地獄(1960) | 続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

タカによるA級からZ級映画まで、榮級は絢爛豪華な超大作、美級は美しい女優や映像美、死級は禍々しい阿鼻叫喚、出級はあのスターの意外な出演作、イイ級は耽美なエロティシズム、Z級は史上最悪なクソ映画、その全てをレビューと少しの競馬予想と日常の出来事

 

 

 

 

 

『地獄』

 

 

 

 

 

1960年 日本

 

 

 

 

 

《スタッフ&キャスト》

 

 

監督・脚本 中川信夫

 

脚本 宮川一郎

 

撮影 森田守

 

音楽 渡辺宙明

 

 

 

出演 天知茂/沼田曜一/中村虎彦/宮田文子/三ツ矢歌子/林寛/徳大寺君枝/山下明子/大友純/大谷友彦/宮浩一/新宮寺寛/泉田洋志/津路清子/小野彰子/石川冷/山川朔太郎

 

 

 

 

 

《解説》

 

 

照魔鏡に写し出された前世の悪行!全人類の欲望と罪を暴く恐怖の世界!

 

中川信夫が前年に監督した「東海道四谷怪談」と共に日本怪奇映画における最高傑作、前半部では現実世界での地獄を、後半部では死後の地獄を大胆に提示しながら、人間の業と魂の救済を描いている

 

中川信夫・宮川一郎の共同脚本を、「女死刑囚の脱獄」の中川信夫が監督したもので、死後の世界として想定されている地獄を、幻想的に描いたスペクタクル映画

 

 

 

 

 

《物語》

 

 

仏教系の大学に通う清水四郎、彼には同級生の田村が不気味な笑みを浮かべて彼に付きまとっている、四郎はこの田村から逃げ出す事が出来ないでいた

 

 

昨夜、四郎は幸福の絶頂にいた、恩師の矢島教授の一人娘の幸子と婚約したのだ、そこに田村が現れて四郎を送ると言い、その帰り道で田村の運転する車は志賀というヤクザをひき逃げして殺してしまう

 

 

四郎は自首しようと田村に言うが田村はまっぴらごめんだと聞く耳を持たない、その頃、志賀の母やすと情婦の洋子は復讐を計画をする

 

 

四郎は罪の意識に苛まれて幸子に相談、2人は警察へタクシーで向かうがタクシーが事故を起こして幸子は亡くなってしまった、矢島の妻芙美に罵られて酒に溺れる四郎

 

 

バーで知り合った洋子と一夜を過ごしたが、洋子は四郎こそが志賀を殺したひき逃げ犯だとピンときた、その夜も会う約束をしたが四郎は母が危篤と聞いて実家へと帰ってしまう

 

そこには父の剛造の幼なじみの画家の谷口円斎と娘で幸子そっくりなサチ子がおり、サチ子と恋に落ちる四郎だったがそこに田村が現れた、すると母の容態が悪化して死亡

 

 

剛造の経営する老人ホーム天上園の十周年記念パーティが行われる、そこに現れた洋子は吊り橋で会おうと約束して吊り橋へ、しかしそこで良い子は足を踏み外して落下、そこに現れた田村ともみ合いになり田村も落下してしまう

 

 

その頃、天上園では集団食中毒が発生し、入所老人たちが全員死亡、更に志賀の母やすが酒に毒を盛り四郎の剛造も全員が亡くなってしまう

 

 

地獄へ落ちる四郎が見たものは幸子の霊と彼女が四郎の子を身籠っていた事や、その子も地獄へ落ちる事が告げられる、四郎は我が子を捜して八大地獄を彷徨うのだった

 

 

 

 

 

 

《感想》

 

 

おいらが子供の頃に観た邦画で一番トラウマとなった作品です、それぐらい強烈なインパクトでしたね、それに視覚的なインパクトも強くて地獄のイメージは強烈でした

 

 

主人公の清水四郎を演じるのは天知茂で、中川信夫監督作品常連で、晩年はテレビの2時間ドラマの土曜ワイド劇場で明智小五郎を演じていたのを鮮明に憶えています

 

 

四郎には田村という同級生がいるのですがこの男が不気味で四郎はこの田村から付きまとわれていて縁を切る事が出来ません、それに田村は何でもお見通しな感じなんです

 

 

田村はヤクザをひき逃げしても道を変えた四郎のせいだと言って知らんぷりなんです、新聞でも事件の記事を読んで手掛かりなしと知って笑みを浮かべます

 

しかし責任を感じた四郎は婚約者の幸子に相談、幸子は父親に相談しようと2人はそのままタクシーで警察に行くのですがタクシーが一瞬田村に変わって事故となるんです、それで幸子は亡くなるのです

 

幸子を演じるのは三ツ谷歌子で可憐で才女の幸子を演じています、やはりこちらも晩年はテレビの2時間ドラマを主に活躍の場となっていたようです、それにサチ子との二役です

 

 

これを皮切りに四郎の周りの人物はみんな死んでしまいます、それは四郎を恨む洋子ややす、それに私利私欲にかられた父親の剛造やその仲間もです

 

そのみんなが地獄に落ちて閻魔大王の責めを受けるのです、この地獄のビジュアルが強烈で衝撃的でしたね、地獄には幸子がいて四郎の子を身籠っていたと告白して四郎はその子を捜し回ります

 

 

サチ子と四郎は結ばれそうになるのですが、四郎の母親は四郎は谷口円斎の息子だと告白、その昔に谷口は彼女を剛造に取られていたんです、その時の子供が四郎だったんです、四郎とサチ子は兄妹と判明

 

 

剛造は私利私欲で食中毒を出して老人を大勢死なせた事で皮剥ぎの刑となるんです、これが強烈でね、この映像がトラウマでした、それに八大地獄が展開されるのです

 

 

殺生で落ちるのが等活地獄で体を切り刻まれ、裂かれ、粉砕されるなどを500年、人間界の時間にすると1兆6653億1250万年に渡って苦しみを受けます

 

 

殺生や盗みを重ねた者は黒縄地獄に落ちます、苦しみは等活地獄の10倍で13兆3225億年責められます、それに邪淫を加えた衆合地獄は更に10倍の苦しみで106兆5800億年苦しみます

 

 

更に飲酒を加えた叫喚地獄は更に10倍の苦しみで大釜で煮られて叫喚し蛆虫に体を食べられます、それが852兆6400億年続きます、更に妄後(うそ)を加えた大叫喚地獄は更に10倍の苦しみで6821兆1200億年苦しみます

 

 

邪見を加えた焦熱地獄は突き刺されて炎で何度も焼かれ更に10倍の苦しみで5京4568兆9600億年苦しみます、更に10倍の苦しみの大焦熱地獄は43京6551兆6800億年苦しみます

 

 

そして阿鼻地獄/無間地獄は父母・聖者殺害を加えた地獄の最下層に位置し、大阿鼻地獄の1000倍の苦しみを受け、これまでの7つの地獄もこの無間地獄に比べれば幸せと思うほどです、349京2413兆4400億年、あるいは682京1120兆年とも言われています

 

 

みんなこの地獄に落ちるのです、これを知ると地獄には落ちたくないですよね、悪事は働けませんよ、この地獄の中で四郎は自分の子を捜し求めるのです、まさに地獄ですね

 

 

 

 

 

 

地獄はこわいぞ!阿鼻叫喚の責苦に喘ぐ死後の刑罰! それが『地獄』です。

 

 

 

 

 

邦画ではこの作品が恐怖映画としては最高峰だとおいらは思ってます、それくらいのトラウマです。