東大寺 修二会 お松明 2020 | タクヤNote

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元mixi『東大寺』『南都七大寺』コミュニティ管理人で、
現在は古都奈良の歴史文化の紹介、
アメーバピグや、配信アプリ『RIALITY』で知り合った人の
アバターの絵を描くなどの自作イラスト紹介をしています。

今回の記事では、小生が撮影した奈良の風物詩、東大寺 修二会 お松明の写真を紹介します。

このブログでは2011年を最初に6回撮影にトライしてまして、三脚が使えない状況での長時間露光という条件での撮影は難しく、これまで多くの失敗写真を投稿して来ました。

 

撮影:2012年3月12日

 

そして、おととし2018年、やっとには自分なりの決定版と言うべきお松明のが撮影できたと、ブログで紹介しました。それが下の一枚です。目指していた報道写真のようなお松明を、ようやく撮影することが出来ました。

 

撮影:2018年3月6日

 

この写真を撮ることが出来たのは良かったのですが、次の年から悩みの種となったのが、今後はどうやってお松明を撮影するかということでした。これからはどんなお松明の写真を撮るのか、同じ方法で撮影しても「毎年同じような写真をアップしても意味が無い」と考えたのです。

そこで、翌2019年からは「報道写真とは違う構図や撮影方法で、誰も見たことの無いお松明の写真を撮ってみたい」と、工夫して撮影したお松明の写真にトライすることにしました。その最初の一枚として昨年撮ったのが、二月堂の真下からフィッシュアイレンズでのお松明の写真です。

 

撮影:2019年3月5日

 

この写真は読者のみすりんさんから、「これまでに見たことの無い構図」とお褒めの言葉をいただいた一枚となりました。これが新しいお松明の写真の始まりです。

そして今年も、次の新たなお松明写真のチャレンジを行いました。

「今度はどうやってお松明を撮影しようか」と思案していたのですが、そこで5年前に、小生が読者として読ませていただいているレインボーパパさんのブログ『ナラんちゅレインボーパパのゴーリキ招来!』で、下のような写真が投稿されたのを思い出したのです。

 

 

レインボーパパさんによると、この写真、二月堂から4㎞以上も離れた平城宮跡歴史公園の第二大極殿跡から撮影されたそうです。光学ズームレンズの最高倍率で撮影されたというお話でした。

レインボーパパさんはこの時に「二月堂が見えるように撮りたかった」と話されていましたが、どの様な条件で撮影しても、夜闇にお松明の光だけが浮かび上がるという写真になってしまいます。お松明の写真を撮る時は“前露光”と言って、陽があるうちにお堂を撮影しておき、夜にお松明を撮影した画像と合成をするというのがキッチリした方法。

この5年前にレインボーパパさんのブログにその前露光を合成する話をコメントさせてもらいましたが、後になって「自分も平城宮跡の第二大極殿の基壇から二月堂を望遠レンズで撮影していた写真があった」と思い出しました。平成26(2014)年5月28日、不退寺での業平忌を参拝した日に撮影した写真です。

 

 

そこで、レインボーパパさんが撮られたお松明の写真に小生が昼間に撮影した二月堂の写真をレタッチソフトで合成し、二月堂の建物を浮かび上がられた、完成した写真も作ってみました。この昼間の二月堂の写真はニッコール180mm f/2.8で撮影した写真をトリミングで引き延ばしたものです。

 

 

なかなか良い感じの写真に仕上がりました。このレインボーパパさんのブログの写真を見て以来、平城宮跡からお水取りのお松明を撮影するというアイディアがずっと頭の中にあったのです。

 

しかし、この写真を見ていただければわかりますが、近くから撮影したお松明の写真と比べると、画質は大幅に下がると言わざるを得ません。これでは「満足できる撮影が出来た」とはとはとても言えないのですが、実際に4㎞も離れた場所からの撮影となると、小さく写った二月堂を大きく引き伸ばさないといけなくなるので、どうしても画質が悪くなってしまいます。画質を上げるに、いわゆる“超望遠レンズ”というものがどうしても必要になって来ます。

しかし、超望遠レンズは非常に高価。小生の愛機カメラはニコンD7000なのですが、ニッコールの交換レンズとして例えばAF-S NIKKOR 600mm f/4 などは希望小売価格が税込162万2500円! キッパリ言いますが、絶対に買えません!!

