はじめてのオータムレイト ─ 第65回 正倉院展 ─ | タクヤNote

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元mixi『東大寺』『南都七大寺』コミュニティ管理人で、
現在は古都奈良の歴史文化の紹介、
アメーバピグや、配信アプリ『RIALITY』で知り合った人の
アバターの絵を描くなどの自作イラスト紹介をしています。

 

 

11月5日、奈良国立博物館で開催中の正倉院展に行きました。

 

 

10月19日撮影

 


実を言うと10月19日に東大寺大仏殿で融通念仏宗 聖聚来迎・万部おねりを見に行ったので、まだ10日ほどしか過ぎていないし、行くかどうか思案していたのです。

いろいろと考えまして、10月25日にこちらの日記でも紹介しました、クロネコならTABIセンターでの西村幸祐氏による『切り絵で見る 大和の美III』と展示と合わせて行くことにしました。
http://www.create-net.co.jp/kirie.html#1008

それと、もう一つ今回の正倉院展では、オータムレイトを試してみたいと思い、行ったということもありました。
オータムレイトチケットというのは、閉館1時間半前から発売される当日割引チケットのことで、大人1人なら当日1,000円が700円に。さらに記念品までもらえると、とてもお得になっているのです。
http://www.yomiuri.co.jp/shosoin/2012/info.htm

小生が今回試してみたいと思ったのは、割引とかそういうことよりも「正倉院展*は、閉館直前に行くと空いている」という話を聞いていたからです。
正倉院展を見に行くのはこれで4年連続でしたが、ここのところずっと鑑賞は午前中ばかりでした。時間に余裕を持たせたいと、早めに行くというパターンだったのですが、毎年30分~1時間くらいは入館に列を作り、館内でも目玉展示では同様の時間を待つことになっていたのです。

 

 


2012年11月1日撮影

 

 

 


今回は「十分に観れなくても覚悟をしよう」という気持ちで、かなり閉館の際の時間に行くことにしたのです。一度オータムレイトを経験としてやってみようと考えたのでした。

そういうことで、正倉院展の閉館時間までの時間を使う目的も兼ねて、三条通にあるクロネコならTABIセンターでの、西村幸祐・切り絵で見る 大和の美IIIの展覧会へ。

 

 

 

 

 


11月より展示作品が入れ替えられてまして、今までの仏像や奈良の風景を題材にした切り絵の他、今回はテーマ展示として、12月に盛り上がる春日大社・若宮おん祭りを取り上げられた作品のコーナーが設けられていました。

 

 

 

 

 

 

 

 


本当は、9日と10日に行われるワークショップ・講習会にもぜひ参加したかったのですが、小生のスケジュールの都合で断念。今度機会があれば、ぜひ参加したいと思っています。
西村氏の作品は興福寺国宝館や唐招提寺の売店でも作品が販売され、入手することが出来ます。そして、今回の正倉院展のグッズ販売にも西村氏の作品が出るのです。

こうして、奈良を過ごし、時間は午後5時。正倉院展閉館の6時の1時間前と、狙った時間になったタイミングで、国立博物館へ行きました。すっかり空は夕日色に染まっていました。

 

 

 

 

 


今回はオータムレイトの体験という意味もあったので、あえてチケットは持たずに来館。混雑時には博物館下に長蛇の列が出来るのですが、遠目に見てもがら空きなのが見て取れました。

 

 

 

 

 


混雑時には券売ブースでも並ばされるのですが、この時間帯では販売員の方が客を待っている状況でした。

 

 

 

 

 


チケット販売ブースで、オータムレイトの記念品も一緒にもらいました。それが、右の“しおり”です。

 

 

 

 

 


昭和27年のポスターをデザインしたレトロな雰囲気のしおりですが、正直な印象として記念品よりチケットの方が立派に感じるくらいです。仰々しく“記念品”を詠っていてこれ1枚で、がっかり感は否めません。小生のすぐ後ろでチケットを買っていた女性客が、しおりを手に「記念品はいただけるんですか?」と、販売員の人に聞いていました。

そんなこともありながらも会場へ。去年は約30分待った廊下を走るようにスイスイと進んで館内へ。以下、今年の正倉院展を大雑把にはなりますが、紹介して行きます。なお、御物の画像は会場入り口で配られていたパンフレット、読売新聞の特別版、および目録から引用しています。

 

 

 

 

 


展示場は大きく3つの展示に分かれていました。第一展示は『平螺鈿背円鏡』(北倉)など、鏡の展示から始まり、『鳥毛帖成文書屏風』(北倉)、『鹿草木夾けちの屏風』(北倉)などの屏風が並びます。

 

 


平螺鈿背円鏡(北倉)
 

 

 

 

 

  
鹿草木けち屏風                鳥毛帖成文書屏風           

 

 

 

 


