大安寺 竹供養(癌封じ夏祭り) 南都七大寺ノスタルジー ─ 平成23年6月23日 ─ | タクヤNote

タクヤNote

元mixi『東大寺』『南都七大寺』コミュニティ管理人で、
現在は古都奈良の歴史文化の紹介、
アメーバピグや、配信アプリ『RIALITY』で知り合った人の
アバターの絵を描くなどの自作イラスト紹介をしています。

 

 

前回の青葉祭と同じ平成23年の6月は頻繁に大安寺を訪れる月となりまして、青葉祭から一週間にも満たない23日に同じ大安寺で行われた『竹供養(癌封じ夏祭り)』に行きました。

笹酒というのは大安寺の名物の一つで、竹筒に入れた酒を燗にして竹の香りを付けたもの。続日本紀によると、桓武天皇の父・光仁天皇が即位前から大安寺の竹で笹酒を作り、その薬効で72歳の長寿を全うしたとあり、大安寺ではその故事に因んで参拝者に笹酒を振る舞って無病息災を願うのです。
大安寺の笹酒まつりは1月23日の光仁天皇の忌日法要である『光仁会』が広く知られています。同じ笹酒まつりが初夏の6月23日にも行われるのは、この日が中国の俗説で「この日に竹を植えればよく繁茂する」とされる『竹酔日』にあたるからとされています。
夏の始まりの時期は国家の大難として恐れられた疫病が猛威を振るい出す頃ということもあったので、笹酒はその厄難から逃れたいという民衆の願いに応えた行事だったのでしょう。

この日は午後1時くらいに大安寺入り。梅雨の合間の晴れの日となり、強い日差しに奈良は相当な暑さとなっていました。
当日はJR奈良駅から歩いて大安寺に向かいました。これは毎回小生が大安寺を参拝する時のお決まりのルートなのですが、大安寺近くの駐車場には、臨時のバス乗り場が設けられており、バスで奈良駅から来る参拝客も多くいました。
他にも、参道には普段見ることも無い出店があるのも見かけて、人気のないいつもの大安寺とは違っていることが、お寺に到着する前から窺い知ることが出来ました。

 

 

 

 


「どれだけ参拝者がいるのだろう」と暑い中を大安寺へ。おなじみの南門には竹供養の看板が。臨時バスまで出ている竹供養が行われている境内の中がどうなっているのか、興味津々で中に入ります。

 

 

 

 

 


境内の中には、この画像のように多くの人が。
これまでの大安寺には幾度か足を運んでいた小生の印象を言うと、本来この大安寺という所は観光ルートからも外れていて、普段は本当に参拝者の姿もまばらなひっそりとしているのです。いつもの人気も少ない境内を見慣れていると、大勢の参拝客で賑やかな境内の様子には驚きは隠せませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


本堂には五色幕が掛けられて、法要の華やかな雰囲気を盛り立てていました。本堂の本尊、十一面観音は開帳されていませんでしたが、大安寺のいくつかのお堂では扉が開けられて、多くの仏像が開帳されていました。

 

 

 

 

 


宝物庫である讃御殿の扉が開けられて、7躰の木彫天平仏が外から拝めたり、本堂裏の嘶堂も開帳されて、馬頭観音像や弘法大師坐像も拝むことが出来ました。

 

 


 

 

 

 

 


嘶堂が開扉されるのは3月の期間だけと聞いていたので、6月のこの日に馬頭観音像を拝むことが出来るとは思っておらず、ちょっと感動を覚えました。
そして、高く楊そして午後1時より本堂で竹供養が始まりました。大安寺のHPによると

http://www.daianji.or.jp/05-gyoji.html

 「大安寺竹」は、弘法大師をはじめ、大安寺の僧によって全国に広められたと伝えられています。そして、新たな日本の風土と景観を創造し、人々の生活を豊かにしました。
(中略)
 この竹の広大な恩徳に感謝し供養をする法要です。


と、大安寺の竹に感謝するという供養と説明されています。自然研鑽という、ちょっと珍しい法要なのですね。

 

 

 

 

 


堂内にはすごい人で、小生は入れそうになかったのですが、しかし本堂の障子が所々開けられていたので、堂外からでも法要の様子は良く覗うことが出来ました。
最初は僧侶による読経が営まれました。この日の本堂は須弥壇前に笹飾りが飾られ、竹筒の灯りが灯されていました。
そして、読経が終わると、次は虚無僧による尺八の奉納演奏でした。

 

 

 

 

 


30分ほどの本堂での法要が終わると、僧侶の皆さんは本堂を出て本堂横の竹林へと移動されました。仏前法要は本堂で営まれたのですが、竹供養の祈祷加持が実際に行われるのはこの竹林なのです。

 

 

 

 

 


竹林ではテントが張られ、多くの参拝客も移動して大賑わい。とにかくすごい人で、加持祈祷が行われている式場に近づくのも大変なほど。やっとの思いで人ごみの合間から除くと、背中に団扇を差した笹娘が、お祓いを受けているのが見えました。

 

 

 

 

 


そして、竹林でも虚無僧の奉納演奏が行われたのです。
尺八の演奏は竹つながりなのでしょう。他にも奈良伝統工芸の竹の茶筅が販売されていたり、玉すだれの大道芸が行われたりと、どこもかしこも竹・竹・竹の笹酒祭りの大安寺となっていました。

そして、いよいよお目当ての笹酒を戴きに。本堂前の受付で志納を払うと、竹の猪口をいただきます。そしてそれを手に境内の奥、笹酒授与所へ回ります。

 

 

 

 

 

 


授与所でお出迎えは、色っぽく浴衣を着られた笹娘の美女の皆さんです。竹供養の笹娘をされているのは、奈良の着物専門学校の女学生です。

 

 

 

 

 


1月の光仁会の時は温められたばかりの燗酒が振る舞われるのですが、初夏の竹供養には水樽に浸された冷酒となります。

 

 

 

 

 


車で来た人やお酒が苦手な人のために“笹水”も用意されており、笹娘から「お酒ですか? お水ですか?」と問われます。小生は飲めないわけでは無いので、お酒をいただきましたが。何しろ梅雨の間の非常に気温が高い日だったので、猪口一杯だけでも体が「カーッ」と熱くなってしまいます。

 

 


 

 

 

 

 

 


きれいな娘さんにお酌をしていただくだけでも、暑さで弱った体も元気になるというのが本音だったかも知れませんね。

お祭り騒ぎの竹供養でしたが、その中には大安寺というお寺の、参拝者の健康を祈念するという基本理念があったように思います。

修行した僧侶による法力によって信者に功徳を与えるという、真言宗の寺院であるということも大きいのでしょうが、それ以前の古代寺院としての大安寺の伝統も受け継いでいると小生には思えました。
浄土思想が広まった後世の仏教によって、葬儀や物故者の菩提を弔うなどのイメージが強くなった日本仏教ですが、古代においては“仏に祈って、安寧を求める”というのが仏教でした。

寺院と施薬院が設けられて、仏に祈ることも薬効で健康を求めることも同じであった古代日本の理念が色濃く反映している。それがこの大安寺の竹供養であるのだと思います。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

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