【バリとタイ、癒しのかたち】アーユルヴェーダから読み解く、バリニーズマッサージとタイマッサージ | 日本文化、世界の歴史・健康・ミライにチャレンジ

【バリとタイ、癒しのかたち】アーユルヴェーダから読み解く、バリニーズマッサージとタイマッサージ



皆様こんにちは、いかがお過ごしでしょうか。私は、アーユルヴェーダの流れを汲むバリニーズマッサージとタイマッサージを受けてまいりました。

どちらもアジアを代表する伝統的なボディワークですが、その施術の感触や、身体への入り方、心の静まり方には大きな違いがありました。

今回は、インド発祥の生命の科学「アーユルヴェーダ」の視点から、この2つのマッサージを読み解いてみたいと思います。


■ バリニーズマッサージとは?

バリニーズマッサージは、オイルを使った全身トリートメントで、筋肉やリンパの流れを滑らかなストロークでほぐしていく施術です。

ゆったりとしたリズム、温かな手のひら、香り高いアロマオイル は、まるで母の手に包まれるような安心感に満ちており、心身ともに深いリラクゼーションを得ることができます。

バリでは、ヒンドゥー教の宇宙観とアーユルヴェーダの知恵が日常の中に息づいています。

施術中、肌に触れるオイルは「火」と「水」のエネルギーを呼び覚まし、冷えや乾燥を溶かしていくような感覚がありました。


■ タイマッサージとは?

一方、タイマッサージは、オイルを使わず、手や肘、時には足を使って全身を押圧し、ストレッチをかけていく技法です。

まるでヨガを“受ける”ような感覚で、施術者と呼吸を合わせながら身体の可動域をじっくりと広げていきます。

起源は仏教僧が修行の一環として行っていた「慈悲の療法」とも言われ、施術者の手技には深い瞑想性が宿ります。

「触れることが祈りである」そんな静かな覚悟が伝わってくる施術でした。


■ アーユルヴェーダから見た二つの違い

アーユルヴェーダでは、自然界と人体を構成する五大元素(空・風・火・水・地)と、それに基づくドーシャ(体質)理論を用いて健康をとらえます。

この視点から見ると、

  • バリニーズマッサージは「水」と「火」の要素に働きかけ、冷えや乾燥、過活動のヴァータ体質の方に最適です。心を落ち着け、温かさと潤いを与えてくれます。

  • タイマッサージは「風」と「空」のエネルギーを動かし、重さや停滞感があるカパ体質に向いています。心身を活性化し、エネルギーの通り道を開いてくれます。

つまり、それぞれのマッサージには、その人の体質や今の状態に応じた“適材適所”の効果があるのです。


■ バリとタイのスピリチュアルな違い

この二つの国には、施術の違いだけでなく精神文化そのものに深いコントラストがあります。

● バリのスピリチュアル性は「自然と神々との共生」

バリでは、ヒンドゥー教が根底に流れています。

朝のチャナン(花のお供え)や、祈りの香り、寺院の静けさの中に、目に見えない存在との対話が日常に溶け込んでいます。

癒しとは「心身の浄化」であり、神聖な流れに身を預けて再調和すること。

マッサージそのものも、魂のバランスを整えるセレモニーのように扱われます。

● タイのスピリチュアル性は「慈悲と瞑想の実践」

タイでは、上座部仏教の教えが生活の基盤となっており、内省と静寂を通じた“解脱への道”が重視されます。

マッサージは、ただの施術ではなく、施術者が「ダンマ(法)」を生きる行為であり、相手を慈しむ瞑想でもあります。

その静かで揺るぎない精神が、触れる手からじんわりと伝わってきます。


■ 「今の自分」に合った癒しを選ぶ

アーユルヴェーダが教えてくれるのは、どちらが優れているかではなく、「今のあなたに何が必要か」という視点です。

例えば、ストレスで神経が張りつめているときには、やさしく包むバリニーズのようなケアが合うかもしれません。

逆に、エネルギーが滞って重だるいときは、タイマッサージのダイナミックな刺激が心地よいと感じるでしょう。

癒しとは、過去でも未来でもなく、“今の感覚”にチューニングを合わせる行為なのだと思います。



アーユルヴェーダは「医学」でも「宗教」でもなく、私たちが自然と共に暮らしていくための生き方の知恵です。

その視点を持って体に触れてみると、マッサージひとつの体験が、まるで自分自身を知るための旅のように感じられます。

次にマッサージを受けるとき、どうぞ少しだけ「いまの自分の状態」に耳を傾けてみてください。

身体が欲している癒しのかたちが、そこにそっと浮かび上がってくるかもしれません。