鏡や屏風のコーナーを過ぎると、次は伎楽面や雅楽の楽器などの展示コーナー。螺鈿装飾がされた『檜和琴』(南倉)も、今回の目玉の一つ。話題の一つである坪の中に矢を模した棒を投げ入れるゲームのための『投壺』(中倉)が展示されていたのも、このコーナーです。
また、管楽器の展示スペースでは、正倉院宝物の実物の尺八を実際に吹いたという録音が流されていました。最近の正倉院展では楽器の出陳があると、この方法が行われます。目だけでは無く耳などの五感を使って、正倉院宝物の魅力を伝えるというスタイルが取られているのです。

 

 


檜和琴
 

 

 

 

 


投壺

 


ここの展示コーナーは確かに昼間のような鑑賞者で混みあっているというほどの酷さではありませんでしたが、割と多くおられました。やはり正倉院展ですから鑑賞者は他の特別展よりもずっと多かったです。押し合いへし合いにはなっていなくても、一番混雑しない時間を選んでもこれだけの人がいるのに、やはり「人気あるな~」という印象でした。

そして、第二展示コーナーへ。ここの最初で待っていたのが、今回の正倉院展での一番の目玉の『漆金薄絵盤(香印座)』(南倉)です。上に香炉を乗せて仏前に供える台座。迦陵頻伽や花喰鳥など、仏教色の濃い極彩色の文様で蓮弁をあしらった木製品。
ホスターも、この宝物をデザインされてます。

 

 


漆金薄絵盤

 

 

 


この一番の目玉宝物の所で、係の人が鑑賞者を誘導。漆金薄絵盤を鑑賞する鑑賞者を間近から鑑賞する者と二列目から鑑賞する者とに分けさせ、間近から鑑賞を希望する者に「漆金薄絵盤を間近からご覧になる方は、10分~15分待ちとなります」と呼びかけたのです。オータムレイトでも鑑賞に並ばないといけなかったのです。小生は間近から鑑賞する方を選びましたが、結局15分ほど待つことになりました。時間は閉館30分前の5時半も近づき、時計を覗いて時間を気にする鑑賞者の姿が目立ちました。
しかし、ここは間近から鑑賞して正解でした。直径56センチメートルと結構な大きさの盤でしたが、近づいて見ると手描きの唐花模様は驚くほど微細。ポスターやパンフレットには拡大写真も載っていましたが、実際には小さく細かい描画であることが分かり、この緻密さは実物を間近から見て始めて出来るものだと実感しました。

 

 

 

 

 


そして、漆金薄絵盤で費やした時間を気にしながら、最後の第三展示へ。
こちらは文書などが主に出陳されていました。『続々修正正倉院古文書 第三十八帙 第八巻』(中倉)は伊勢神宮の遷宮における皇大神宮の諸建築の装飾物などのことが記録されており、伊勢神宮の建築に関する最古の資料と目されているもの。今年の伊勢神宮遷宮に合わせての出陳のようで、結構こういうタイムリーさも楽しみの一つです。

 

 


続々修正正倉院古文書 第三十八帙 第八巻

 

 

 


この第三展示の締めを飾る最後の目玉が『花喰鳥刺繍裂残片』(南倉)です。大らかな天平らしさが出ている、威風堂々とした鳳凰の刺繍。パンフレットなどを見ただけでは美しい鳳凰の姿が自然と描かれているように見えますが、実物を間近に見ると、細かい断片をつなぎ合わせて修復した痕を見ることが出来ました。細かくバラバラになった断片の布を慎重につなぎ合わせて天平の鳳凰が蘇ったのを目の前で見ると、正倉院宝物には修理に携わった正倉院職員の気の遠くなるような努力を覗うことが出来ました。

 

 


花喰鳥刺繍残裂片

 

 

 


全66点の出陳物を見終えた時は、すでに6時10分前に。やや駆け足で新館2階の展示室を出て、1階の販売コーナーへ。売店では図録と、切り絵作家、西村幸祐氏によるデザインのグッズが販売されていると聞いていたので、花喰鳥刺繍残裂片をモチーフにした散華を買いました。

 

 

 

 

 


こうして博物館を出た時は、ほぼ6時になっていました。結局開館時間いっぱいまで掛かってしまったのでした。
午後6時ということで、かすかに黄昏が空に残っていると予想し、その空を写真に写そうかと計画していましたが、実際にはすっかり日は落ちて、完全に夜になってしまってました。

 

 

 

 

 


今回はオータムレイト初体験ということで、確かに午前中や昼間に来館するよりは確実に混雑は少なかったです。しかし、それでも人気が無いというほどの空き方ではありませんでしたし、目玉の漆金薄絵盤では日中ほどでは無いものの、見学に並ぶということもありました。閉館時間を気にしないといけないことを考えると、オータムレイトも決して“ゆっくりのんびり”では無かったですね。
もちろん昼間のようなラッシュアワーのような混雑ではありませんでしたし、昼間の鑑賞との違いを知っての上で、それを考慮して正倉院展を楽しめば一番だろうと思います。

今回は初めてのオータムレイトということで、良い経験になりました。

 

 

 

 

 

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