『ブルード 怒りのメタファー』
1979年 カナダ
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 デビッド・クローネンバーグ
撮影 マーク・アーウィン
音楽 ハワード・ショア
出演 オリヴァー・リード/サマンサ・エッガー/アート・ヒンドル/シンディ・ハインズ/スーザン・ホーガン/ヘンリー・ベックマン/ナーラ・フィッツジェラルド
《解説》
しのび寄るブルードの影、化身は怒りとともに増殖する
「スキャナーズ」の前々年に製作され、クローネンバーグ監督の真骨頂“医学による人体の変貌”がテーマの本作は鋭い社会観察力、斬新でオリジナリティ溢れる映像表現が光り、ファンの間で熱狂的支持を受け続けている
夫婦間や親子間の亀裂というテーマとともに、驚愕の科学実験が生んだ凄惨な恐怖を描いたホラー、イギリスの名優オリオヴァー・リードとサマンサ・エッガーが円熟した演技で恐怖感を最高潮に盛り立てる
《物語》
ラグラン医師の治療が実演され、精神疾患を患う患者マイクの治療を行っている、フランク・カーベスはラグランの実演を見た後に5歳の娘キャンディスを迎えに行き、お風呂に入れると背中に複数の傷跡があった
すぐにフランクはラグランに会いに行き、入院させている妻ノーラが虐待したと訴えた、ノーラの治療の為にキャンディスとの面会だけは許可していたのだ
しかしラグランはフランクをノーラに会わせる事は出来ないと拒否、フランクはラグランの治療はインチキだと弁護士に訴えるも法律は母親の味方だと
フランクは仕事の間、義母のジュリアナにキャンディスを預けるがジュリアナはノーラからキャンディスを虐待したと疑いを掛けられているとフランクに言う
その頃ラグランはノーラにキャンディスを虐待したかを尋ねていた、ノーラはそんな事はしない、でも虐待をする母親もいる、それは自分の母ジュリアナでクソ女だと
キャンディスとジュリアナは昔の写真を見てその時の話しをしていると、台所で物音がしてジュリアナが様子を見に行くと、赤い服を着た小さな人にハンマーで殴り殺されてしまう
フランクは警察からの連絡を受けて駆け付け、キャンディスを連れて帰ろうとするが、キャンディスはその現場を見たにも関わらずどこか冷静で医者はそれは危険な症状で今のうちに対処すべきだと説明
フランクは弁護士に相談してラグランを訴える為にもジャンの協力を得る、ジャンはラグランに治療をしてもらうが、首からリンパ肉腫が悪化、自分の体が自分に逆らうようにだ
ラグランの治療は人間の憎悪を肉体的に具現化させ、ノーラの体に腫瘍が出来、その中から奇怪な彼女の憎悪の化身が現れる
《感想》
デビッド・クローネンバーグ監督の科学実験が生んだおぞましい恐怖を描いた作品です、「シーバース」や「ラビッド」でも描かれてきたクローネンバーグの恐怖の原点です
この時、クローネンバーグは最初の妻との間で娘の親権を争っており、その影響がこの作品には色濃く出ているように思えましたね
子供の時に本作を観て、当時はちょっと分からなかったです、クローネンバーグ作品の中でも難解だったと思います、大人になって観たのですがやっぱよく分からなかった
まあそれがクローネンバーグなのですけどね、憎悪を肉体に具現化させて大きな腫瘍を作ってそこから子供のような化身が産まれてるのです
オリヴァー・リード演じるラグラン医師は精神科医なのですが、患者と対面で治療をするのですが患者にはラグランではなくて他の人に見えているんです
なのでノーラはラグランの患者なのですが、治療の時はノーラには娘のキャンディスだったり母親のジュリアナに見えたりするんです、ノーラを演じるのはサマンサ・エッガー
ノーラの夫のフランクを演じるのはアート・ヒンドルで、ラグランに治療を頼んだものの成果は出ていないようでしかもノーラには会わせてもらえず弁護士に相談して訴えようかと
フランクが調べてノーラはラグランの病院では女王蜂と呼ばれているのです、ラグランにとってはノーラは特別である意味実験材料なのですがノーラは暴走
やっとの思いでノーラに会うと彼女は憎悪を感じた相手に対して、体に腫瘍を作ってその中に子供を育てているのです、それが憎悪を感じた相手を殺すのです
ノーラが服を捲って体を見せた時に大きな腫瘍があってそれを噛み切って中から子供を出すシーンはトラウマものの気持ち悪いシーンでしたよ、さすが内臓が好きなクローネンバーグですね
悪夢の内臓感覚が今、恐怖の限界を超えた それが『ブルード 怒りのメタファー』です。
ノーラが作った子供たちが大勢になってそれがみんな性器のない歯のないおかしな子供なんです。
更に過激な続・裏237号室の『ブルード 怒りのメタファー』のレビューはこちらです。