そのために、アイディアはずっとあったものの、実現不可能なアイディアとして自分の中でずっと封印して来ました。しかし、最近になって頭の中にひらめきが突然起きたのです。

 

「買えなければ、借りればいい」

 

何かヒントがあったとかそういう訳ではなく、本当に天から声が聞こえたという感じで、このアイディアが降りて来たのです。そのひらめきを受けて撮影機材レンタルの会社に連絡をしてみると、超望遠レンズでも比較的手軽な金額で借りることが出来ることが判明。封印していたアイディアが突然現実となったのです。

そうして、お松明の撮影日を3月3日に定め、撮影機材のレンタル予約をその3月3日に取りました。そして、撮影当日を迎えると、大阪のレンタルショップで受け取りに行き、そのまま奈良へ直行しました。機材などが多かったためにこの日は自動車での奈良入りです。

この日小生が借りたレンズはニッコール200-500mm f/5.6。レンタルショップからは「固定焦点レンズの方が画質は優れてますよ」と勧められたのですが、何しろ今回の撮影はテスト的な目的であったので、レンタル料の安いズームレンズの方を選びました。

 

 

安いと言っても、このズームレンズも、買えば希望小売価格は19万2500円。重さも2.3㎏(小生が普段使っている望遠180mmレンズは、重さ760g)もあり、買ったとしてもこんな特別な撮影でも無い限り決して使うことは無いでしょう。

さらに、中古で購入したテレコンバーター TC 1.7E IIも使用し、合わせて850mm(35㎜フィルムカメラ1275mmレンズ相当)まで高めた超望遠効果で撮影に挑みます。

 

小生が平城宮跡第二大極殿跡基壇に到着した時、既に午後6時前になっていました。本当はもう少し早く着きたかったのですが、既に夕闇が迫る時刻になってしまいました。この日は日中曇りの時間も多かったのですが、お松明が始まる夜には雲も切れて、爽やかな晴れとなりました。

小生がこの日一番に気にしていたのは天候。雨が降ったらアウトでしたし、かと言ってレンタル日は事前に決まっていたので、直前の日にちの変更も難しい。雨が降ったら何もかもおじゃんになる非常に不安な撮影プランだったので、よい天気になったことが何よりもありがたいことでした。

 

 

難しい撮影を行うことや、自動車で来たこともあって、この日は多くの機材を持ち込み、これまでに無い体制での撮影となりました。持ち込んだのはカメラや望遠レンズ、三脚の他、普段はインターネットに繋いでこのブログを書いているパソコンも現場に持ち込みました。ピント合わせをするのに画面を出来るだけ拡大したいと思い、パソコンとデジタルカメラをAVケーブルで繋ぎ、ライブビューでデジカメの画面をパソコンに表示させたのです。

AVケーブルはデジカメに始めから付属品として付いていたのですが、今まで使ったことが無く付属品にあったことすら認識していなくて、今回の撮影で「こんな物あったんだ」と再発見したというエピソードもあったりしました。

 

 

パソコンの画面を見ながらデジカメでの撮影をしている自分を「まるでプロの映像エディターみたいでカッコいい」なんて悪くない気分で撮影に臨んでいました。さらに10倍25mm口径のコンパクトな双眼鏡も持参し、カメラとパソコン、双眼鏡と色々な機材を使って4㎞先の二月堂を注視しました。

陽はどんどん暮れてゆき、コンビニで買ったお弁当を晩ご飯として第二大極殿跡の基壇の上で懐中電灯の明かりを頼りにディナー。午後5時を過ぎると平城宮跡歴史公園は駐車場もトイレも閉鎖されてしまうため、自動車の駐車場所の確保やトイレには苦労することになりました。

 

そしていよいよ午後7時、お松明が始まる時間を迎えました。

二月堂の近くにいると大梵鐘の鐘の音が聞こえたり、照明が落ちたりして、いよいよという気分も高まるところですが。平城宮跡ではそれらはまったく聞こえずわからず、時計だけが頼りのお松明となりました。

 

 

