六条御息所ネタを続けよう。

源氏物語の現代語訳を完結させた作家の瀬戸内寂聴氏は、ある対談で語っていた。
「私は、源氏にゆかりがある女性の中で、実はこの六条御息所が1番好きなんです。あんな嫉妬深い女のどこがいいのと聞かれそうですが、人間的、あまりに人間的じゃありませんか」。

確かに。
嫉妬というと女性の専売特許みたいな感もあるが、どうしてどうして。
男性も負けず劣らず、いや、女性以上に自分や自分の「内側」にいる者以外の存在への妬み嫉みは強い。それどころか、往々にして陰謀や策略に絡めた「チカラ」と結びつき、「外側」とされる者をぐうの音も出ないまでに打ちのめす。ここいらの陰湿さと残虐さは、並の女性には真似出来るものではない(まあ例外はあるけれどね)。

人間、性別に関係なく、そして程度の差こそあれ、基本的には自分がかわいくて仕方ないイキモノ。
このことを、作者の紫式部は「作家の勘」で知っていたのだろう、源氏と関わりを持つ女性の多くを、さらには当の源氏をも、最終的に出家させている。

もっとも、はるか昔のやんごとなき方々も、ハイテク時代に生きる下々の我々と同じように煩悩に悩まされていたことを想うと、ホンマ、人間っていつの世にも考えることは変わらないのだなあ。

絵は、上村松園えがいた六条御息所(Public Domain)。