「ふっ、ふふふふふ・・・」
「チャンチャラ!! ララララァ・・!!」
うっ・・・。
グググググゥ・・・。
「専務、大丈夫ですかねぇ・・・」
「どうだろう・・・」
「出張から帰ってから、あんな調子ですよねぇ・・・」
「うーー、うーー、うーー!!」
「専務。
今回の出張はどうでしたか?」
「あぁ・・・、
そこにいたのか・・・」
「専務、今回の出張はどうでしたか?」
「ん?
有意義な出張だったよ」
「長い出張でしたねぇ」
「あぁ、今回の出張は、旧友を訪ね歩く出張だったよ。
電子出版のデバイスがポロポロ出てきたからねぇ・・・。
それで、国内の電子書籍を出版している会社を回ってきたんだ」
「どうでした、国内の出版社は?」
「実は・・・、
10年前とあまり状況は変わっていないようだった。
まぁ、少しは変化があったけれどね」
「確か10年前は、各社バラバラのフォーマットで・・・
電子出版には、そう力を入れていなかったんですよね?」
「それが KindleやiPadの登場で活気づいたじゃないですか」
「まぁ、そうなんだけれども・・・。
しかし、各社バラバラのフォーマットになった理由は、販売形式と著作権管理の問題が一番なんだよ。
それは前にも話したよね」
「はい、聞いています」
「あまりにもバラバラになりすぎたので、大手ハードメーカーは全ての電子書籍のフォーマットに合わせたデバイスを作れなかったんだよ。
多種のフォーマットを表示するデバイスを作ることは可能だったのだけれど、著作権管理が、それぞれの書式でバラバラだったんだ。
著作権管理は、パソコンで管理して、書籍とフォーマット等のデーターをトータルで管理しなければいけないんだけれど・・・。
それもバラバラだったから・・・。
数種類の書式に合った、プログラムと回路を組み込んだりするとコストが上がっちゃうからね」
「でも、海外ではEPUBフォーマットが共通フォーマットとしてスタンダードなのでしょう?」
「その通り!!
その通りだけれど、EPUBフォーマットは事実上プロテクトは無いも同然ですよ」
「著作権が保護されないと、出版社もおいそれとは電子化できませんよね」
「P2Pやコピーゲームと同じ道には進みたくないですからねぇ・・・」
「そこで、出版社はどう出るかを聞いて回ったんだよ。
結論から言うと、出版業界は四分五裂しているねぇ。
まぁ、各社とも電子書籍化の波は止められないと考えているんだ。
今まで電子書籍化して販売しているコンテンツの移行作業を急ピッチで進めているようですよ。
書式は・・・。
.Book、Xmdf、Adobe EPUB 、Mdoc 、udt、zbf.cmt、.ttz、.cop・・・。
「前よりも書式が増えているじゃないですか!!」
「大混乱ですね・・・」
「そうなんだ・・・
大手出版社と印刷会社、中小出版社とネット販売業者、ハードメーカーとDTP屋さん・・・
それぞれの綱引きがより加速して・・・
四分五裂の暗中模索?
こんな感じだったなぁ・・・」
「それじゃぁ、EYE-READERの考え方は間違っていないんですね」
「様々なフォーマット再生できないのならば、すべてをjpegに変換して読めるビュアーを作ろうという発想でしたよね」
「んじゃ、早く次のロッドを量産しましょう!!」
「そうもいかないんだよねぇ・・・
ハードの生産者とソフトの提供者と消費者の間に、超えられない壁のようなものを感じたんだよ・・・」
「壁ですか?」
「どんな壁ですか?」
「まずは、コンテンツの提供者と消費者の壁の説明するね。
コンテンツの提供者・・・
つまり、出版社なんだけれど、電子書籍は安いんですよ。
とにかく安い!!
印刷と流通と材料がいらないからね。
でも、電子書籍を安く販売すると、既存の紙媒体の本の値段が崩れてしまう事を恐れているんだ。
また、消費者はいつでも読める本が欲しいわけよ。
出来るだけ安くて、品切れ、絶版が無い本が欲しい!!
そこで、出版社はベストセラーは電子書籍でもいいかなぁ・・・
と考え始めたんだよ。
でもね、ベストセラーというジャンルは、いつも本を買わない人が買うからベストセラーになるんだよ。
だって、本読みはベストセラーになったら買うし、ならなくても読みたい本を買うし・・・」
「ベストセラーが値崩れすることを恐れているんですか?」
「んーー、そこは、電子書籍の値段設定だろうねぇ・・・。
でも、問題の本質はそこじゃないんだよ」
「分かった!!
コンビニ 効果ですね!!」
「おぉ、さすが店長!!
常連客の本が大好き人間は、行きつけの本屋さんのどの棚に、どんな本があるか知っているんだよ。
でもね、ベストセラーを買いに来るお客さんは、ささっと本を見つけられない。
まぁ、大体レジの前に平積みしているんですよ。
そして、特設コーナーがあったりして・・・。
でもね、そこは一緒に買って欲しい本が置いている訳ですよ。
ご一緒にポテトはいかがですか?
てな具合にね」
「そうんだ!!
