『約束』 石田衣良
ええっと・・・。
心温まる本でした。
心温まる本でした。
人生の苦しみや悲しみから立ち上がり、人生をもう一度歩みだすまでを描いた短編集「約束」。
石田衣良氏は「池袋ウエストゲートパーク」でデビューし、テレビなどでもコメンテーターとしてよく出演されています。
私は「美丘」という作品で一気に石田衣良氏のファンになりました。
「美丘」は純愛小説なのですが、とにかく表現力が豊かで<恋愛小説>という枠を超えた「別」のジャンルを確立していると思います。
村上春樹氏が哲学的恋愛小説を得意とするなら、石田衣良氏は写実主義的でも言うのでしょうか。
目を閉じると情景が思い浮かぶような、本当に綺麗で豊かな表現がこの小説でも十二分に発揮されています。
「風に乱されて無数の雪が空中に舞い、ひどくきれいだった。地面に落ちた雪はいつの間にか白さを失い、透明に角を丸めて消えてしまう」
(夕日へ続く道)より
心情の機微を、ほんとうに美しい表現でとらえる才能を持つ、数少ない作家の一人だと思います。
『冴えなくても、なんでもいいからカンタにこれからたくさんのものを見て、経験して、大人になって欲しい。心から死んでしまった誰かのことを思うとき、その誰かはこの世界とつながることができるんだ』
親友を突然の事件で失った男の子の心の再生を描く<約束>
『ふたつの魂が溶け合って、ひとつになるその時まで抱きしめていよう』
突発性難聴に襲われた男の子。1年前に父親は不倫の末の事故死。残された家族がみる奇跡とは・・・<天国のベル>
『涙を作るのは心だとわかった。涙はどこかのタンクにためられているものではないのだ。』
祖父が孫に託した魂のバトンを描く<ハートストーン>
どの話も単なる「泣かせる」お話に終わることなく、しっかりと心に残り、またどこか遠い他人の話に思えないような距離感を感じさせる作品の数々。
「かけがえのないものをなくしても、人はいつか自分の人生に帰る時がくる。さまざまな喪失によって止まってしまった時間が再び流れだす時を描く連作「バック・トゥ・ライフ」がこうして始まりました。
「かけがえのないものをなくしても、人はいつか自分の人生に帰る時がくる。さまざまな喪失によって止まってしまった時間が再び流れだす時を描く連作「バック・トゥ・ライフ」がこうして始まりました。
ぼくはどれほど容赦なく暴力を描いても、さして意味はないと思っています。そんなものより、病や喪失から生きることに立ちもどってくる人間を描くほうが何倍も強い。
みんな、今はうつむいてもいいから、いつかは顔をあげて、まえにすすもう。結局のところ、小説は出来不出来ではなく、届くか届かないかなのです。」
~著者あとがきより~
まだ暗い夜に、胸の奥から温まるお奨めの1冊です。
