第八話 プロリン -21世紀の究極の触媒-
どうも、移動費で今月の小遣いを全て溶かす羽目になったサイエンス中野(炭素)です(泣)。
ところで、皆さんは「身近なアミノ酸を探せ!!~Iku発見編~」を見たでしょうか(https://ameblo.jp/elementcreators/entry-12324425486.html)。Ikuはプロリンについて「触媒」になる性質を記事に取り上げていました。今回はもう少しだけ掘り下げてみようと思います。
まず、プロリンについて短い話を一つ。
これがプロリンです。アミノ酸に分類される物質です。ちなみにアミノ酸とは、アミノ基(NH2)とカルボキシル基(COOH)をもつ物質です。ここで、プロリンの構造式を見てください。プロリンにアミノ基はありますか。そう、プロリンはアミノ基を持っていません。代わりにイミノ基(NH)があります。正確にはこの物質はイミノ酸です。でも、水中ではカルボキシル基の水素イオンが離れマイナスの電気を帯びます(COO-)。取れた水素イオンはイミノ基に付きプラスの電気を帯びます(NH2+)。普通のアミノ酸ではアミノ酸に水素イオンが付いてプラスの電気を帯びます(NH3+)。このように場所によってプラスとマイナスの両方の電気を帯びている物質を双性イオンといいます。
さて、本題に入りましょうか。このプロリンは「触媒」に使えるという話でした。例えば、アルドール反応という化学反応があります。この反応は、原理や応用性から「有機化学の基本中の基本」と呼ばれるような反応です。文字数上の都合で反応の原理を省略しますが、この反応を何の工夫も無しに行うと生成する物質には4つの異性体ができます。この反応は勝手に起こるわけではなく、なんらかの触媒が必要です。
この触媒にプロリンを使うと、様々ないいことがあります。
例えば、反応の促進だけではなく異性体の選択もできます。かみ砕くと、決まった形の物質のみを生成させることができます。そして、その収率や選択性は完璧に近いといいます。
プロリンを使う利点はそれだけではありません。プロリンを触媒に使う場合、操作が恐ろしく単純で安全になります。合成する物質と少量のプロリンを水中でかき混ぜるだけです。しかも、プロリンを使えばコストは極めて安価、有害な廃棄物も出ません。
プロリンの触媒の応用は瞬く間に広がり、今もなお研究されています。ちなみに、プロリンはアルドール反応だけではなくマイケル反応やマンニッヒ反応という化学反応の触媒に利用できることが知られています。興味のある方はぜひ調べてみてはどうでしょうか。
