人間失格 太宰治と3人の女たち | 続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

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『人間失格 太宰治と3人の女たち』

 

 

 

 

 

2019年 日本

 

 

 

 

 

《スタッフ&キャスト》

 

 

監督 蜷川実花

 

脚本 早船歌江子

 

撮影 近藤龍人

 

音楽 三宅純

 

 

出演 小栗旬/宮沢りえ/二階堂ふみ/沢尻エリカ/山谷花純/片山友希/木下隆行/稲垣来泉/宮下かな子/山本浩司/壇蜜/近藤芳正/瀬戸康史/成田凌/千葉雄大/高良健吾/藤原竜也

 

 

 

 

 

《感想》

 

 

死ぬほどの恋、ヤバすぎる実話

 

小栗旬が文豪・太宰治を演じ、小説「人間失格」の誕生秘話を、太宰を取り巻く3人の女性たちとの関係とともに描いたオリジナル作品、「ヘルタースケルター」「Diner ダイナー」の蜷川実花がメガホンをとり、脚本を「紙の月」の早船歌江子が手掛けた

 

太宰の正妻・美知子に宮沢りえ、作家志望の愛人・静子に沢尻エリカ、最後の女・富栄に二階堂ふみ、それぞれが世代を代表する女優たちが、一見太宰に振り回されているように見えて実は自分の意志で力強く生きている女性たちを圧巻の演技で魅せる

 

 

 

 

 

《物語》

 

 

シメ子との入水自殺に失敗し、ひとり生き残った太宰治、手を結んだヒモが解けてシメ子だけが流されてしまったのだ、1946年・東京、編集者には書くためには何でもやる太宰と言われている、自殺もその一つのように

 

 

自宅で2人の子供と妻の美知子と暮らす太宰、美知子のお腹にはもう一人子供が宿っていた、編集者の佐倉が通っては新作を催促する毎日

 

 

そんな中、太宰は小説のファンという太田静子と手紙を交わしていた、静子は太宰に惚れこんでしまい自宅までやってきた、そんな静子に呆れてながらも可愛いと感じていた

 

 

静子は良家の子女だったが結婚に失敗し、今は大きな屋敷に一人で住んでいる、静子は「きっとどこか壊れてないと書けないんです、小説なんて、だから私は全部差し出して太宰の中に入って行こう、それでどんな花が咲くか見てみたい、これは新しい芸術を生む恋」

 

伊豆の静子の家に行った太宰はそこで食事を楽しんだ後に静子の日記を読ませてもらった、その中の言葉に感銘を受けて静子を抱いた、一泊の予定だったが変更して何日も静子と愛し合った、静子は「愛されない妻より、恋される愛人でいたい」

 

 

東京に戻った太宰は行き付けの店で飲み、静子の日記の言葉を自分の言葉のように披露する、そんな太宰に惹かれた山崎富栄、咲き誇る白い藤の花の下で太宰にキスされた、富栄は家に帰り、亡き夫の遺影に謝罪して罪悪感に苛まれる

 

 

静子は妊娠してから音沙汰のない太宰に会うために行き付けの店に現れ、その店に富栄も現れる、困った太宰は佐倉に何とかしろと言いつけるが酔った佐倉が暴言を吐き、静子が愛だ恋だと自分の考えを大声で語る、これに太宰は苦笑い

 

 

懲りない太宰は富栄を抱き、静子は伊豆で女の子を出産、自宅では美知子が太宰の面倒を見ている、そして太宰は自分しか書けない人間に失格した男の物語に取り掛かる

 

 

 

 

 

 

《感想》

 

 

聞いてはいたのですがやっぱ太宰治は人間としては失格なんですね、当初は太宰の「人間失格」の映画化かと思ったら人間失格の誕生秘話だったんです、でも事実を基にしたフィクションです

 

写真家で映画監督の蜷川実花が構想7年で太宰治のスキャンダラスな恋と人生を映画化、しかもなかなか大胆に映像化しています、以前は煌びやかな映像を全面に出していましたが本作では抑えめな印象です

 

 

太宰治を演じるのが小栗旬でなんとなく太宰治に寄せているようにも見えましたね、まあこれだけイケメンで天才小説家なら女がほっときません、オープニングでいきなり自殺騒ぎですから

 

 

当時18歳の田部シメ子と鎌倉の海で心中を図るもシメ子だけが死亡、自殺幇助罪に問われましたが起訴猶予処分となりました、この事件について「人間失格」などで入水自殺と書いていますが、実際は催眠剤を飲んで海岸に倒れていたようです

 

このシメ子を演じるのが山谷花純でシメ子は銀座のカフェでウェイトレスをしていて客の太宰と知り合って心中をしてしまうんです、最期の時には太宰とは違う男の名を叫んだとか、短編「道化の華」に登場する園のモデルとなっています

 

太宰の正妻の美知子を演じるのが宮沢りえ、太宰は美知子との婚姻で結婚誓約書を提出してこれまでの乱れた生活を反省して家族を守る決意をしたのですが、守っていたのは美知子のようですね

 

 

この頃に太宰は「女生徒」や「富嶽百景」や「走れメロス」などの優れた短編を発表し、川端康成も「女生徒」を絶賛したことから原稿依頼が急増したそうです

 

その後に太田静子と出会い、没落華族を描いた「斜陽」はベストセラーとなり登場人物のモデルとなったのが太田静子で太宰は彼女の日記から借用していたようです、演じるのは沢尻エリカ

 

 

公開直前に沢尻エリカが薬物で逮捕されて公開が危ぶまれていましたが再編集はなしで公開となりました、こんなに才能のある女優なのに薬物に溺れるなんて勿体ないです、若い頃からなんか飛んでましたもんね

 

 

太宰は山崎富栄と出会い、彼女の家で吐血している太宰を富栄は慣れた様子で手当てしていたそうです、「人間失格」や「桜桃」などを書き上げる時には愛人兼秘書のような存在となっていました、演じるのは二階堂ふみでヌードを披露しています

 

 

富栄は太宰の最後の女性となります、部屋に青酸カリを隠していると脅して太宰を軟禁状態にしています、2人は入水自殺をして太宰は満38歳でした

 

 

行き付けの店の女性オーナーに壇蜜が扮して、何だか色気を醸し出しています、それでいて太宰の奥さんの美知子を気遣う優しさを見せます、てっきり太宰と関係があるのかとね

 

 

編集者の佐倉に成田凌で太宰に振り回されていて、その雰囲気で美知子と何か関係が出来るのかと思ってました(笑)、静子の弟の薫を演じるのが千葉雄大、三島由紀夫役に「アンダー・ユア・ベッド」の高良健吾で、坂口安吾役に藤原竜也と男たちも豪華です

 

 

 

 

 

今、日本中を騒がせるセンセーショナルなスキャンダルが幕を明ける! それが『人間失格 太宰治と3人の女たち』です。

 

 

 

 

 

太宰治が死の直前に完成させた「人間失格」は累計1200万部以上のベストセラーで、世界で最も売れている日本の小説だそうです