですけど、
なかなか他の資料に辿り着けません。あるところでは、濱田如洗までが洗厓の弟子扱いになっていたりする記述もあったりと、あぁややこしいこと。
…と、いったあたりをもう少し当たってみたいなぁ…と言ったところが今後の課題ではあるのです。
それに、都下においてはいろいろと言われながらも、こと春陽会系の画家の挿絵参加も目につきますし、
岩田専太郎にはあまり依頼できていなかったり、そういえば、竹中英太郎も都新聞には縁がなかったなぁ…。
大月源二あたりのプロレタリア時代なども他紙とはちょっと違った感じも面白かったりします。
新聞社それぞれの特色なども時代背景をにらみつつ、見比べてみたりしても面白かったりします。
そして、何よりも、「都新聞史」を残してくれた土方正巳氏には感謝しかありません。