久し振りにLUX MQ-36のシミュレーション解析を行い、大型のブロック電解コンデンサを全く変更しないで、どこまで特性改善できるのか検討してみました。オークションではまだ多くの人に人気があるようなので、改善検討結果はそれらの人の役に立つのではないかと思っています。

 

 

以前のシミュレーション解析で、MQ-36の最大の問題点は低周波特性の改善でしたので、その改善方法を説明します。

 

MQ-36が発売されたのは1976年頃でしたので、今のようにシミュレーション解析技術などは全く無い時代でしたので、開発技術者は実機を改造しながら測定を繰り返して最適解を探していったと思われます。

 

MQ-36では出力管の6336Aのグリッド回路に位相補正回路が挿入されていますが、この回路の1MΩの抵抗を変化させてシミュレーションしてみたところ、680kΩ以下まで減少すると、低周波特性が改善されることが判りました。これと並行して、初段の6267のカソードの電解コンデンサを30μFから100μFに増加させて、いままで無理やり低下させていた低周波特性を持ち上げるようにします。

 

これらの変更で周波数特性が‐1dBとなる周波数は、2.18Hzからスペックを満足する1.5Hzにまで改善されます。

 

さらに低周波の20Hzでの歪率を改善し、16Ω負荷で27Wまで出せるようにするには、ドライブ団の6CL6のプレート抵抗値を5KΩから7.5KΩまで増加させ、平衡ドライブ用回路(打消し回路)の抵抗値を1KΩから3.3KΩに変更することで、20Hz 27W時の歪率が大幅に改善できます。

 

これは、平衡ドライブ回路の低周波域の時定数を増加させると共に、6CL6の負荷抵抗の増加によってアンプのトータルゲインを約5dB増加させて負帰還量を増加させ、全周波数での歪率を改善させています。

 

この変更によって1kHzで27W出力時の歪率は0.079%になります。ゲインが-1㏈となる周波数特性は低周波で0.8Hzまで改善しています。20Hz 16Ω負荷時の最大出力は1kHzと同じく27Wで、歪率は0.15%です。

 

アンプの低周波特性を改善して、高周波特性をそのままにすると、音質上のバランスが悪くなるので、同時に高周波特性も高域側に拡大したほうが良いのです。そこで、更に負帰還回路の位相補正回路のコンデンサを200pFから100pFに変更することで、全体の周波数特性は、OTLアンプに相応しい   0.8Hz~300kHz±1dBとなります。

 

 

     改善したMQ-36の周波数特性と位相特性

 

16Ω負荷、20Hz 27W出力時のシミュレーション波形を以下に示します。立ち上がりの第一波はさすがに上部が歪んでいますが、第二波以降はきれいな波形となっています。この波形をSimetrixでフーリエ解析して第5高調波までを加算すると0.15%になります。

 

     16Ω負荷 20Hz  27W出力時の波形

 

  16Ω負荷 20Hz  27W出力波形のフーリエ解析結果

 

オリジナルのMQ-36のシミュレーションでは、16Ω負荷、20Hz では、出力11W時ですでに歪率0.2%でしたので、無歪最大出力が2倍以上に増加したことになります。

 

因みに、8Ω負荷の時はオリジナルのMQ-36は20Hzで6W出力時の歪率は0.35%でしたが、今回の設計変更した回路では出力が2倍の12Wで歪率は0.21%です。