数は多くないけれど、デモンストレーションを依頼するメーカーの中には、「前日挨拶電話」なるタスクを義務付けているところがある。

これは、当のデモンストレーションを実施する日の前日、デモンストレター自らが
「明日、〇〇社発売の△△という商品を、そちらのお店様にて宣伝販売させていただきますので、よろしくお願いいたします」
と、実施店舗に電話をするもので、電話ついでに販売商品の納入、および案件の性質によっては派遣会社やエージェンシーから送り込まれることになっている資材の到着を確認する意味合いもあり、したがって重要なタスクなのだが、実はこれがどうにも苦手なデモンストレーターがいる。
私もその1人である。

皆さんは不思議に思われるかも知れない。
「デモンストレーターの人って、ぶっちゃけ、商品についてお客さんに話すことがメインの仕事よね。だったら、オハナシは得意なんじゃなくて? 少なくとも好きな部類には入るのではないかな」。

まあ、高確率で当たってはいますねえ。
ただ、微妙に違うんだな。
人間相手に直接オハナシをするのと、電話という「キカイ」を通して間接にオハナシするのとでは。
なぜって、オハナシする相手が目の前にいれば、その人の全体の雰囲気も含めて顔の表情や身体の何気ない仕草から「人となり」や「背景」が割と容易にうかがえるのに、電話はそんなわけにはいかないからだ。
受話器の向こう側から響いてくる声のトーンや口ぶりやオハナシのスピード、すなわち「見えないものもの」から推察するしかない。
これって、けっこうしんどい作業よねえ、、、。

こんな私でも、時給の高さに惹かれて電話セールスのアルバイトをしたことが、実は一度だけある。
一種の健康食品の案内で、アルバイト業務に入る前に受けた研修で、トレーナーにこう言われた。
「単に商品をPRしてお薦めするだけでなく、電話応対しつつ、言葉の端々から電話を受けたお客様の性格や生活状況、大げさに言えば人生そのものも想像すること。なかなか難しいことだけれど、これが出来るようになったら(セールスの)結果は自然とついてくる」。

確かに。
宣伝販売の仕事に就いて、この言葉の重みをしかと知った。

けっきょく、販売する基本は、根っこで同じ。
対面も、電話も、ね。
接客態度の前に、イマジネーションと共感が求められるのだ。そして、このことこそが、電話苦手症を克服するヒントにもつながるのだろう。

写真は、夕暮れのくずはモール(大阪府)。