創元で一応カーの新訳をコツコツ出してくれてるのが嬉しい。やはりクラシックミステリーの中ではカーが一番好きだ。名作となってるものや新訳で出てるものは読み継いでるが、最近入手困難のカーの小説はまだまだ多くある。早く新訳でないかと首を長くして待って居る。2月にも新訳出てたが、これは所有してて完読済みの「連続殺人事件」の新訳「連続自殺事件」だったので買って無い。今作は先月末に出て即購入したのだがマーダーボットシリーズにうつつを抜かしてたので、ページを捲るのが遅くなった。で、読み出したらやはり止まらない今朝の明け方まで読みふけってしまった。

 原題は「The Man Who Could Not Shudder」早川のポケミスで1959年に出てた時は「震えない男」だったが創元では「幽霊屋敷」で出てたと後ろの解説に書いてあった。本国では1940年の作で第二次世界大戦が始まってるキナ臭い時期に書かれているが設定は戦争前の時期で作中にも戦争直前のきな臭さが漂って入る。

 フェル博士シリーズの一作で「曲がった蝶番」や「緑のカプセルの謎」のエリオット警部も出て来るがロバート・モリソンの一人称で描かれる。最初にクリスティーの「アクロイド殺害事件」に触れてるとの注意書きがあり、ちょっと身構えてしまう。かつて老執事が奇怪な死を遂げた〝幽霊屋敷〟ことロングウッド・ハウス。イングランド東部の歴史あるその屋敷を購入した男マーティン・クラークが開いた幽霊パーティーの最中、不可解極まりない殺人事件が勃発した! 現場に居合わせた被害者の妻がこう叫ぶ。「銃を手にした人は誰もいなかった。銃が勝手に壁からジャンプして、空中でとまって、夫を撃ったの」。銃声で二つある窓の一つには庭師が駆け付けもう一つにも別の男が覗いていて入り口の所には家政婦が居て状況的に夫人が犯人で無ければカーお得意の密室である。翌日早々謎の電報で呼び出されたフェル博士とエリオット警部がやって来る。登場人物は招待客だけなのでこんがらがり難い。語り部とフィアンセは除外できそうで、早々に一番怪しいのは・・・。直接的なトリックは、ちょっとアレだが、動機トリックが古典的ミステリーの王道をさらりと粉してる。エラリー・クイーンやクリスティー、横溝正史も使った有名なトリックだ。更にニヤリとする逆転を仕掛けてるのもカーらしい(*^▽^*)ノいやぁ~なかなか面白いミステリーだった。こんな埋もれたミステリーでもきらりと光るんでカーは辞められない。まだ未読再版無いものが多々あるので新訳に期待したい(*^▽^*)。