6080 SEPP OTLアンプの大きな課題は低周波の時定数が2つある事によるNFBの安定性悪化問題でした。スタガー比が十分とれていないアンプに大量の負帰環を掛けると低周波でピークが出来てしまい不安定なアンプになってしまいます。そこで以前の対策として、10,000μFの大容量の電解コンデンサを2個外付けしてスタガー比を大きくしてピークを小さく抑える方法を取っていました。

 

最近木村哲氏のサイトを見ていたら、ミニワッターシリーズのアンプでトランジスタ式のOCLアンプを単電源のアダプターで実現していました。これは、抵抗とトランジスタを使って中点電位を作り出して、簡易的に疑似±2電源を作って出力コンデンサを排除したOCLアンプでした。この方法でSEPP OTLアンプの出力段のコンデンサを無くすことが出来るのなら、私の6080 SEPP OTLアンプの低周波の時定数問題も解決できるかもしれないと思いました。

 

早速Simetrixのシミュレーションを開始しました。木村氏の回路はトランジスタを1石使った回路ですので、吐き出しと吸い込みの電流値が同じに出来ない欠点があります。私は純コンプリメンタリーのエミッタフォロア回路、つまり通常のトランジスタ式パワーアンプの出力回路部をそのまま使用します。

Q3のトランジスタのベース、エミッタ間の抵抗値を変えてQ1,Q2の電流値を調整し、R37の抵抗値で出力端子の電位を0ボルトに調整します。

 

       

         6080OCLアンプの疑似±2電源回路

 

上記の回路でシミュレーションした結果、上下のトランジスタに5mA程度の電流を流せば十分に±2電源として機能し、出力段の電解コンデンサを排除出来る事が確認出来ました。

 

6080 SEPP OTLアンプの回路でシュミレーションした結果を以下に示します。10,000μFのコンデンサが無い状態では0.11Hzに3.9㏈程のピークが出来ていましたが、疑似±電源によって低周波でのピークが見事に無くなっています。

 

         6080 SEPP OTLアンプの周波数特性

 

これで長年の課題であった低周波のスタガ比不足による大量NFB時の不安定問題も解決出来る目途がたちました。

 

その後の検討で、追加する疑似電源回路のトランジスタが故障した場合のアンプ出力への影響を調査しました。

 

トランジスタの故障はオープン故障とショート故障の2種類があります。この故障時の影響をSimetrixでシミュレーションした結果、オープン故障の場合は出力端子電圧が数十mV変化するだけで大きな影響が無い事が判りました。しかしながら、上下どちらかのトランジスタがショート故障すると、出力端子には数十VのDC電圧が発生し、スピーカに2A以上の電流が流れる事が判りました。これは絶対に対策する必要があります。

 

普通のトランジスタアンプで使われている方法は出力端子のDC電圧を検知してリレーでスピーカを切り離す保護回路です。その為には、μPC1237のような保護ICを利用するか、トランジスタでディスクリート回路を組む必要があります。色々考えた結果、疑似電源回路のトランジスタの2個のエミッタ抵抗をヒューズ抵抗器にする方法を採用する事にしました。

 

ヒューズ抵抗器はどこで売っているのか、秋月電子通商や千石電商のホームページで探しても見つかりませんでした。更に調べた結果、海神無線でタイヨームとKOA製の1/4Wと1/2Wの2種類のヒューズ抵抗を販売している事が判りました。今度秋葉原に行った時に購入する事にしました。