わずかなブレも許されない撮影なので、カメラ本体のシャッターボタンに触れることは出来ず、カメラに接続したケーブルレリーズを使っての撮影となります。昨年のお松明の撮影では、感度設定ISO(ASA)100、絞りはf8でバルブでの長時間露光でしたが、今回の超望遠レンズは絞り開放にしてもf/5.6で、さらに1.7倍のテレコンバーターを使っているのでf9.5以上絞りを開けられないため、今年の撮影はISO100、f9.5、シャッタースピード・バルブでの撮影となりました。

撮影が始まると、パソコンのライブビュー画面は露光中表示されなくなるので、露光しながらパソコンの画面で確かめるということは出来なくなります。露光中の確認に一番役立ったのは双眼鏡でした。決して高倍率の双眼鏡では無かったのですが、二月堂の舞台の上を走るお松明の動きが思ったよりもよく見えたのです。結局一回のお松明の走りの撮影は1分近い露光時間になってしまいました。

 

撮影途中には警備員さんが来て声を掛けられたりされました。怪しい者では無いと伝えたかったのですが、自分でも明らかに怪しい様子。でも警備員さんには、お水取りのお松明を撮影していることをすぐにわかってもらえまして、小生から警備員さんに「この時間にここにいてはいけないでしょうか」と恐る恐る訪ねて、「いえいえ大丈夫ですよ」とお許しをもらうことが出来ました。

 

 

こうして撮影は20分過ぎまでに行いました。二月堂にいればお松明が終了すると照明が再び灯り、終了したことを案内するスピーカーでの放送が流れるのですが、平城宮跡では当然わかりません。何度も見に行っている経験と、パソコンのライブビューの画面や双眼鏡でお松明の上堂が終わったことを見て確かめることになりました。

 

こうして撮影が終わって、片付けるつもりでセットしたカメラを確かめたのですが…カメラと望遠レンズを見て、自分の顔から血の気が引いて行くのを感じました。ここで、信じられないようなミスをしていたことに気が付いたのです。

 

すべてのお松明を、望遠ズームレンズを最長望遠にせずに撮影をしてしまっていたのです。

 

考えられない凡ミスです。今考えうる最高倍率の望遠レンズでお松明を撮影することが今回の狙い。ズームレンズを最高望遠にしなければわざわざこのレンズを借りた意味が全く無いってことです。なぜこんなミスをしてしまったのかと、ちょっとその場で頭を抱えながら考え込んでしまいました。

下の写真は撮影した中で一番まともに写っていたお松明の写真を、トリミングで拡大したものです。

 

 

家で撮影したお松明の写真を検証してみましたが、画像が小さくて画質が落ちているというよりも、ピントがぼけているか、スローシャッターでブレているか、あるいは両方かという写りとなっていました。これはズームを間違えただけではなく、複数の反省材料があると判断。ただ残念がってるだけでは始まらないと、家に帰ってからこの夜の撮影での問題点をチェックすることにしました。

 

まず、なぜ超望遠レンズをわざわざ借りたのに、最高望遠にせず撮影というミスをしたのか、その時の自分の行動やどう考えていたかを思い出してみました。撮影の時に一番に何を気にしていたのか思い返すと、とにかく高価な借り物の望遠レンズということで非常に緊張していて、落としたり壊したりしないようにすることばかり考えていたのです。それに当日に借りたばかりの使い慣れない馬鹿でっかいレンズだったということもあり、扱いがぎこちなかったなと後から思いました。さらに到着した時にはすでに午後6時近くで、すでに相当に夜が近づき暗くなっていて、前露光とかかなり撮影の準備やセットに慌ててしまっていたのです。

 

そして、ピンボケについてですが、これまで自分のレンズでお松明の撮影する時には、昼間に合わせたピントやズーム率が動かないように、ピントやズームのリングをテープで止めて後から動かないようにしていました。

 

2018年お松明撮影時のテープで固定したレンズ

 

しかし、今回の撮影ではテープは用いませんでした。もしも借りて来たレンズをテープで止めて傷つけたり汚したりしたら大変と思い出来なかったのです。

 

