『ヘンリー』
1986年 アメリカ
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 ジョン・マクノートン
脚本 リチャード・ファイア
撮影 チャーリー・リバーマン
音楽 ロバート・マクノートン/ケン・ヘイル/スティーブン・A・ジョーンズ
出演 マイケル・ルーカー/トム・トウルズ/トレーシー・アーノルド/カム・ヘスキン
《解説》
彼はフレディではない、ジェイソンでもない、彼は本物だ
1970~80年代に全米で300人以上を殺害したといわれる伝説の殺人鬼で、「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクターのモデルにもなったといわれるヘンリー・リー・ルーカスの日常を、冷徹な筆致で描いた犯罪スリラー
86年に製作されていたものの、アメリカでも90年に公開されるまでお蔵入りになっていたいわくつきの一作で日本では92年に公開された
《物語》
家に害虫駆除の薬を散布する仕事をするヘンリーはオーティスという同居人と暮らしていたが、彼の妹のベッキーが夫の暴力に耐えかねて逃げ出し、オーティスを頼って現れ、共同生活に加わった
ヘンリーとオーティスは刑務所仲間でヘンリーは14歳の時に自分に女装をさせたり虐待をする娼婦の母親を愛人と共にバットで撲殺した罪で服役していた
ある日の夜、ヘンリーとベッキーはトランプをし、さりげなくベッキーはヘンリーの家族の事を聞いた、ヘンリーは父親と弟の話をした、父親は両足をなくし、弟は骨に障害があって死んだ
ベッキーは父親が嫌いだとヘンリーに話した、性的虐待を受けていたからだ、幸い妊娠はしなかったが母親に話しても信じないふりをされた、知ってたくせに
ベッキーは父親から逃げるために結婚したのに夫から暴力を受ける羽目に、ベッキーはヘンリーに母親を殺したのか聞くと、ヘンリーは刺し殺したと
ベッキーは美容室のシャンプー係として仕事を始めた、そんな妹であるベッキーの体を狙うオーティスはベッキーにキスをしようとするがヘンリーに強く窘められる
仲直りのために飲みに行ったヘンリーとオーティスの2人は娼婦を買い、車の中でセックスをするがヘンリーが娼婦2人を殺してしまう、ヘンリーは人を殺すと胸がスッとする
興奮するオーティスを抑えて言い聞かせた、自分がやるか他人がやるか、ヘンリーは警察に見付かったことのない完全犯罪の連続殺人鬼だ、ヘンリーとオーティスは殺人を重ねるが3人の生活にも終わりが近付いていた
《感想》
おいらがはじめてヘンリー・リー・ルーカスの名前を知ったのはたしか「アメリカン・バイオレンス」ってタイトルのドキュメンタリー映画だったと思います、この作品が凄くていつかDVD化されると信じてもう何十年にもなりますよ
ヘンリー・リー・ルーカスは母親に虐待されて女装をさせられて学校に3年間通わされてました、10歳で飲酒し小学校には5年の頃から行かなくなり、13歳で窃盗で刑務所に入ってます、出所して14歳で初めての殺人を犯します、被害者は17歳の少女、この事件は未解決
20歳で結婚して独立するが母親が新居に訪ねてきて妻に見せたくない思いから外で絞殺、既に死んでいる母親の体に何回もナイフを突き刺した
ヘンリーはあっさり捕まり実刑40年の判決を受けるが模範囚として刑は短縮されて10年で出所、そこからヘンリーの大量殺人の幕は切って落とされ、出所して数時間後には殺人を犯しています
殺す相手は若い女性に限らず、「殺人は呼吸や食事と変わらない」と言い放ったヘンリーは人を殺すのにまったく躊躇することはなかった、殺し方も残虐でまるで楽しんでいるようです
タバコの火を押し付けたりする拷問から指を一本一本ナイフで切り落としていって、相手が失神するとわざわざ正気に戻して拷問、最後には殺します
そしてオーティス・トゥールと出会います、何かと共通点の多い2人は意気投合し、一番合ったのはオーティスも連続殺人鬼だったことです、行動を共にして全米で無差別殺人を繰り返して、6年半で300人以上殺害しています
オーティスの姪のベッキーと恋仲となり内縁関係となるがプラトニックでした、性行為は母親の歪んだ愛と信じていた、性欲が出れば外でセックスをした後に殺せばいいだけ、しかしヘンリーを諭すベッキーが平手打ちをしたことでヘンリーはベッキーをも殺してしまいます、生涯最愛の人を失います
ヘンリーは刑務所でキリスト教に目覚め罪を進んで自白、殺人罪が確定しているのは9件だけで物的証拠があるのは2件のみだった、毒殺以外のありとあらゆる殺人を行ったヘンリーは刑務所内で心臓発作で死亡、64歳でした
ヘンリーが逮捕後に精密検査へかけられると脳の神経系が広範囲に損傷していることがわかった、これは母親の過度の虐待が原因とみられている
本作はヘンリー・リー・ルーカスをモデルとしたホラー映画を製作会社側は期待していたのだが意図したような作品ではなかった為にお蔵入りとなって公開まで4年掛かりました
「羊たちの沈黙」で登場するハンニバル・レクターはヘンリーの影響を受けたと思われます、でもヘンリーはレクターほどの知性はなく、IQ160の連続殺人鬼テッド・バンディなども参考にしたのではないでしょうか?
殺人の現場をビデオで録画して後から楽しんで観るなんて変態的なことまでするんです、そのビデオカメラも店主を殺して手に入れてます
映画の中ではオーティスはベッキーを襲うんです、アメリカって兄妹でも相手が女なら見境なく性の対象となって、しかも暴力で性欲を発散してもいいの?、ベッキーは父親にも性的虐待を受けてたって言うし
ヘンリーを演じるのはマイケル・ルーカーでオーティスを演じるのはトム・トウルズ、ベッキーを演じるのがトレーシー・アーノルドで主にこの3人で映画は進行していきます、監督はジョン・マクノートン
300人以上を殺害、アメリカ犯罪史上最悪の怪物、ヘンリー・リー・ルーカスの異常な日常を、凍るような冷たさで綴る それが『ヘンリー』です。
スラッシャー映画のような派手なホラー映画ではなく、淡々と見せるサイコサスペンスなので地味ではあります。
更に過激な続・裏237号室の『ヘンリー』のレビューはこちらです。

















