『顔のない眼』
1959年 フランス・イタリア
《スタッフ&キャスト》
監督 ジョルジュ・フランジュ
原作・脚本 ジャン・ルドン
脚本 ボワロー・ナルスジャック/クロード・ソーテ
撮影 ユージン・シュフタン
音楽 モーリス・ジャール
出演 ピエール・ブラッスール/アリダ・バリ/エディット・スコブ/ジュリエット・メニエル/ベアトリス・アルタリバ/アレクサンダー・リニョオ
《解説》
美しくて恐ろしいホラー映画の逸品
製作年度の割に克明な手術シーンなど、直接的なグロテスク描写もさることながら、白塗りの仮面をつけた娘が館を歩くシーンなど、白黒画面による不気味な雰囲気造りが印象的
「狂ったメス」や「ショック療法」など外科手術とホラーを融合させたジャンルの始祖的作品、恐怖感を雰囲気の中から出そうとするジョルジュ・フランジュ監督は、映像の誌的なムードを強調して、芸術的なホラーに昇華している
《物語》
人類の最大の夢、それは肉体の若返りである、すなわち異種移植の実現だ、人体から組織もしくは器官を取り出す、それを別の人体に移植する
今までは移植する人間が生物学的に同質でないと移植しても腐敗してしまう、我々は組織や器官を生物学的に変える事を考えた、障害となる抗体を破壊すればよい、とジェヌシェ教授は発表した
ジェヌシェ教授の娘クリスチアヌは交通事故で顔に大火傷を負い失踪してしまった、水死体が発見されてジェヌシュ教授が警察に呼ばれた
死体が川に落ちた推定時刻とクリスチアヌの失踪が一致、特徴も一致、顔は潰れて眼だけが無傷、ジェヌシェ教授は娘だと断定、クリスチアヌの葬儀も終えて秘書のルイーズと悲しみに暮れる
しかしそれは偽装した死でクリスチアヌは森の中にあるジェヌシェ教授の屋敷で仮面を着けて人目を避け、父ジェヌシェと秘書のルイーズと暮らしている
自分の無謀運転でクリスチアヌの顔に大火傷を負わせた事で娘の顔を治そうと他の女性の顔をクリスチアヌの顔に移植するという行為だった
ルイーズは若い女を言葉巧みに誘い薬で眠らせた後に女性の顔を剝がしてクリスチアヌの顔に移植をし、クリスチアヌは美しい顔となった
しかしそれも数日で顔は剥がれ落ちてしまい、元の醜い顔になってしまう、クリスチアヌは父のその行為に気付き嫌悪、クリスチアヌは父は自分の為にしているのか自分の研究の為にしているのか
警察は女性の連続行方不明事件の捜査の為にポーレットを使っておとり捜査を開始、ポーレットはジェヌシェ教授が誘拐し、手術室に運び込まれる、そこでクリスチアヌが取った行動は
《感想》
子供の頃から観たかった作品なのですがなかなか観る機会がなくてあれから数十年が経ちました、モノクロ画面が耽美な雰囲気を醸し出してくれてました
仮面を着けた女性のポスターがすごく印象的で、それがすごく怖かったのを憶えています、その仮面の女性に他の女性の顔を取り付けるなんてね
クリスチアヌを演じるのはエディット・スコブで可愛らしい顔をしているのにほとんどは仮面で隠されてます、しかも仮面なのに哀愁を感じます
父親のジェヌシェ教授は若返りの研究をしているのですが、それがまさか自分の娘の為に使う事になるとは思ってもいなかった事でしょう
しかも娘は亡くなった事にして葬儀までして、実は森の中にある屋敷でそっと暮らさせているのです、クリスチアヌには婚約者もいてクリスチアヌは彼に電話をしては何も言わずに声だけ聞いているのです
ジェヌシェ教授は秘書のルイーズが若い女性を誘い、森の中にある屋敷に連れ込んでジェヌシェ教授と共に殺害して顔の皮膚を切り取ってクリスチアヌに移植するのです
しかしその移植は失敗、なので誘拐しては顔の皮膚を切り取って殺害して死体を捨てる作業を繰り返すのです、これはもう娘の為というより自己満足なのでは
クリスチアヌとしてもそれが犯罪を犯して手に入れている皮膚だと気付いて自責の念を感じてしまいます、彼女が心を許せるのは犬だけなのです
警察も解決しない事件に手を焼いて、不良少女のポーレットと取引きしておとり捜査を開始、ポーレットはジェヌシェ教授に捕らえられ、クリスチアヌも決意するのです
この独特の雰囲気は何か不安に感じさせるもので、ジョルジュ・フランジュ監督はこのカルト作品を世に出して色んな作品に影響を与えていますね
美と恐怖が混ざり合うフレンチホラー それが『顔のない眼』です。
ホラー作品なのですが、何か物悲しい雰囲気でした。