その宝箱は、縦横の長さが10センチメートルほどの大きさである。
「これが、金閣と銀閣が捜し求めていた宝でしょうか」
「おそらくそうでしょう」
「さっそく開けてみましょうか」
「いや、何が出てくるかわかりません。洞窟を出てからにしましょう」
「じゃあぼくが持っていきます」
チューターは、宝箱を持ち上げた。そんなに重くて持ち歩くのに苦労するというほどでもなかった。
2人は、部屋を出て、ここまでやってきた通路を反対向きに歩き始めた。
再び、坂のところに来た。今度は、上り坂である。
マスクによる息苦しさも手伝ったが、何とかがんばって登り続けた。
途中で、何か落ちているのを見た。
「さっき落としたたいまつですね。拾っていきましょう」
僧侶は、それを拾い、また歩き出した。
やがて霧は見えなくなり、そしてまた平坦な道となった。
「ここまで来れば大丈夫でしょう」
チューターは、防毒マスクを取った。僧侶も、自分で取り外した。
再び歩き出す。これまでよりずっと楽に動き回ることができるようになった。
そして、分かれ道である。左右に分かれている。
「どっちへ行きますか」
「西側のほうへ行くと、出口に来たときに門番に怪しまれます。突然人が出てきて、しかも宝箱を持っているとなれば。なので、さっき入ってきた東側へ行くべきでしょう」
2人は、通路を右へ曲がった。
それからずっと歩き続け、やがて出口が見えてきた。
そして門のところまで来たとき、チューターが言った。
「それもう必要ないでしょう」
僧侶は、そのとき自分が持っていた懐中電灯を、チューターに渡そうとした。
チューターは、持っている宝箱を地面に置き、懐中電灯を受け取り、スイッチを消した。
そして僧侶は、出口の門を開けた。
開け切ったとき、僧侶は「おや」とつぶやいた。
そこにいたのは・・・。
金閣と銀閣であった。
チューターも、2人の姿を見て、驚いた。
何でこの人達がそこにいるんだろう。
「てめえら、その宝をどうするつもりだ」
金閣が叫んだ。
「どうするって、つまり、そなた達の許可を得て、この洞窟へ入って、あれを取りにいってきたのであります」
僧侶は、宝箱を手で指しながら答える。
「誰にだ。誰に頼まれてだ」
銀閣が聞く。
「ええとつまり、そなた達にです」
僧侶が答える。
「おれ達って、おれとこの金閣の兄貴のどっちに頼まれたかと聞いてるんだ」
「2人ともにです」
「そんなはずはない。おれと銀閣は壁をへだてていたはずだから、どっちかにしか頼まれないはずだ。ちゃんと答えろ」
「ええと・・・」
僧侶は考え込んだ。