【コラム3】第5回 親の読書習慣と子供の学力は比例する?!

~「ルポ・誰が国語力を殺すのか」(石井光太著)より~

2022年に発刊された石井光太著の「ルポ・誰が国語力を殺すのか」

この1冊で現在直面している「国語問題」というものを知り、そしてその解決の糸口を探ることが出来ることができる1冊ではないかと思われます。

 

今回は複数回にわたりこちらの著書を踏まえ、小生が長年国語教育で経験してきた出来事や考察を踏まえながらお話していきたいと思います。

 

こちらの【コラム3】にてある程度の「国語力の回復」につながる提案をさせて頂きたいと思いますので、是非最後までお付き合い頂きたく存じ上げます。

 

 

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【コラム3】第5回  「言葉のカースト」とスマホ依存

言葉のカースト」の要因はやはりスマホ依存?!

前回のコラム(第4回)にて、「言葉を持っている子供」と「言葉を持っていない子供」の〝言葉のカースト〟が生じる要因に「スマホ依存」があるのではないかという同著著者の石井光太氏の指摘を取り上げた。

この指摘には賛否両論があり、また〝スマホ育児〟を行っていない拙宅に嫌みたらしく感じた方もいらっしゃるかも知れない。

 

しかし、この〝スマホ育児〟について、同著では言語学者のバトラー後藤裕子(ペンシルバニア大教授)の研究を取り上げ次のように指摘している。

 

    

こうした育児は「ビデオ不全」と呼ばれて、悪影響が指摘されているという。

 

元より乳幼児は認知発達の点で二次元から得た影響を三次元のそれに変換するのが不得意だ。

 

たとえば画面にリンゴが映っていても、現実のリンゴと関連付けられないのだ。

 

画面中の会話なども同様である。

 

したがって乳幼児が養育者との直接な対話、もしくは養育者と画面を見ながら一緒にコミュニケーションをとる機会が少なければ、その分だけ言語能力を始めとした様々な発達に遅れが生じる可能性がある

(同著37頁)


読み聞かせはやはり有意義なのか?!

親子のコミュニケーションには、絵本の読み聞かせが有意義であると同著において指摘している。それは、表情の読み取りや共同注意(一緒に視線を向けることなど)がなされることで、子供の脳の、思考や創造性をつかさどる新皮質や喜怒哀楽をつかさどる大脳辺縁系に良い影響を与えることは科学的にも明らかになっている、と同著は指摘している。(同著37-38頁)

 

これは近年流行の〝脳科学〟系の著書を読んでも同様の指摘が数多くなされている。

 

たかが〝読み聞かせ〟かも知れないが、国語力、言語能力の原点はこの〝読み聞かせ〟から全てが始まると言っても過言ではない。

 

コメンテーターとしてテレビ番組にもよく出演されている、東京大首席卒で法学博士・ニューヨーク州弁護士である山口真由氏は、脳科学者の中野信子氏との共著『「超」勉強法』にて、幼少時代のことを次のように振り返っている。

 

    

歩きながら本を読むほど、わたしは子どものころから本が好きでした。

 

きっかけは、幼い頃に母が熱心に絵本を読み聞かせてくれたことにあります。忙しかった母ですが、絵本の読み聞かせの時間だけは「時短」しようとはしませんでした。

しかも、それを毎日の〝重要イベント〟として行っていたので、わたしは毎晩の読み聞かせの時間が心底楽しみで、やがて本がいっぱいほしいと思うようになりました。(同著63頁)

 

3 親の読書習慣は子供の学力と比例する?!

同著では『ベネッセ総合教育研究所「教育格差の発生・解消に関する調査研究報告書」』を引用し、家庭でのゲームの使用時間が規制されている家とそうではない家、あるいは絵本の読み聞かせ、芸術鑑賞、社会問題についての会話の有無が、子供の国語力を大きくさせていることを立証している。(同著37頁)
 
全15項目の中で、学力優秀なA層と対軸のD層の差(A-D)が原著なものとして以下のものが挙げられる。
 
    

・子供が小さい頃、絵本の読み聞かせをした(差=17.9%)

 

・博物館や美術館に連れて行く(差=15.9%)

 

・毎日子供に朝食を食べさせている(差=10.4%)

 

・ニュースや新聞記事について子供と話す(差=10.8%)

 

・家には、本(漫画や雑誌を除く)がたくさんある(差=24.6%)

 

・子供が英語や外国の文化にふれるよう意識している(差=17.5%)

 

このなかで顕著な差を示しているのが「家には、本(漫画や雑誌を除く)がたくさんある」差である。

学力優秀なA層では72.6%であるのに対し、対極のD層では48.0%、とその差は24.6%である。

 

すなわち〝読み聞かせ〟られるか否かの大前提として、親が読書をしているか否かの差であり、

これに関し同著では、家で親が本を読んでいれば子供に読書習慣がつき、それが学力の差まで現れその影響は国語だけでなく数学、社会、理科といった他教科にも及ぶ(同著40頁)

 

 

 

〝親〟の振り見て〝子〟が振り学ぶ

このように、子供の学力は、親が与える影響によって左右されることが見て取れるが、同著では教育学者の松岡亮二氏(龍谷大学准教授)の著書『教育格差』を引用し、親の学歴によって、子供たちの習い事利用率や参加率に明確な違いが出ていることを指摘した上で、次のように結論付けている。

 

 

    

近年、教育格差という言葉がいろんなところでつかわれるようになってきた。一般的に貧しい家庭が教育費をかけられないために子供の学力が低下するように捉えられてきた。

 

だが、現場の教員たちによれば、経済より、家庭環境による影響の方がはるかに大きいという。

 

親が子供にどう接しているのか、親がどんな振る舞いを見せているのか、そうしたことが子供の国語力育成の鍵を握っているのだ。

(同著44-45頁)

 

先述の山口真由氏は、共著『「超」勉強法』の中で、両親の〝読み聞かせ〟から始まった〝読書好き〟に続き、次のように振り返っている。

 

    

小学1年生になって学校の図書館に通うようになると、「1日1冊読んで、図書館の本をすべて読破しよう」と決意します。

 

順調に読み進めていったものの、小学6年生のころになると父と母の本棚に興味が完全に移ってしまい、図書館の本をすべて読むという目標は果たせませんでした。

両親も本をこよなく愛する人でした。そのため我が家では家族全員が無言でそれぞれ自分の本を読む時間があったくらいです。

(同著64-65頁)

 

 

「絵本の読み聞かせをする」「博物館や美術館に連れて行く」

「ニュースや新聞記事について子供と話す」「(親も)読書習慣がある」

「英語や外国の文化にふれるよう意識している」

ような家庭で育った大学受験生から、

 

笑い泣き ヨーロッパの下にアメリカ大陸がある

笑い泣き 英語の「英」はどこの国か分からない

笑い泣き 明治時代の前は戦国時代である

笑い泣き 日本の「大統領」はだれか知らない

笑い泣き 日本は社会主義国家である

などの〝子どもの珍回答〟は生まるはずはないと小生にも思えてならない。

 

しかし、それでも学力不相応な「大学」校をめざし、学力相応な「大学」校に進学できる、これが現在の日本の姿なのである。

 

 

5 次回は…… 

次回のコラムでは、同じく「ルポ誰が国語力を殺すのか」の中から気になる指摘を取り上げ、考察していきたいと思います。

引き続きお付き合い頂きますと幸いです。

 

最後までありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。  

 

 

 

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