史跡・名勝 飛鳥京跡苑池 ─ 11月24日 現地説明会 ─ | タクヤNote

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元mixi『東大寺』『南都七大寺』コミュニティ管理人で、
現在は古都奈良の歴史文化の紹介、
アメーバピグや、配信アプリ『RIALITY』で知り合った人の
アバターの絵を描くなどの自作イラスト紹介をしています。

11月24日に行われた飛鳥京苑池現地説明会に行って来ました。
家で取っている
11月21日の産経新聞(14版)でに出ていたのを受けて、観に行ったのです。

 

 

 

 

 


実は今までの遺跡の現地説明会目的で飛鳥を訪れたことが数回ありまして、飛鳥京苑池遺跡の説明会は平成11(1999)年6月に続いて2度目となります。この時には庭園に水宴のための配水施設が池に造られていたという説明がなされ、ユニークな形の石造の噴水施設も見ました。

 

 

 

 

平成11年 説明会パンフレットより

 


場所は甘樫丘の東南側の広がる田園の中。明日香村の村役場や川原寺などに近い場所。舒明天皇が岡本宮に遷宮した630年より、694年の持統天皇による藤原京遷都までの60年間以上に亘り、数回飛鳥以外に短期間に遷都した以外は、朝廷政府の中心であった場所なのです。
その中で見える形で整備がされているのが『飛鳥板蓋宮跡』で、中大兄皇子と藤原鎌足が蘇我入鹿を討った『大化の改新』の舞台としてよく紹介されています。
その他にも現在『明日香村埋蔵文化財展示室』となっている、旧飛鳥村立飛鳥小学校跡あたりが、天武天皇の宮であった浄御原宮跡と指定されるなど、かつては各天皇ごとに、個別の天皇宮があったとされて来ました。
しかし昭和34(1959)年からの発掘調査によって、同じ場所に違う年代の建物跡が幾層にも重なっていることが確かめられ、甘樫丘東側の狭い平野部に何代もの天皇が改築や増築をしながらも、同じ場所で王宮としていたことがわかったのです。
藤原京苑池は、そんな藤原京の西側におそらく王宮の庭園として築かれたものと考えられる遺構です。今回は14年前の現地説明会のことも合わせて、この苑池遺跡のことを紹介したいと思います。

明日香村へはいつもなら、近鉄電車の飛鳥駅から徒歩で向かうのですが、今回はちょっと志向を変えて違う方法で明日香村へと行きました。まず近鉄大阪線の八木駅で下車しました。奈良県橿原市にあたります。

 

 

 

 

 

 


そして、次に乗り換えた交通機関は『橿原市コミュニティバス』。そうです、8月25日の日記で紹介しました、里中満智子のコミック『天上の虹』のラッピングバスです。飛鳥も天上の虹もずっと関わってきた小生ですが、橿原市方面から飛鳥に向かったことが無かったので、今まで乗ったことが無かったのです。この機会に一度乗ってみようと思ったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乗った感じは、ネットの画像で見た印象よりも小型のバスだなというところでしょうか。観光客よりも地元の足として使われているようで、八木駅で乗ってきた幾人かの乗客も途中の村営墓地までには全員下車し、終点の明日香村のバス停では乗客は小生一人だけとなっていました。天上の虹から飛鳥のファンになった人にはぜひ一度乗ってもらいたいバスなのですが…。
こうして約40分ほどバスに揺られて、終点の明日香奥山駅に到着。ここでバスを乗り換えて飛鳥村内へ。こちらのバスには今回の飛鳥京苑池遺跡の説明会目当ての乗客も多く乗っていて、バスの運転手さんから「こちらからが近いですよ」と、万葉文化館のバス停での下車を勧められました。

こうしていよいよ飛鳥京苑池遺跡へ。ここは甘樫丘が見渡せるとても風光明美な場所。右手には飛鳥寺が、左手には川原寺が望める古代の息吹がとても感じられる場所です。

 

 

 


そんな田園地帯の中に飛鳥京遺跡の発掘現場がありました。遺跡にはすでに多くの現地説明会目当ての古代史ファンが詰めかけていました。
14年前の発掘では苑池の南側が確認され、一面石敷きの池の中に、池の中より大きな石を積んで造られた島が築かれていました。噴水施設は池の最南部に設けられ、水をたたえた苑池に噴水施設が優雅に水を流すという、いかにも王侯貴族の施設らしい雅さが伝わる説明でした。

 

 


平成11年 現地説明会パンフレットより

 

 

 


そして、14年を経た今回の発掘調査の説明会では苑池の北側の池や水路、南側から見つかった掘立柱から池を眺めるためのものと考えられる建物跡も出るなど、前回では見ることの出来なかった多くの遺構が更に確認されていました。発掘を行った橿原考古学研究所は「これで飛鳥京苑池の全貌が明らかになった」というコメントが出されています。

