『仁義なき戦い』
1973年 日本
《スタッフ&キャスト》
監督 深作欣二
原作 飯千晃一
脚本 笠原和夫
撮影 吉田貞次
音楽 津島利章
出演 菅原文太/松方弘樹/渡瀬恒彦/田中邦衛/金子信雄/梅宮辰夫/川地民夫/川谷拓三/名和宏
《解説》
知られざる本物のヤクザの全貌をみごとに再現!
第二次世界大戦の直後に始まった、暴力団同士の壮絶な抗争を描いた人気シリーズの第1作、深作欣二監督の下、豪華キャストが競演、魅力的なキャラクターが群雄割拠する中でも、耐える男・広能昌三を演じた菅原文太は一躍時代のヒーローとなった、日本映画史上燦然と輝く名作である
任侠路線が頭打ちになった昭和40年代後半、東映が起死回生を懸けて放った実録ヤクザ映画路線第1作、義理と人情の渡世が過去の遺物となり、他者を蹴落としても生き残ることが求められたヤクザたちの仁義なき生き方に現在という時代を見出し、多くのファンが熱狂した
《物語》
昭和20年、敗戦直後の広島県呉市
米兵による日本人女性への暴行やヤクザ同士の縄張り争いなど暴力が蔓延していた闇市での食堂でレコードを聴いていた広能昌三の元に頭から血を流した友人が駆け込んできた、刀を振り回して暴れる男を広能は銃で射殺
広能は逮捕されて刑務所に収監されるがそこで土居組若頭の若杉寛と知り合い義兄弟の契りを交わす、広能は間もなく保釈され、山守義雄の目に留まり、この年に創設された山守組の組員となった
市議選に絡んで土居組と山守組は敵対するようになり、しかし土居組では組長の土居清と若頭の若杉が対立し、若杉はとうとう破門されてしまう
若杉は広能を通じて山守組へ加入し、土居殺害計画が持ち上がり、広能は自ら土居を襲撃して暗殺に成功、しかし追われる身となり、助かる為に自首して服役する
若杉は山守に不審感を抱き、山守の若い衆を殺害し、警察に追われて銃撃戦の末に射殺された、土居組が崩壊し、山守組は勢力を伸ばしていった
しかしその組の中でも若頭の坂井一派と幹部の新開一派が対立、坂井の部下が殺され、血で血を洗う抗争が始まったが、その抗争は坂井一派の一方的な勝利で終わる
山守に代わって呉を支配するかのような振る舞い、そこに恩赦で仮釈放された広能が戻って来た、組長の山守が接近し、反逆の意を表す坂井の暗殺を頼みに来た
微妙な立場に立たされた広能は山守に従う気はなく坂井を説得するが坂井は山守の寝込みを襲い引退させてしまう、山守組のトップに立った坂井だったが山守が坂井に殺された矢野組組長の組員をけし掛けて坂井は銃弾を浴び続けた
坂井の葬儀は盛大に行われた、広能はヤクザ社会に虚しさを感じて銃を乱射して山守の前を去って行った
《感想》
田中邦衛さんの追悼レビューとなりました、個性派俳優でしたがその演技は見入ってしまいます、本作の出演者たちはほとんど亡くなっているようですが、こんな名作は永遠に語り継がれるものです
それにしても戦後にヤクザ組織が出来て、抗争だらけでとにかく人が死にます、最初は闇市での荒くれた男の広能が殺人を犯して刑務所で兄弟の契りを交わした事から始まります
その広能を演じるのが菅原文太でさすがの迫力でそれに声がめっちゃ良いです、ここぞという時に動いて殺しをするのですが、仁義に厚くて最初に兄弟の契りを交わした若杉とずっと兄弟でいるんです
その若杉を演じるのが梅宮辰夫で中盤に警察に射殺されて死んでしまいます、それも誰かに居場所を警察にチクられて押し入られるんです、刑事を数人撃つのですが、若杉も撃たれて二階から庭に転落
想像していたより早く死んでしまってちょっとビックリでしたね、それでもこの兄弟分は仁義によって死ぬまで兄弟で広能もラスト間近で警察にチクったのが誰かを感ずくんです
当時はヒロポン(覚醒剤)が蔓延していて反対する坂井と密売する新開らが同じ組なのに対立してしまって坂井が組長に指示されて新開のヒロポンを押収するのですが、それを組長が捌いていたんです
坂井を演じるのが松方弘樹でそれによって組長にも咬みつくほどで、新開らと抗争となるのですが圧倒的な勝利となるんです、組の為に組員を粛清するのです
山守組の若頭なのですが組長は自分の立場を守るばかりで人望がないんです、それに自分の子分同士を争わせたりと策士な一面もあるのですが、最後には坂井に山守に引退状を強制的に書かせて実権を握るんです
それは刑務所から出てきた広能が内部抗争に巻き込まれて山守が坂井の殺害を依頼されて偶然に会った坂井に和解を言うのですが坂井は山守を急襲するんです
坂井の手下のようなんですが裏では山守組長と内通している槙原を演じるのが田中邦衛です、何だか最初からしたたかな感じでどうしても仁義は見えてこずに好きになれないです
山守組の幹部の新開がヒロポンの密売で勢力を拡大して坂井と対立するのですが、その新開の舎弟で密売グループのリーダーの有田を演じるのが渡瀬恒彦、わずかな出演ですが男前ですね
こんな男臭い世界なのですがそんな男を支えるちょっとした清涼飲料のような存在の女もいます、若杉の女を演じるのが中村英子で最後まで若杉に尽くしています、中村英子は25歳でガス中毒で亡くなっています、自殺だったそうです
広能の友人の山方の女で、出所した広能が挨拶に行くとそこに坂井がいるんです、抱いている赤ん坊も坂井の子供で広能も複雑な表情をするんです、演じるのが渚まゆみで男ばかりなので本当に清涼飲料のようです
広能が土居組長を殺害する事になるのですが、山守組長はその前に金を渡して女を抱けと、いろんな作品でこんなシーンが見られますね、死ぬかもしれないので最後と思いイイ女を抱けと
本作は広島で発生した広島抗争を当事者の美能幸三組長の獄中手記を飯千晃一が解説を加えた内容で、深作欣二監督がリアリティを追及した実録物の先駆けとして作られました、手持ちカメラの臨場感は凄いです
広島ヤクザ・流血20年の記録 それが『仁義なき戦い』です。
名優が大勢出演している作品です、全シリーズを観たわけではないですがスピード感があって面白いです



















