『リップスティック』
1976年 アメリカ
《スタッフ&キャスト》
監督 ラモント・ジョンソン
脚本 デイヴィッド・レイフィール
撮影 ビル・バトラー
音楽 ミッシェル・ポルナレフ
出演 マーゴ・ヘミングウェイ/クリス・サランドン/マリエル・ヘミングウェイ/ジョン・ベネット・ペリー/アン・バンクロフト
《解説》
心と身体に残された忘れることのできない「痛み」…
アーネスト・ヘミングウェイの孫で女優のマーゴ・ヘミングウェイとマリエル・ヘミングウェイが姉妹共演による、センセーショナルな社会派ドラマ
屈折した人間がみせる狂気、暴力まみれのショッキングなレイプシーン、弱者が正当に守られない方の矛盾…、これら社会問題に鋭く斬り込み、劇場公開当時に映画館で拍手が沸き起こった衝撃のエンディングに至るまで、息つく間もない緊迫の展開が続く!
《物語》
全米一セクシーなモデルといわれるクリス・マコーミックは大胆なポーズでカメラの前に立っていた、そんなクリスの撮影に付き添っているのは14歳の妹キャシー
事故で両親を失ってからクリスがキャシーの母親代わり、この日キャシーはクリスに自分の大好きな学校の音楽教師スチュアートを紹介しようと撮影現場に招待した
だが忙しいクリスはスチュアートの作曲した音楽を聴く暇がなく後日に約束をした、次の日にスチュアートがクリスのマンションを訪ねた、そこでスチュアートは作曲した音楽を聴かせた
エレクトロニックに自然の音をシンセサイザーで加工する異様な音楽を鳴らし始めた、その独特の音楽に困惑するクリスだったがそこに恋人のスチーブから電話、クリスは中座してベッドルームで話し始めた
自分の存在を無視されてスチュアートは豹変、電話を切ったクリスの髪を掴み引きずり回し、壁に打ち付け、服を引き裂き、真っ赤な口紅を塗りたくった
スチュアートはクリスの服を全て脱がし、ベッドの上に裸のクリスをうつ伏せにして手足を大の字に縛り付け、後ろから執拗に凌辱した
学校から戻ったキャシーが見たものはベッドでセックスをする男女の姿、それが強姦だと知ったのはスチュアートがマンションを出て行った後にクリスの傷ついた姿を見たあと、警察を呼びクリスの証言からスチュアートは即逮捕された
クリスとキャシーは兄マーチンの家に身を寄せた、全てを知ったマーチンは有能な女性検事カーラの事務所を訪ねた、カーラはアメリカでは強姦事件の裁判で被害者が勝つ見込みは低いがクリスは告訴を取り下げなかった
事件は裁判となり、カーラの予想通りスチュアート側の弁護士は屈辱的な質問をクリスに投げ掛け、不当とも言える手段でクリスに罪を被せ、スチュアートを無罪にしてしまった
クリスは心に深い傷を負い、モデルの撮影も上手くいかない、心の傷を癒す為、キャシーとコロラドにハンティングに出掛けようとライフルを車に積み、最後の仕事をしていた
その頃、クリスの撮影に飽きたキャシーは撮影ビル内を散歩、上の階でスチュアートがモダンダンスの音楽を作っていた、言葉巧みにキャシーを誘い込むが、逃げ出したキャシーを襲い姉と同じようにスチュアートに凌辱されてしまった
その後、傷だらけのキャシーを見たクリスは怒りに燃え、車からライフルを持ち出して逃げるスチュアートの車に発砲、胸と股間にも撃ち込みクリスは逮捕された、裁判での判決は…、無罪だった
《感想》
当時アメリカで社会問題化しているレイプをテーマに、抑圧された現代社会に潜む暴力を描いています、本当に卑怯な犯罪で本作の中でも加害者が無罪となっちゃうんです
これを考えると性犯罪という犯罪が減らないですよね、被害者が勇気を振り絞って裁判を起こしても法廷ではセカンドレイプと呼ばれる弁護士による質問による凌辱が始まります
被害者が誘ったんじゃないか?とか、酷い質問が繰り返されて挙句には絶頂に達したとか肛門性交や多淫などと言われ辱めを衆人観衆の中で受けます
こんなことを普通の女性が耐えられますか?しかも目の前に自分を凌辱した犯人が薄ら笑いを浮かべてこっちを見てるなんて耐えられませんよ
弁護士ももし自分の妻や恋人や娘がそんな目に遭っても加害者を弁護出来るのでしょうか?、加害者を助けて被害者を更に貶める事を出来るものなのでしょうか?
泣き寝入りする被害者がいるのも仕方ないですよね 本作では戦う事を選んだ主人公クリスを演じたのがアーネスト・ヘミングウェイの孫のマーゴ・ヘミングウェイ
でも本作はレイプシーンは2回です、ヌードシーンはあるんですけど女性客に配慮したのか抑え目です、あるいはカットされたバージョンなのかもしれません、スチュアートを演じるのはクリス・サランドン
アメリカでは過激なシーンをカットされたバージョンが公開されそれがソフト化されて日本でもソフト化という流れかもしれません、日本の劇場公開版はノーカット版でDVDはカット版という事がたまにあります
でも男を部屋に入れてシャワーを浴びたり薄着の部屋着でウロウロしたりと自分で危険を呼び込んでるような感じですよね、やっぱ女性は自分の身は自分で守らなきゃね、油断はダメよ
ラストでは被害者が加害者を射殺するということで終わります、その後の裁判では無罪でアメリカの劇場では拍手が起こったとか、いかにもアメリカ的ですよね
おいらとしては捕まえて司法に委ねるべきと思ってしまいましたが甘いですか?、もしおいらが女性で被害者なら殺しても殺しても気が済まないでしょう、男には分からない犯罪だと思います
セクハラやパワハラもそうですが許されません、それより酷い犯罪が凌辱ですが、被害者は殺されるかもと思って抵抗を止めて嵐が過ぎるのを待つだけ、それを同意とみなされたりするのは凌辱の上に屈辱です
命を守る為に抵抗を止めてそれを同意や誘ったとか絶頂を得たとか言われるのは心外ですね、逆に言えば無理矢理に絶頂まで導かれることもあるはず…、これぐらいにしときましょう、ちょっと言い過ぎましたね
おいらが子供の頃はこんな作品が普通に午後9時からテレビで放送されてました、今なら考えられませんね、これも時代ですね
レイプ被害と戦う女性を描く、現代社会を蝕む性の暴力に挑んだセンセーショナルな作品 それが『リップスティック』です。
リップスティックとは口紅のことなんですけど主人公は口紅のCMのモデルをしてるんです、それが仇となったりします。
更に過激な続・裏237号室の『リップスティック』のレビューはこちらです。