 

 

 

 

 

 

 

平成25年 現地説明会パンフレットより

 


平成11年の説明会では“張り出し”.と説明されていた石積みでしたが…。

 

 


平成11年 説明会パンフレットより

 

 

 


今回の説明会では独立した島であることが確かめられたと、新発見が報告されたのです。

 

 

 

 

 


島の東側からは植樹された松の株も見つかり、池の中に浮かぶ松が立つ東西32メートルの中島は、それは豪奢なものだったのでしょう。

2区と呼ばれる南池の東南には、2棟の掘立柱を持つ建築物の跡が確認されました。説明会では苑池を見下ろして鑑賞するための施設ではないかと説明されていました。

 

 

 

 

 


そして、また北側には池に水を引くための水路の遺構も確認されました。

 

 

 

 

 


2回の現地説明会に参加して、植樹をされた大きな中島に石積みで造られた小さな島。その下には石造りの噴水施設があり、それを少し高い位置に建てられた建物から愛でる。王侯貴族がどのような風雅な暮らしをしていたのか、覗うのに十分過ぎる遺構でした。
小生がここを訪れた午後1時から、橿原考古学研究所の職員による説明会が行われ、東側と南側に掘立柱塀の存在が確認され、南東の飛鳥京とは別区画となっていたこと、また池の中から中島と北岸との間に木の柱も確認され、木造の施設があったと考えられていること、その木の柱の色の変色から池の水深は30センチメートルほどのとても浅いものだったことなどを解説していただきました。
また、現地説明会受付には、出土した瓦や須恵器などの遺物の展示も行われていました。

 

 

 

 

 

 


飛鳥京跡苑池はまだ発掘調査段階で、遺構のほとんどが未発掘かすでに土中に埋め戻されている状態なのですが、平成15(2003)年に国の史跡・名勝に指定されました。
そして、説明会では今回の苑池の全貌が確かめられたことを受けて、復元をするとも発表されました。今はまだ荒廃した遺跡の様相である苑池ですが、復元は5年後には完成する予定であるという話でした。いったいこの飛鳥の里にどのような苑池が我々の前に姿を見せるのか、否応なく期待が高まります。
それまでは、現地にあったパネルに描かれた復元図や、ジオラマを参考に想像をすることになりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 


飛鳥には数多くの古代の遺跡が点在します。その中には高松塚古墳や石舞台古墳、最近ニュースで騒がれたキトラ古墳など、全国的に有名なものもあります。
しかし、まだまだ調査が進んでいないこの飛鳥京跡は、小生にとっては飛鳥の中でも別格だと思っています。なぜならこの飛鳥京というのは、飛鳥時代の日本国の政治の中枢であり、日本書紀に記録されている歴史の舞台そのものだからです。

飛鳥京跡は甘樫丘の東側の平野部を南北1キロメートルほどの範囲にわたり、多くの官舎が建ち並んでいたとされています。
今回の説明会パンフレットにあった飛鳥京の図と、グーグルマップの飛鳥の航空画像を重ねると次のような感じです。

 

 

 

 

 


苑池の東南側に皇居であり、朝廷であった後期岡本宮がありました。そして天武天皇の時代に浄御原宮として建てられたと大きな建物跡(エビノコ郭)こそが、日本最初の大極殿と推測されています。中大兄皇子、大海人皇子、歴史に名を残す人物が活躍した場所こそ、この飛鳥京跡なのです。苑池では額田王や柿本人麻呂と云った歌人が、歌を詠んだかも知れません。
実際にここからは大津皇子の名と思われる“大津皇”とその姉である大伯皇女の名と思われる“大来”と記された木簡が出土しており、日本書紀や万葉集に書かれた人物の痕跡がしっかりと出土しているのです。

 

 

 
画像参照:http://funabenkei.daa.jp/yononaka/ohku/ohku.html

 

 

 

 


そして、今ののどかな風景からは想像も付かないような官衙群が、かつてこの場所に建ち並び、まさに京・都市として栄えていたのです。歴史を追って奈良が好きになった小生にとって、まさに歴史の表舞台であったこの飛鳥京跡という場所は、他のどこよりもロマンを感じる場所なのです。

 

 


飛鳥資料館 飛鳥京ジオラマ 画像参照:http://www.bell.jp/pancho/k_diary-2/2008_08_29.htm

 

 

 


ただ、多くの観光客が訪れるには飛鳥京跡はあまりに未整備であり、板蓋宮跡や漏刻(時計台)の跡とされる水落遺跡などの一部の遺構が点々と整備されている程度。よほどでないとここに、古代ロマンを感じることは難しいというのが現状です。いつか調査整備が進み、古代の都市の姿が復元されるようなことになれば、古代人が歴史を作った風景を訪れる人たちにしっかりと実感させられるものと期待をしてしまいます。

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