静かなる叡智──ネイティブ・アメリカンと日本人の「心のかたち」とエコデザインの未来 | 日本文化、世界の歴史・健康・ミライにチャレンジ

静かなる叡智──ネイティブ・アメリカンと日本人の「心のかたち」とエコデザインの未来


この記事は、2025年春のプレミアム・インセンティブショーで開催されたエコデザインに関するセミナーに参加し、

その講演で語られた内容や、そこから得た気づきをきっかけに執筆したものです。



皆様こんにちはいかがお過ごしでしょうか。今日はエコデザインについて深掘りしようと思います。


大量生産・大量消費の時代が終わりを迎えつつある今、私たちは「より良く生きるとはどういうことか」「地球と共に生きるとはどういうことか」を、改めて見直す時期に来ています。

その問いに対するヒントは、最先端の技術の中ではなく、太古から自然と寄り添いながら暮らしてきた人々の知恵の中に隠れているのかもしれません。

今回はその一例として、アメリカ大陸の先住民族であるネイティブ・アメリカンと、日本列島に根ざす日本人の精神文化を取り上げてみました。

一見、まったく異なる歴史や風土を持つように思える両者ですが、自然との向き合い方や、命や死に対する感覚、人と人との距離感といった「心のかたち」には、多くの共通点が見られます。

そしてその中に、現代に求められている持続可能な生き方=エコデザインの核心が潜んでいるのです。




■ 共通点:自然との共生、目に見えないものへの敬意

ネイティブ・アメリカンにとって、大地や川、風や動物はすべて「スピリット(精霊)」を持った存在であり、人間もその一部に過ぎません。自然と自分を分けるという考え方はなく、調和の中に生きています。

一方、日本人の伝統的な精神文化にも「八百万の神(やおよろずのかみ)」という考え方があり、山・森・石・水といったあらゆる自然物に神が宿るとされてきました。

また、両者に共通しているのが、「沈黙」や「気配」といった目に見えないものを感じ取る力を重視する文化です。これは言葉以上に心のつながりや空間の静けさを尊ぶ価値観として表れています。




■ 違い:精神の表現方法と社会構造

ネイティブ・アメリカンの文化は、語り継ぎ(オーラル・トラディション)によって知恵を伝えてきました。歌や儀式、物語によって精神性を共有する文化です。

一方、日本では、書や建築、衣装や型(かた)といった“形”に精神性を込める傾向があり、静的で象徴的な表現を好む文化が形成されてきました。

また、ネイティブ・アメリカンの共同体は水平的で、対話による合意形成が重要とされてきましたが、日本社会は和と秩序を重んじる階層構造の中で成り立っています。この違いは、リーダーシップのあり方や、社会のまとまり方にも影響を与えています。




■ 死と再生へのまなざし

どちらの文化においても、死は終わりではなく、自然や祖先とのつながりの一部として受け止められています。

ネイティブ・アメリカンは、魂が自然界へと還り、再び大地をめぐると信じています。

日本では、死者は「仏」や「祖霊」となり、家の中で今も共に生きている存在として祀られています。

この「循環するいのち」の感覚は、どちらの文化にも共通する、時間の流れの捉え方にも通じているのです。




そして今、私たちが手にすべき「エコデザイン」

こうした文化の中に脈々と流れる「自然と共にある」という精神は、現代のエコデザイン(環境配慮型デザイン)の根底と深く重なります。

エコデザインとは、単に環境に優しいモノづくりをすることではなく、自然と調和し、資源を循環させ、未来を見据えた暮らしをデザインすることです。

素材選びから生産方法、廃棄や再利用のプロセスまで、すべてを“つながり”の中で考える視点が求められています。

これは、自然を単なる「資源」としてではなく、「対話すべき存在」と見なすネイティブ・アメリカンや日本人の感性と、まさに通じ合うものです。




静かなる知恵 × 未来志向の創造力

エコデザインとは、古くて新しい原点へのまなざしです。

私たちが失いつつある「自然との関係性」「感覚としての調和」「目に見えない価値」を、もう一度デザインに取り戻すこと。

それは単なる流行やマーケティングではなく、未来の命に責任を持つという、創造者としての在り方そのものです。

精神性と機能性、伝統と革新。

その両輪が重なったところに、本当に持続可能な未来が拓けていくのではないでしょうか。

いま、私たちが向かうべき未来とは、「新しい発明」ではなく、

自然と共にあるという“人間らしさ”への回帰なのかもしれません。




以上が、講演の内容をきっかけに広がった私自身の思考と気づきのまとめです。

これを読んでくださった方が、自然や暮らし、デザインとの向き合い方を少しでも見つめ直すきっかけになれば幸いです。