では、出版社は何を怖がっているんですか?」
「ここまで言ってもわからないのかぁぁぁぁ!!
出版社は本屋が無くなることを怖がっているんだよ!!
ベストセラーが売れるのもいいけれど、ついでに売れる本が無ければ、本屋としては旨味が無いだろうがぁぁぁぁぁあぁぁ!!
そもそも、出版不況のこのご時世に、ベストセラーなんてありがたい商材があったら、本屋は大喜び・・・。
というか、それでも食えなくなるぐらい厳しい業界なのよ」
「怖い顔しても、良くわかりません・・・」
「あのね。
低コストでも大々的に宣伝ができるネットをつかっても・・・。
低価格帯でスムーズな販売ができる電子書籍のマーケットができても・・・。
本屋が無くなるという事は、本を読む人が減るんですよ。
人々は必要な本だけをネットで買うことになります。
これは、中古ファミコンショップが少ない市は、正規価格で売っているゲームショップの売り上げも低いという統計資料があります。
つまり、本に気軽に接する機会が少なくなると・・・。
物理的に本に接する機会が少なくなる事自体が活字媒体の終息を加速する事につながるのでは?
という考え方です。
印刷業界の一部は、この考え方でロビー活動を進めていたりします」
「電子書籍を普及させたいけれど、普及しすぎると活字文化事態が終焉を・・・?
それは考えすぎでは?」
「うん、考えすぎというか、ありえないだろうね。
業界が本当に怖いのは、街のCD屋さんが無くなった理由と同じだよ。
PMP(ポータブル・メディア・プレーヤー)の普及でCDというメディア自体が消滅しかかっている。
サクッと舵を切って乗り換えられた業界は我が世の春を謳歌しているんだけれど・・・。
そうでない業界は、様々な数字を駆使して様々な言い訳を考えて業界を維持しようと画策する。
圧力団体を作ったり、政治の力を借りたりね」
「それでは、街の本屋も無くなるんですね」
「近い将来に・・・」
「ぼくは、いつもアマゾンで買っちゃいますよ、
安いですから」
「そうなんだよねぇ・・・
アマゾンで買う人が増えているから・・・
まぁ、時代の流れだろうね」
「大手は別にしても、中小の出版社は、しがらみも無いし、スッパリと本屋を見限って電子出版するという発想は無いのですか?」
「世知辛い世の中ですから・・・
その方向で着々と進んでいます。
でもね、中小の出版社に、ソフトを開発したり、メーカーと交渉してハードを開発したりする能力があると思う?」
「無いですねぇ・・・」
「さっきも話した通り、消費者の利便性よりも、政治力を駆使した業界の生き残りゲームが始まっているんだよ・・・
表向きの大義名分と大人の事情という奴だ・・・
今回の出張も、大変だった・・・」
「既存のフォーマットになるでしょうねぇ」
「そうそう。
そして、選ばれているのが・・・
EPUBとPDF書式になるんだろうなぁ・・・」
「でも、EPUBのプロテクトの現状は・・・」
「そうだよ。
でも、普及しているし、既存のハードはほぼ対応している。
携帯電話だろうが、アンドロイド端末だろうか、iPadだろうがね。
日本語EPUBに対応しています。
まぁ、プログラムの中もは.htmlですからね・・・。
薄利多売を狙う中小出版社ならば、はEPUBを検討していいます。
しかし、集中的かつ包括的にEPUBを販売する場所が、海外大手しか無いのも事実だね。
しかし、これは日本語環境に弱い・・・。
これからは出てくるめと思うけれど・・・」
「でも、コピー書籍の反乱は、業界全体が許さないのでは?」
「うん・・・。
許さないだろう・・・。
・・・なぁ。
そして、次に選ばれるフォーマットがPDF書式です」
「アクロバットですね。
アクロバットならば、いろいろなハードでOKですね」
「そうです。
元々、Adobe社のAcrobatはマルチプラットフォームでの使用を前提としていますからね。
それに、そこそこのプロテクトも実装しています」
「EPUBとPDFだけならば、アンドロイド端末がいろいろ出ていますよ。
カッパドキァで売りましょう!!」
「いゃ・・・
アンドロイド端末は・・・。
電池問題を抱えています・・・。
とこに、中華なアンドロイドの電池問題は致命的・・・
国内メーカーのアンドロイド携帯電話ですら、従来の携帯電話と比べたら・・・」
「大丈夫ですよ!!
コンセント繋げて、お家で使ってください!!」
そ、それは・・・
「いゃー・・・
流石にもうそれはダメだろう・・・。
今年の秋~冬商戦には、大手ハードメーカーが、バッチリGoodなタブレットPCを出してくるぞ!!」
きっと出してくるよなぁ・・・
絶対出してくるよなぁ・・・
Windows7なんかが実装されたりするんだろうなぁ・・・
あぁ!!
それは俺が欲しいよぉぉぉぉ・・・。
「うぐぐぐぐぐく・・・
グキャグキャァァァ・・・」
「専務・・・
また、壊れ始めましたね・・・」
「今回の出張は色々辛いことがあったんだろうなぁ・・・」
「という事で、今回のレポートはここまでとさせていただきます。
続きは、次回のお楽しみという事です」