おヒョイさんに教わったこと | イラストで綴る日常

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こんにちは、イトウエルマです。

昔、会社員時代のことですが、
社長に呼び出しを食らう
お決まりの場所がありました。
(内容はお願いごとか、おこごと 涙)

それが、
ワインバーのオヒョイズ。
藤村俊二さんが経営するお店でした。

初めてオヒョイズに行ったときのことは忘れません。

あるとき、
上司からオヒョイズに行くよう指示がありました。
場所は知っていました。
オヒョイズは社長行きつけの店で、会社の近所でしたから。

それで、ひとりカウンターで
社長を待っていました。

華やかな服装のお客さんたちの中で、
外回りのお仕事ではない自分は普段着そのもので、
何とも場違いな感じでした。

おひょいさんは地方に泊まりで出かけるようなことがない限り、
必ずお店に顔を出して、お客さんひとりひとりに声をかけられます。

そしておひょいさんが自分のところにいらした。

このとき当方は焦って、慌てふためいて、
何を話したのか覚えていません。
そういう哀れな仔羊を前に、
藤村さんはこの瞬間を中身のある時間にして下さいました。

藤村さん:ボクはね、運がよかったんだよ。世の中はね、実力だけじゃないんだ。


イトウ:え、運なんですか!?

実は当方、運という考え方に懐疑的な人間でありました。
そりゃ、たまたま流れ弾に当たった、みたいなのは
運が悪いという言葉がぴったりだと思います。
他に、自分にどうすることも出来ない要素なら、
タイミングもあると思います。

だけど、そのタイミングさえも
自分の側に持って来れるのが力のある人であり、
つまりそれが実力ではないのだろうかと
思っていました。

ですが、藤村さんは言うのです。

藤村さん:ボクよりも実力のある人、努力をしてきた人を今までいっぱい見て来た。だけど、その人たちが評価されるか、成功するかといったら……。それはね、運がなかったとしか言えない。世の中はね、運なんだよ。

その都度新しいアイデアでご自身を切り開いて
成功を収めていらっしゃる方の出した結論が

「運があるか、ないか」

というお話は、ショックでした。

その後、オヒョイズに行く機会も増えました。
そこでは社長との胃の痛くなるような
話し合いが繰り広げられるのですが、
ひょいっと顔を出して下さって
藤村さんがお話下さる時間が
清涼剤や栄養剤みたいな癒しでありました。

今でもおひょいさんの「運」の話を噛みしめて、
考えています。

目の前のおひょいさんは
いつでも余裕のある優しくてお洒落な方でしたが、
実はどんな瞬間も、
清水の舞台から飛び降りるような挑戦を続けていらした。
それゆえの、運、だったんだろうなーと。
そして自分は運を賭けるほどに何かに挑戦していない、
真剣さが足りないのではないのだろうかと。

だから運の存在を実感してこれなかったのでしょう。

訃報のお知らせをニュースで知って、
素敵な方がお隠れになったことを
寂しく思っております。

TVでご長男の亜実さんがお話されてました。
お変わりなくて、嬉しかったです。
そして、お父様に寄り添われて
過ごされたことを知り
ほっとした気持ちでおります。

藤村俊二さんのご冥福をお祈り申し上げます

そして、藤村さんのお話下さったことを
これからも思い出して、考えていきます。