『独眼竜政宗』第14回「勝ち名乗り」感想 | のぼこの庵

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大河ドラマの史上最高傑作『独眼竜政宗』(1987⇒2014再放送)と近年の最高峰『平清盛』(2012)の感想です。
ついでに『江~姫たちの戦国~』(2011)、『八重の桜』(2013)、『軍師官兵衛』(2014)、『花燃ゆ』(2015)の感想も。
あとは爺放談?

秀吉「返事は要らん。関白の命令じゃ」

ああ怖い。
どっかのサルとは大違い。

さて、今回のピカイチはこの場面です。

政宗「思わぬ長陣になってしもうた」
小十郎「気長に雪解けを待つしかございますまい」
成実「正月は国許で過ごされては如何でござろう。ここは我等が陣固めをいたしまするゆえ。のぅ」
小十郎「(頷く)」
政宗「俺だけ帰るわけには参らん」
成実「愛殿が首を長うしておられるわ」
政宗「埒も無い事を申すな」
成実「ははは。国獲りも大切だが子作りも疎かにはできませんぞ。世継ぎがなくば折角の身上が無駄になる」
小十郎「成実殿、言葉をお慎みなされ」
成実「どこか間違うておるか」
小十郎「物事には時期がござる。お世継ぎの誕生も城攻めも。天の時を待てば必ずや思いが叶いまする」
成実「俺は天の時など信じない。城を守るも人間、城を攻めるも人間。人間と人間の力比べではないか。子作りとて同じ事。人間と人間が離れていては何時まで経っても子は出来ん」
小十郎「その上に天の力が働くのでござる」
成実「はははは、小十郎は訳知りじゃ。虎哉和尚に似てきたぞ」
政宗「…小十郎」
小十郎「は」
政宗「お前の子も天の力で産まれるのか」
小十郎「…」
政宗「それをなぜ殺す」
小十郎「…」
成実「待った待った、何の話をしておる」
政宗「愛から命乞いの書状が参った」
成実「命乞い?」
政宗「小十郎の女房が懐妊致し産み月になっておる」
成実「おぉ、それは目出度い」
政宗「目出度いものか。男が産まれたら殺すと言うておるのだ」
成実「戯けたことを」
政宗「なぜだ小十郎」
小十郎「…」
成実「世にも不思議な父親があったものだ。お蔦殿に間男でも出来たのか」
小十郎「さに非ず。片倉小十郎は大殿のお引き回しによって殿のお側にお仕え致す光栄に浴しておりまする。その大殿のご他界より百箇日も経たず御家中が喪に服している今、ひとり片倉家のみが嫡男の誕生を祝うのは以ての外であると存じておりまする」
政宗「そちの申し条こそ以ての外ではないか。天の力で産まれる命を父親がむざむざと摘み取ることは許さん」
小十郎「お言葉ではござりまするが、遠藤基信殿は殉死をなされ、此度の陣にて鬼庭左月殿が戦死を遂げられました。他にも大勢の命を失っております」
成実「だからこそ新しい命が尊いのではないか。立派に育てて伊達家の戦力に加えればこれ以上の忠節はあるまい」
小十郎「子育てに感けて某の勤めが疎かになっては不忠者の謗りを免れません」
成実「どうも合点がいかん。先程より小十郎らしくない事ばかり申しておる」
政宗「もしや小十郎は俺に遠慮致しておるのではないか」
成実「遠慮?」
政宗「主人より先に子を挙げては申し訳が立たんと」
成実「それだ!」
小十郎「…いいえ決して」
政宗「隠すな小十郎。義理立ては有り難いが、却って迷惑である」
小十郎「!…」
政宗「産まれても来ぬ俺の子の為に小十郎の子を殉死させてたまるか。父上が生きていれば眼を剥いて怒るに相違ない」
小十郎「…」
成実「どうしても殺したければ簀巻きにして門の外に棄てればよい。俺が拾うて育ててやる!」
小十郎「…ご配慮、かたじけのうござりまする」
政宗「よいか小十郎、俺はそなたに武人の嗜みを教わった。弓も、馬も、太鼓までも教わった。今日あるは小十郎のお陰じゃ」
小十郎「…滅相も無い」
政宗「いずれは俺の子にも傳役を付けねばなるまい。されば小十郎は予め子を作り、良い傳役に育てておいてくれ」
小十郎「…恐れ入りましてござりまする」


よかったよかった。
ここまでの演技をされては泣かないわけにいきません。
このあと間一髪で赤子を救った喜多と蔦のやり取りにも泣き笑いでした。

また、
政宗による論功行賞も、なかなか興味深い場面でした。
勝ち戦に舞い上がっている様子がよくわります。
二本松城の無血開城に断固反対していた成実も、その二本松を無傷でもらって上機嫌です。

政宗「二本松城を伊達成実に遣わす」
成実「有り難き幸せにござりまする」
政宗「成実は早々に大森城を出て二本松領を治めよ。伊達家に奉公を誓うた畠山の旧臣には知行を安堵致すべし」
成実「畏まってござる」
政宗「大森城は片倉小十郎に与える」
小十郎「!…ははー」
政宗「宮森城は白石宗実に遣わす」
宗実「ははっ」
政宗「宗実は八田郡とともに四本松郡を治めよ。但し小出森城は田村の家臣、石川弾正に与えるものとする」
宗実「心得ました」
政宗「鬼庭綱元!」
綱元「はっ」
政宗「その方には知行百貫を加増致し、伊達家奉行職に任ずる」
綱元「恐れ入りましてございます」
政宗「原田左馬助!」
左馬助「はっ」
政宗「その方には知行二百貫を加増する。留守政景!」
政景「!は?」
政宗「知行二百貫を加増致す。沼崎新左衛門!」


反政宗派だった叔父さんや聞いたことの無い端役にまで加増加増。
それこそ天下を取ったような勢いです。
まぁ、秀吉と家康の腹の読み合い化かし合いに比べれば可愛いものですが、
已むを得ません。政宗この時二十歳。

政宗「父上、政宗はやっと一人前の武将と相成りました。何卒安らかにお眠り下さりませ。基信に続いて左月もお側に旅立ちました。父上とのお約束、政宗は忘れません。必ず京へ上り天下を獲ってご覧に入れます」

こんな演技をされては、ますます応援したくなるじゃないですか。
たとえ結末がわかっていても。