『独眼竜政宗』第21回「修羅の母」感想 | のぼこの庵

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大河ドラマの史上最高傑作『独眼竜政宗』(1987⇒2014再放送)と近年の最高峰『平清盛』(2012)の感想です。
ついでに『江~姫たちの戦国~』(2011)、『八重の桜』(2013)、『軍師官兵衛』(2014)、『花燃ゆ』(2015)の感想も。
あとは爺放談?

名参謀小十郎の面目躍如。
小田原参陣の是非を巡って分裂しかけた伊達家中を救ったのは、この男でした。

布施定時「関白殿の軍勢は昨二十七日、沼津にご到着。既に山中城、韮山城を攻めております」
村田宗殖「ついに始まったか」
定時「奥羽ではさらに南部、武藤、結城殿が次々に臣従。津軽為信殿は海路を経て参陣仕った由にござります」
宗殖「残るは何処じゃ」
定時「伊達の他には、大崎、葛西、田村、最上」
桑折点了斉「たったそれだけか」
定時「御意」
国分盛重「無念じゃー!時すでに遅し」
点了斉「遅しと言えども行かぬよりはましでござろう」
伊達成実「行くに及ばず!今さら繰り出して他国の後塵を拝し、辱めを受ける事はない」
原田左馬助「されど、お家の大事を思えば、叶わぬと言えども参陣致して申し開きに及ぶが肝要かと存じまする」
小梁川泥蟠斎「某も同様に存ずる」
鬼庭綱元「申し開きは到底不都合かと存じまする。会津、仙道の仕置き配分に手間取り、公の軍役に背きたるは我に理あらず。きついお咎めを受けるに相違ござりません」
泥蟠斎「敵に回して、合戦に及ぶと申すのか!」
成実「いかにも。たとえ関白の赦しを得て殿のお命は全う致すといえども、領地を召し上げられるは必定じゃ。伊達家代々の地を棄てるは甚だ口惜しき限り。それよりは上方の軍勢を待ち受けて矛先を争い、先祖墳墓の地にて潔く果てようではないか」
山家国頼「これはしたり。殿のお命を何とお心得でござる」
成実「されば徒に世にへつらい恥辱を後世に残さんよりは、一戦の誉れに名を留めるこそ武士の本望たるべし。殿にもお腹を召して頂くより他はない」
政宗「成実の申し分は尤もなり。かくなる上は参陣を見合わせ、武門の儀を守りて滅亡致さん」
泥蟠斎「殿」
政宗「無念ではあるが、奥羽を我が手に束ねるのが一歩遅かった」
宗殖「いや、有体に申して政宗殿には些か慢心があった」
成実「慢心とは無礼であろう!」
宗殖「黙れ成実!己れは君側にあって道を誤らせた張本人じゃ」
点了斎「ええぃ暫く暫く!」
泥蟠斎「小十郎はどうじゃ。何と心得る」
片倉小十郎「…」
政宗「申し状あれば腹蔵なく述べよ」
小十郎「恐れながら、秀吉殿は朝廷より関白に任ぜられました。されば天下は既に定まったも同然でござる」
成実「定まってはおらん!」
国分盛重「控えよ成実」
小十郎「今や関東より西の武将は徳川殿、毛利殿をはじめ、いずれの国も関白殿の命に背くものはござらん。一人小田原の北条殿のみがこれに従わず、関白殿の咎めを受けておりまする。関白殿の命に背くは則ち朝廷を侮るに等しく、逆臣の汚名を着せられても致し方ござりません」
政宗「…」
小十郎「殿もまた北条殿に倣い奥州に留まりて滅亡なされば、末代まで逆臣の名を残す事と相なりましょう」
成実「戯けた事を申すな。我らは秀吉の家臣ではない」
小十郎「朝廷を畏れざるは不忠の罪なり!関白の命に背くは不義の罪なり!先祖伝来のお家を滅ぼすのは不孝の罪なり!不忠・不義・不孝の罪を犯しては、天の助けもあるべからず!」
成実「天の助けは最早望むべくもない!」
綱元「参陣の時は既に逸したのだ」
小十郎「逸しておるとは限らん。もし関白殿が小田原参着の早い遅いをもって忠節を量るならば笑止千万。ご政道正しからず!たとえ伊達家滅亡に及ぶとも罪は関白殿にあり」
点了斉「さよう、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」
泥蟠斎「殿、ご裁断を」
成実「ご裁断は終わっておる。先ほど滅亡のお覚悟を示されたではないか」
小十郎「奥州にて滅亡致せば逆臣!小田原にて滅亡致せば宜に適いまする」
成実「女々しいぞ小十郎!」
政宗「二人とも鎮まれ!評定を何と心得る!」
小十郎「殿、小田原へは小十郎がお供仕りまする。」
政宗「どけ!」
小十郎「何卒!」
政宗「無礼者!」
伊達小次郎「兄上!お止め下され!」
政宗「!…」
小次郎「…小十郎、怪我はないか」
小十郎「…ござりませぬ」


久しぶりに熱い小十郎を見ました。

政宗「許せ。人目を忍んで参った」
小十郎「ははっ」
政宗「皆の申し状は異なると言えどもそれぞれの忠節に改めて感じ入った。しかるに今日の政宗は見苦しく、武将にあるまじき行いに及んだ」
小十郎「ご心中お察し申し上げます」
政宗「小十郎」
小十郎「は」
政宗「改めてそちに尋ねる。小田原参陣を拒絶致せば伊達家の滅亡は確かか。秀吉と合戦に及べば万に一つも勝ち目はないか」
小十郎「…」
政宗「存分に申せ」
小十郎「…上方の軍勢は二十二万。更にその勢いを増すばかりにござりまする。これを例えるなら夏の蝿のごとく、一度や二度は打ち潰し追い払うても次から次へとうるさくたかって参りましょう」
政宗「夏の蝿か」
小十郎「恐れながら後ろには、毛利殿、島津殿をはじめ百万にも及ぶ大軍が控えており、如何とも防ぎ難う存じまする」
政宗「っはははははははは。そうか、関白は夏の蝿か」
小十郎「…」
政宗「ようわかった。俺は小田原へ行く。小十郎の諫言、政宗は生涯胆に銘じておく」
小十郎「…もったいないお言葉」


ようやく決意した政宗。
しかし、修羅道に堕ちたお東の母心が新たな悲劇を生むのでした。

※修羅道(阿修羅道)は仏教で言う六道のひとつ。妄執によって苦しむ争いの世界。修羅(阿修羅)の住まう世界である。修羅は終始戦い、争うとされる。苦しみや怒りが絶えないが地獄のような場所ではなく、苦しみは自らに帰結するところが大きい世界である。果報が優れていながら悪業も負うものは死後に修羅に生る。六道とは、仏教において迷いあるものが輪廻するという、6種類の迷いある世界のこと。天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道。仏教では、輪廻を心の状態として捉える。たとえば、天道界に趣けば心の状態が天道のような状態にあり、地獄界に趣けば心の状態が地獄のような状態である、と解釈される。なお、天狗などこの輪廻の道から外れたものを俗に外道という。(Wikipediaより)