『ファニーゲーム』
1997年 オーストリア
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 ミヒャエル・ハネケ
撮影 ジュアゲン・ジュア
音楽 G.F.ヘンデル/ピエトロ・マスカーニ/W.A.モーツァルト/ジョン・ゾーン
出演 スザンネ・ローター/ウルリヒ・ミューエ/フランク・ギーリング/アルノ・フリッシュ
《解説》
かつてここまで救われない映画が存在しただろうか?映画史上最も後味が悪い快感が観る者に襲いかかる!
現代映画史において語らずにいられない巨匠ミヒャエル・ハネケ、2001年カンヌ国際映画祭において「ピアニスト」で審査員特別賞を、「隠された記憶」で監督賞を手にした、本作は彼の金字塔的な作品と称されている
1997年カンヌ出品時、あまりに衝撃的な展開に途中で席を立つ人が続出、上映を観た人々から口コミが広がり、斬新なスタイルとショッキングなテーマがカンヌ中の話題をさらった
《物語》
穏やかなある夏の午後、ジョーバー一家はバカンスを過ごす為に車で湖の辺りの別荘へ向かう、運転席に夫ゲオルグ、助手席には妻のアナ、後部座席には息子のショルシと愛犬のロルフィー、まさに幸せな家族を絵に書いたようだった
途中で一家は別荘の隣人ベーリンガー一家と挨拶を交わす、ベリンガー一家の横には見知らぬ2人の若者が立っていた、その後に別荘で荷物を解き、ゲオルグとショルシは明日のボートセーリングの準備を始め、アナはキッチンで夕食の支度にかかる
そこにペーターと名乗る若者が訪ねてくる、彼はベリンガー家の客人で卵を分けて欲しいと申し出る、キッチンに入ったペーターは用意してもらった卵を割ったり、アナの携帯電話を水の中の落としたりとアナを苛つかせる
そこにパウルというもう1人の若者がやって来る、2人はアナに横柄な態度を取り、再び卵をくれと迫り、その厚かましさに不愉快なアナは2人に出て行くよう命じるが彼らは意に介さない
ゲオルグが口論の場に戻ってくる、アナは動揺していてゲオルグが去るように言うが彼らは拒み、更に汚い言葉で脅しにかかる、ゲオルグが平手打ちをするとパウルがゴルフクラブでゲオルグの膝を打ち砕く
この瞬間、ショーバー一家はパウルとペーターの操るゲームの不運な参加者となってしまった
その後、別荘の隣人のゲルタとロバートが訪ねてくるが、パウルは何も知らないゲルタとロバートに自己紹介をして、何事も悟られる事はなかった
夜になりお互いにもっと知り合おうとパウルとペーターは一家をリビングに集める、ゲオルグが2人に目的は何かと聞くとパウルは屁理屈をこねるだけで一向に話しは進まない
パウルは一家に賭けを迫る、「明日の朝9時までに生きているか死んでいるか」その理不尽な賭けをショーバー一家は無理矢理に参加させられる事になる
《感想》
オープニングから車の中でクラシックを聴いているような平和な家族なのですが、それが突然ハードなロックに変わるんです、いきなりのイメージがひっくり返されたようでした
キッチンにいるアナにペーターがやって来るシーンも凄くイライラさせられます、隣のベリンガーさんに頼まれて卵を分けて欲しいとね、アナは快く分けてあげるのですがそれを落として割るんです
また欲しいと言うので用意をしているとペーターが電話をキッチンで水没させてしまうんです、アナはこの時点でイライラが爆発しそうなんです、観ているこっちもイライラします
犬のロルフィーがいるのを知って現れたパウルがゴルフクラブを見て試し打ちがしたいとクラブを持って外へ、その後にアナはパウルと外を歩いて車の中にロルフィーの死体を見付けるんです
アナを演じるのはスザンネ・ローターで肩の出ているワンピースで如何にも避暑地に来ましたって感じだったのですが、こんな被害者となるなんて数時間前までとは一転してますもんね
苛立ちを隠せないアナを見てゲオルグが間に入るのですが失礼な文言の2人にビンタをした事でゴルフクラブで膝を割られるんです、そこからこの一家を支配し始めるんです
このパウルとペーターの目的はさっぱり分かりません、金銭目的でもなく恨みでもありません、強いて言えば暇つぶしだけのようにも見えます、暇つぶしで一家を蹂躙とはね
パウルは太ったペーターを罵ってアナを見習えと、鍛えたボディは脂肪がないと、アナの体の事を言い始めるんです、子供には見せないとショルシの頭に布を被せて脱ぐようにゲオルグに言わせるんです
アナは涙を流しながらワンピースを脱いで下着も脱ぎます、贅肉のない体を見てパウルは服を着るように言うんです、この時のゲオルグの心境はどんなだったでしょうね
ゲオルグを演じるのがウルリヒ・ミューエで本作で共演後にスザンネ・ローターと結婚、しかし10年後に癌で亡くなり、その5年後にスザンネ・ローターも亡くなっています、どちらも50代での他界でした
監督のミヒャエル・ハネケはハリウッド産の映画が暴力に溢れている事に警鐘を鳴らす為に本作を製作したそうです、暴力を観たいのならコレでも観なって感じでしょうか
ショックのあまり各界で賛否両論を巻き起こした衝撃の問題作! それが『ファニーゲーム』です。
結局のところ一番恐ろしいのは人間って事ですね、あまり語るのも気分が悪い作品です。