不思議の森のあった、多摩の田舎から都心の渋谷区にいきなり引っ越してきた私の目に映るのは、色んな幽霊さん達も居たのを思い出した。都会の雑踏を歩いていると、色んな人にくっついている幽霊さん達。そこまで必死にしがみつくの?見えてしまう私は、呆れていると、こちらを見ながらしょーがないよーと目で訴えてくる幽霊さん。歩いている大人の左足にしがみついているの。しがみつかれている人は歩きずらそう。幽霊さんはもうボロボロになっていて、気の毒な感じ。そこへ、空から2人の白い衣をまとった天使が降りて来て、一緒に行きましょう、と誘っている様子。でも、幽霊さんは嫌だ、嫌だと生きている人の足にしがみつくの。2人の天使達は困り果てた顔をして、私を見ている。心で、天国に一緒に行きなさい、と幽霊さんに言うと、地獄かもしれないから嫌だと言う。天使だから天国よ、本当に?本当なの?と泣き顔で聞いてくる幽霊さん。本当よと何度も言う私。何メートルも離れた位置から、私は見ている。恐る恐る、しがみつくのをやめて、ゆっくりと2人の天使たちに守られて、天に昇って行く幽霊さんは昇りながら、ありがとうと言って嬉しそうに、天使たちと何かを話しては3人で笑いあいながら天に登って行く。その時、必ずありがとう、と昇りながら言ってくれる。私は都会の道を散歩する事を日課にした。幽霊さんがいれば私が見るから、私が見ると天使がやってくる。でもやってくるのは天使ばかりではなかった。時には、悪魔が、おい、お前、と幽霊さんをどすのキイタ声で呼びつけて、何か話して、ダメだと怒鳴りつけて、一気に地下へと連れて行く。その時、必ず叫び声が聞こえてくる。悪魔も私が見ているのをわかっている。特に、新宿駅には悪魔に御用になる幽霊さんが多かった。新宿駅には流石に子供1人では行かないので、母親がついている事がほとんどだった。ソフトクリームをうろこの母親と食べに新宿駅に行くのだけれど、母親は何時も私から離れて歩いていた。自分のかぎ爪や、尻尾を隠すのが大変だったのかもしれない。当時の楽しみは、映画や観劇などがほとんどだった。日劇には入れないので、松竹の春夏秋冬と踊りを踊る舞台があった。それが大好きな私は、学校を休ませてもらって、季節ごとに観に行った。松竹の舞台のある街は、子供の幽霊さんが沢山いたように思う。道すがら、ありがとう、ありがとう、と空から同じ子供の声が聞こえてくるのも、楽しみだった。もしかしたら、一斉に天使達が子供の幽霊さん達を天国に連れて行ったのかもしれない。