電磁砲44です。
今回は第3種電気主任技術者制度の年2回化とCBT試験方式の採用について少し考察したいと思います。
電気主任技術者制度が始まったのは旧電気事業法制下の1911年(明治44年)で110年を超える歴史を持ちます。電気書院出版の「電気計算」の雑誌を見ると、時々昔の電気主任技術者試験の問題が載っています。
その後、戦後の1965年(昭和40年)に新電気事業法における現在の電気主任技術者試験が開始。1985年に電気技術者試験センターが第3種電気主任技術者試験の指定試験機関となり、1997年(平成9年)に第1種・第2種も電気技術者試験センターが指定試験機関となります。
一方、1995年(平成7年)には6科目2日制の試験が4科目1日制へ改編され、第1種・第2種試験の口述二次試験が廃止となり、筆記二次試験が導入されました。
そして2022年から第3種試験は年2回試験体制となり、2023年からはCBT試験方式が採用となりました。
CBT試験方式が採用されたことにより、試験時間をある程度自分で設定することが可能となりました。どういうことかというと、今年の例で考えると、
(一例として)
7月6日(木) 理論受験
7月8日(土) 法規受験
7月9日(日) 機械受験
7月30日(日) 電力受験
のような受験方法も可能となりました(もちろん、試験センターの受験可能時間にもよります)。得意な科目を前半に受験し、苦手な科目を後半に受験するという戦略も使えるようになりました。また、以前も書きましたが、CBT試験会場は全国約200箇所で、少し大きめの都市であればCBT試験会場があります。そういう意味では試験に対するハードルが下がったといえるでしょう。
さて、CBT試験方式の採用は受験機会を増進させ、受験者数を増やすことを目的として導入されています。電気工事士・電気主任技術者の人手不足が深刻化しているためCBT試験方式を採用し、最終的には合格者を増やすというのが最終目的です。
では、実際にCBT試験方式が採用された結果、受験者数は増加したのでしょうか?
電気技術者試験センターのHPを見てみると、試験実施状況を見ることができます。例えばCBT方式を採用した第1種電気工事士筆記試験の申込者数を見てみましょう。
令和3年度 46,144人
令和4年度 43,059人
令和5年度 38,399人 あんまり増加していませんね、というか減少しています・・・。 次に第3種電気主任技術者の申込者数と合格者数を見てみましょう。 |
申込者数 合格者数
令和3年度 53,685人 4,357人
令和4年度 85,929人 7,307人
令和5年度 36,978人 4,683人(前期のみ)
申込者数・合格者数も増加しており、合格者は約6割強増加しています。これは先ほどの第1種電気工事士試験の推移を踏まえると、年2回試験の影響によるものと思われます。とはいえ、この状況がこのまま続くとも思えません。今は試験制度変更の過渡期で、今後は減少するのではないかと考えています(もっとも合格者数は以前より若干増えることにはなると思います)。過去に(平成7年)試験科目が6科目から4科目へ変更となった際も申込者数・合格者数が増加しましたが、その後減少しています。
経済産業省産業構造審議会電気保安制度ワーキンググループの議事録においても、「人口減少の中、合格者数を大幅に増やすことはCBTや年2回試験だけではちょっと難しいんじゃないかな」という発言も見て取れます。
現在、電気主任技術者はその試験合格者の3割程度しか関連の仕事につかないといわれています。確かにCBTや2回試験により一時合格者数を増やすことはできても、中長期的な人材確保には程遠い感じがします。
そろそろ、この業界や試験制度といったことに関する抜本的な改革が必要な時期なのかもしれませんが、私はこの試験制度で第3種試験に合格し、ボイラー・タービン主任技術者もやっています。本当に改革されるのであるなら嬉しい反面、結構悲しくもあります。
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