『続・荒野の用心棒』
1966年 イタリア・スペイン
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 セルジオ・コルブッチ
撮影 エンツォ・バルボーニ
音楽 ルイス・エンリケス・バカロフ
出演 フランコ・ネロ/ロレダナ・ヌシアック/エドゥアルド・ファヤルド/ホセ・ボダロ/ジミー・ダグラス/アンヘル・アルバレス
《解説》
泥まみれのヒーロー〈ジャンゴ〉映画の記念すべき第1作
マカロニ・ウェスタンの名匠セルジオ・コルブッチが手掛けた傑作西部劇、大袈裟なストーリー、やたら耳に残るテーマ曲、イタリアお得意の残酷描写など、これぞマカロニ・ウェスタンの教科書的作品
フランコ・ネロ演じる陰鬱で神秘的な雰囲気をまとったジャンゴの姿は強烈な印象を残し、マカロニ・ウェスタンの伝説的ヒーローとして後世に語り継がれることになった
《物語》
棺桶を引きずった男が泥だらけの荒野を歩いている、吊り橋の前で1人の女がメキシコ人たちによって引きずり出され、木に縛りつけられて、あばずれと罵られて鞭打ちされるのを目撃
数回鞭打ちされたところでメキシコ人たちは一瞬で射殺されてしまう、赤いスカーフを巻いたアメリカ南軍の男たちが現れた、それは女を救ったわけでなく、アメリカからメキシコに寝返った女を処刑しようと来たのだ
木で十字架を組んで火あぶりにしようとするが棺桶を引きずった男が早撃ちで全員を射殺、男はジャンゴと名乗り元北軍の流れ者、助けられた女はメキシコとアメリカのハーフでマリア
ジャンゴはマリアを連れて町へとやって来た、酒場を兼ねる宿屋に入ると主人のナタニエレはマリアを泊めようとしない、ジャンゴは酒場の女に金を渡して彼女の部屋でマリアを休ませる
食事をするジャンゴにナタニエレはメキシコ人のウーゴ将軍とアメリカ南軍のジャクソン少佐が権力争いをしていて町はゴーストタウン、マリアはジャクソンの女だったが人種差別主義者でウーゴに逃げるもそこも去り、マリアは双方から裏切り者扱いされている疫病神だと
そこにジャクソン一味が現れて戦争は終わっていない、北軍は全員殺すというジャクソンだったがジャンゴの早撃ちで部下を全員射殺、ジャンゴはジャクソンだけを生かして帰す
次の日の朝にジャクソンは40人の部下を連れてやって来るがジャンゴは棺桶から取り出した機関銃で殲滅、ジャクソンは泥まみれとなるが逃がしてやる
ナタニエレの店にウーゴ将軍率いるメキシコ人たちが現れ、ウーゴはジャンゴとの再会に大喜び、かつてジャンゴに脱走させてもらった恩があったからだ
資金がなくメキシコに帰れないウーゴらにジャンゴはある計画を持ち掛ける、メキシコ政府軍のチャリバ砦に黄金が集められ、それを奪って機関銃購入の資金にしてそれでメキシコに革命を起こそうと計画するのだが…
《感想》
“続”と付いてはいるのですが、「荒野の用心棒」とは関係のない作品なのですが、そのプロットは似ています、ですから本作から観ても何の問題もないです
マカロニ・ウェスタンが生んだ最大のヒーローと言われるジャンゴの原点である本作、イタリアで1966年4月に封切られたのを皮切りにヨーロッパで予想を上回る大ヒット
このジャンゴを演じるのがフランコ・ネロで商業的に大ヒットとなって出世作となりました、監督のセルジオ・コルブッチにとっても出世作となりその後はマカロニ・ウェスタンを量産しています
棺桶を引きずる凄腕ガンマンの主人公のジャンゴのインパクトは強烈で、あまりに熱狂ぶりから非公式の続編が勝手に作られてしまい、イタリア産の西部劇が30本以上作られているそうです
オープニングで娼婦のマリアが鞭打ちされるリンチのシーンから始まってゾクゾクします、このマリアを演じるロレダナ・ヌシアックが綺麗な顔立ちをしていて肌も露わに鞭打ちされます
メキシコの西部劇にありがちな舞台はメキシコ国境でメキシコ人とアメリカ南軍とアメリカ北軍が敵対していたりします、相変わらずおいらはアメリカの南北戦争は詳しくないのですが、普通のアメリカ人が北軍で人種差別主義者のアメリカ人が南軍と簡単に分けてます(笑)
マリアを救ってジャクソン少佐率いる南軍の集団とウーゴ将軍率いるメキシコ革命軍が縄張り争いをしている構図なんです、マリアはその両方を裏切っていて両方に狙われる娼婦
最初はジャクソンの方にいたのですがそこを去ってウーゴの方に行くとそこの扱いも悪かったので逃げ出したんです、マリアはアメリカとメキシコのハーフなのです
ジャンゴはジャクソンに伴侶を殺されていたので自身の復讐もあってこの2大勢力を翻弄して共倒れするように仕向けるのです、それに棺桶の中の機関銃がこれまた最高です、何でジャンゴはこんなのを持っているのかね
日本の配給会社が勝手に続・荒野の用心棒と銘打ってますが、「荒野の用心棒」は黒澤明の「用心棒」を西部劇にしているのですが、監督のセルジオ・レオーネにそのアイデアを提案したのが本作の監督のセルジオ・コルブッチ
2人は友人で本作も黒澤明の「用心棒」を下敷きにしている感じもしますね、作品の印象としてはこちらの方が黒澤明っぽかったりすると思ったのはおいらだけ?
ジャンゴ、お前が愛した女はもういない それが『続・荒野の用心棒』です。
ヨーロッパで大ヒットと書きましたがイギリスでは残酷描写を理由で上映禁止となってます、アメリカでも配給が決まらずに長い期間幻のカルト映画とされてました