先に書くと、どうも短編集は苦手だ、ホームズなどは同じ探偵の連作なので、そう云うのはすんなり読み終えれるのだが、短編集やアンソロジーとかは苦手な様だ。が、最近積読本に短編集が大量にある。クリスチアナ・ブランド、テッド・チャン、ケン・リュウ、ハーラン・エリスン、新井素子、有栖川有栖、世界短編傑作集などなど連作なのにブラウン神父も5巻中4巻が未読だ。カーの短編集やクロフツの短編集、アイザック・アシモフのロボットものやミステリーものも・・・ちょっと読んだのや~興味があって買って来たが良いが未着手の物までさまざまだ。基本飽きっぽい移り気な所為かもしれないが、中々はかどらない。辛うじてクリスチアナ・ブランドは読み終われそうな気がするが、遅い。1短編読むのに2,3日掛かる。どうも一作一作の世界観に入るのが下手な様だ。

 さて、ジュンク堂書店(弘前じゃまだ品揃えの良い方な書店だ)で新刊コーナーに本書譜があった。一応、創元と早川の新刊は気にしている。で、本書手に取ってパラっと目次を観たらヴァヴィロン格差市から始まってプロトポリス原型市、グノッソス迷宮市、セレニア月の都、などなどでアルカヌム秘儀市までの36の都市短編が綴られてる様だ。んで、アーシュラ・ル=グインも惚れ込んだ小説と帯にも解説にもあるし厚くも無いので買ってみた。

 1話数ページとすぐ読める、が、摩訶不思議な小説だ、神話の都市的なのから未来的、SF的な都市まで創造と崩壊までが1話に凝縮されている。叙事詩って云うんだろうかファンタジーである。不気味なのもあれば、風刺的なのもあり、ユニークな都市が1話毎にコロコロ変わって行く。じっくり読んだ話なぞはなんどそのイメージで絵でも描きたい気になるから不思議だ、が、短いので調子着くと消化しきれないまま次々と読んで昨夜やっと最終話と最後の解説に辿り着いた。

 作者ギョルゲ・ササルマン。無論初見だ。ルーマニアの作家らしいが書いたのは1960年代ルーマニアの文化革命的世情に見舞われ、最初の出版は検閲や規制に阻まれ大幅にカットされての出版だったらしい。全版が出たのはフランス語訳版が最初だった様で、その後スペイン語訳など他国で広まって行って、スペイン語訳版がル=グインに送られて英語訳に及んだようだ、で、日本語訳となった様だが2013年の初稿に近い版を使ったらしい。ササルマンは建築系の学校を出てそちら方面で活躍したが現在はドイツに居て文筆業が少し復活した様だが、他には専門書が多いのか翻訳は見当たらない。ま、どちらにしても不思議な小説であった。短いので完読できたのだろうが、短い作毎に異世界が広がるのはなかなか読書体験だった(´・ω・`)。