そしてブレの問題ですが、小生が普段使っている軽量タイプの三脚を今回の撮影でも用いました。仕様を見ると小生の三脚(SLIK 800G-7)は重量750gで、メーカーによる搭載機材の最大重量は1㎏となっており、今回の撮影に使ったニッコール200-500mmズームレンズは2.3㎏と大幅な重量オーバーでの撮影となっていたのです。実際に夜を迎える前に超望遠レンズのテストを昼間にしてみたのですが、風が吹くとファインダーの中の被写体がかすかに揺れているように見えて、厳しいなと思っていました。

さらに露出も露光オーバー気味と思いました。舞台の上のお松明はハレーション気味に真っ白に飛んでしまってました。

 

このようなことから考察される、今回の反省と対策を書き並べてみます。

 

① まず、もう少し時間に余裕を。遅くとも午後5時半には平城宮跡に到着し、撮影のセットを始められるように段取りする。

② レンタルの望遠レンズであることを気にしてテープ固定などを省き、撮影に失敗してしまっては元も子もない。傷つけたり汚したりしないように気を付けながら、慎重にピントやズームリングをテープで固定する。

③ レンタルの時は超望遠レンズと合わせて、大型望遠レンズの重さに対応した大型の三脚も同時に借りる。

④ ニッコール200-500mmズームレンズには“VR”(手ブレ補正)機構ががあります。このVRを活かす。

 

 
⑤ 以前に二月堂近くから撮影した時はISO100の絞りf8~11くらいで撮影していましたが、今回の超望遠での撮影では露光時間が長くなるため、f16まで絞りを絞る。

⑥ 今回の撮影では双眼鏡が非常に役に立ちましたが、手持ちだったので見辛かった。カメラとは別に双眼鏡用ににスタンドを用意し、双眼鏡も固定をする。

 

ここで決意として書きますが、今回のお松明の撮影は失敗でした。また同じ超望遠で平城宮跡から二月堂お水取りのお松明撮影にもう一度チャレンジします。

 

とりあえず、今回撮影したお松明の写真を、今まで通り愛用のレタッチソフト、ソースネクスト、Paintgraphic2 Proででレタッチ加工で仕上げをしました。

 

 

まず、『シャープマスク』でぼやけた画像をシャープにして行きます。今回はピンボケやブレが酷いので、粒子が出るくらいまで強めにシャープマスクをかけます。

 

 

そしてトーンカーブを使って露光調整をします。ハレーションで飛んだお松明の火や、闇の中に消えた二月堂や周辺の建物などが少しでも浮かび上がらせ、黒は黒く落として全体にシャープな調子が出るようにします。

 

 

そして最後に、陽が暮れる前に撮影した前露光の画像を合成します。これで夜闇に消えてしまった二月堂や周囲の建物を浮かび上がらせ、わかるようにします。

 

 

こうして仕上げた下の画像を、今回の二月堂お水取りお松明写真の最終完成画像とします。

今回の反省と今後の方針を踏まえて、まだ日にちが残っているお水取りに今年もう一度行って撮影することも考えたのですが、今年はここまでにして平城宮跡からの二月堂お水取りお松明の撮影は、来年に持ち越してチャレンジします。

いくら買うよりも安いと言ってもレンタル料も馬鹿になりませんし、何よりも今年この方法での撮影に成功してしまったら、来年また別のアイディアを作ってお水取りお松明の撮影を考えなくてはいけなくなってしまいます。ちょっとセコい考えかも知れませんが、来年またこの話題で盛り上がってみたいとあえて持ち越しにしようと思います。

 

そもそも超望遠レンズで1分間もの長時間露光という狙い自体が、無理な撮影なのかも知れません。それを確かめる意味でも、再度チャレンジがしたいのです。

 

 

この夜はせっかく超望遠レンズをレンタルしたのだから、お松明の写真だけで終わりでは勿体ないと思いまして。この時頭の上にぽっかり浮かんだお月様も撮影してみました。というか…初めから月も撮影しようと事前に天体観測アプリで月の位置を調べて撮影に臨んだのです。その意味でも、この日の天気が良くなってありがたかったです。

 

 

トリミングで伸ばしてみたら、下の画像のところまで拡大することが出来ました。

「恐るべし、超望遠レンズ」、あらためてそのレンズの性能を目の当たりにした気分です。このレンズのパフォーマンスを最大限に活かすことが出来たら、いったいどんなお松明の写真が撮れるのでしょうか。

 

 

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